疑心 の商品レビュー
ひと頃に較べるとシリーズ物が台頭してきたような気がする。それも警察小説でのシリーズものが。テレビの二時間ものサスペンスはシリーズものがスタンダードだが、そこにも、いつのまにかトラベル・ミステリーや娯楽推理ドラマの合間に、随分と警察ものが目立つようになってきた。最早や、推理小説は...
ひと頃に較べるとシリーズ物が台頭してきたような気がする。それも警察小説でのシリーズものが。テレビの二時間ものサスペンスはシリーズものがスタンダードだが、そこにも、いつのまにかトラベル・ミステリーや娯楽推理ドラマの合間に、随分と警察ものが目立つようになってきた。最早や、推理小説は私立探偵の分野ではなく、警察小説の分野だとでも言わんばかりに。連続ドラマでも刑事ものは、過去の定型化したスタイルをいろいろな形で打ち破る形で、様々なヒット作を産んでいる。 小説界でもその傾向は同様で、どの作家も警察小説でいい作品を創出するようになった気がする。文学賞の受賞作も警察小説が目立つのだが、佐々木譲『警官の血』や本書のシリーズの緒となった作品『隠蔽捜査』なども警察小説というジャンルの価値をともに押し上げているように思う、 本書などは、そのシリーズものとして一風変わったキャリア官僚を主人公に据え、どこまでシリーズとしてネタを作れるのかという興味とともに追いかけているところなのだが、本書では米大統領訪日へのテロという極めて派手な題材を主軸にしながら、警備課の女性捜査官に対し家族もちで年齢差すらあるお堅い主人公が、何故か恋をしてしまうという、何だかやたらにソフトボイルドなエピソードの方が目立ってしまう娯楽作となっている。 キャリア官僚でお堅いがゆえにか、大森署に左遷されている竜崎署長は長年連れ添った妻とは見合い結婚で、恋愛経験がないらしく、若い女性捜査官への気持ちの揺れ具合をどう理解していいのかわからない、といういささか中学生の思春期めいた恋心を持て余すのである。緊張に満ちた状況であるはずなのだが、キャリアで頑迷である竜崎という極めてハードな男がこんな風に揺れるところにこの小説の持つギャップの面白みがあるのかもしれない。 かつて山田太一が『男たちの旅路』のシナリオでやってみせた特攻隊上がりの指令補の若い部下への恋情(もちろん相手からの求愛ではあったにせよ)に近いほどの違和感が本書にはある。しかしもちろん山田シナリオのように崩れず、本シリーズの竜崎は心のドラマとして内に秘める。 スリリングな恋の動向が気になって、本筋が霞んでしまうほどではあるけれど、シリーズ小説としての息の長さを狙うならば、こうしたエピソードの蓄積はきっと必要なのだろうと思う。一作での評価よりも長いシリーズとしての定着を狙うならば。 そう。エド・マクベインの87分署シリーズのような歴史的快挙を狙うならば、である。
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6月13日~21日 アメリカ大統領の訪日が決定。大森署署長・竜崎伸也警視長は、羽田空港を含む第二方面警備本部本部長に抜擢された。やがて日本人がテロを企図しているという情報が入り、その双肩にさらなる重責がのしかかる。米シークレットサービスとの摩擦。そして、臨時に補佐を務める美しい女...
6月13日~21日 アメリカ大統領の訪日が決定。大森署署長・竜崎伸也警視長は、羽田空港を含む第二方面警備本部本部長に抜擢された。やがて日本人がテロを企図しているという情報が入り、その双肩にさらなる重責がのしかかる。米シークレットサービスとの摩擦。そして、臨時に補佐を務める美しい女性キャリア・畠山美奈子へ抱いてしまった狂おしい恋心。竜崎は、この難局をいかにして乗り切るのか?―。
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いやー、こう来たか。 このシリーズは主人公のキャラクターが大好きで、 もう見たら必ず買うと、パブロフの犬ばりのダイレクト反応です。 多分本屋で、隠蔽捜査シリーズを目にした私を横で見たら、 かなり面白い動きをしているんじゃないかな〜。 おそらくは、 1)棚を二度見 (おぉっ...
いやー、こう来たか。 このシリーズは主人公のキャラクターが大好きで、 もう見たら必ず買うと、パブロフの犬ばりのダイレクト反応です。 多分本屋で、隠蔽捜査シリーズを目にした私を横で見たら、 かなり面白い動きをしているんじゃないかな〜。 おそらくは、 1)棚を二度見 (おぉっ、ついに出たの新作????) 2)文庫本をささっと手に取る (大丈夫だよね、新作だよね?もう読み終わった本じゃないよね?) 3)にやり 4)レジへ直行。すでに右手はカバンの中の財布を握っていると思われる (ちゃんと今日、お金持ってるよねぇ) という、時間にして数秒の優雅な(コホン)ムーブメントのはず。 いや、しかしその私も本作には違った意味で少し驚いた。 いつだって冷静沈着で、常に四角四面に物事を捉えてはばからない主人公が、 なんとあろうことか、送り込まれた?部下の女性が気になり始めるのだ。 おそらくはそれも、ストーリーに色を添える、刺身のつまみたいなもんだよね? と思っていたけれど、いやいやこれが、 本の半分くらい今回はそのネタだったんで驚いた。 事件の内容、その解決法は意外にあっけない、というか、 いつものあたしのテンションなら「おいおいそれはご都合主義な」 って、鼻で笑っちゃうくらいのもんだった。 でも、それがまた、ぶつかっていた部下との仲を取り持ってみたりして。 エンターテインメントとしてはかなり、イケテル。 でも、妻も娘もいる中年という設定の主人公、竜崎が、 本シリーズで初めて人間臭くて面白い。 そうして恋の苦悩を、禅の本で解決しようとするのもかなり面白かった。 ちなみに男女の差こそあるが、そうしてさらに、 頭の出来の違いや人としての優秀さの違いもあるけれど、 あたしは竜崎と、考え方や悩みへの対処のしかたがそっくりだと思う。 ということはきっといつか、あたしが逆パターンで、 妻子ある男性を勝手に恋いこがれちゃったなら、 この禅の本を読めば良いのだな。ふふふん。 そんな素敵な?将来のためによし、その本も買っておこうかな。えへへへへ。
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隠蔽捜査の第3弾。大森署署長の竜崎は相変わらずという感じで楽しませてもらった。ただ、女性キャリアへの恋というポイントとアメリカ大統領へのテロという緊張感のある内容が一緒に出てくることに違和感を感じた。どうしてもアメリカ大統領のテロという話が軽い感じがしてしまう。その結果竜崎の恋も...
隠蔽捜査の第3弾。大森署署長の竜崎は相変わらずという感じで楽しませてもらった。ただ、女性キャリアへの恋というポイントとアメリカ大統領へのテロという緊張感のある内容が一緒に出てくることに違和感を感じた。どうしてもアメリカ大統領のテロという話が軽い感じがしてしまう。その結果竜崎の恋もなんだか興ざめしてしまう。禅のくだりで納得してしまうあたりもらしさだが。伊丹の活躍が少ないのも残念だった。2の方がなにか人間らしさを感じた竜崎だったが、今回はまた違った人間らしさを見たという点ではよかった。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
今回、主人公は恋をしてしまいます。 抜擢人事による周囲への疑心、 来日するアメリカ大統領へのテロを阻止するという重責がある中、 恋煩いでいつもの精神状態が保てない苦しみなど、 唐変木と呼ばれる主人公の人間くさい一面を見ることができました。ただ、恋わずらいの解決方法が「普通」じゃない気がします。 恋愛小説の要素が強い作品と感じたうえに、事故・テロ計画の面でのオチは、戸高が別行動したことである程度予想がついてしまい、前作ほどの面白さは感じられませんでした。 後、解説は読まないほうが良かったと感じました。隠蔽捜査3.5のないようについて触れていたので。少し楽しみが減った気分です。
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173 恋愛物ってどうなの!?と思い読んだが、後半、話が一気に進みおもしろかった。 同著者、読了3作目。
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【67冊目】隠蔽捜査シリーズは結構好きで、文庫版でそろえようと決めています。今は、ハードカバーで4作品出ているみたいですが、3作目が文庫で出ていたので昨日買い、1日で読んでしまいました。 主人公の警察キャリア・竜崎が恋に落ちるという異色作ですが、いつもどおり、気持ちよく読み進め...
【67冊目】隠蔽捜査シリーズは結構好きで、文庫版でそろえようと決めています。今は、ハードカバーで4作品出ているみたいですが、3作目が文庫で出ていたので昨日買い、1日で読んでしまいました。 主人公の警察キャリア・竜崎が恋に落ちるという異色作ですが、いつもどおり、気持ちよく読み進めることができました。 読み始めは、展開が鈍くて、もっさりした印象はぬぐえないのですが、いつの間に竜崎の(というか、筆者の今野さんの)快刀乱麻にやられちゃっていました。 ちなみに、このシリーズは有能なんだけど、変人で、決して器用には生きられない主人公をいかに大活躍させるかということが肝だと思うんだけど、今回はちょっとその活躍が足りなかったのかもしれません。 1・2作目の方がおもしろいという声もあって、そのとおりかもしれないけど、僕はこれでも十分に満足。 あと、シリーズを読むたびに思うけど、竜崎の奥さんみたいな人と結婚したいです。
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長男の不祥事で所轄に左遷された警察キャリアで朴念仁の主人公。 今度は米大統領の第二方面警備本部本部長に抜擢される物語。 今回はなんとあの竜崎が恋愛を経験します! 本シリーズファンならありえへん驚きをするでしょう。 私も驚きました。 信念と恋愛の狭間で苦悩するなんて・・・=3 ...
長男の不祥事で所轄に左遷された警察キャリアで朴念仁の主人公。 今度は米大統領の第二方面警備本部本部長に抜擢される物語。 今回はなんとあの竜崎が恋愛を経験します! 本シリーズファンならありえへん驚きをするでしょう。 私も驚きました。 信念と恋愛の狭間で苦悩するなんて・・・=3 私は登場人物の一癖も二癖もあるかっこよさが好きですね。 特に戸高の事件の嗅覚には惚れ惚れしますw あと最後の爽快感は個人的には1番好きです。 ハラハラした緊張感を味わいたい方にオススメの作品です。
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隠蔽捜査シリーズの第三弾。硬い人と言うと、融通の聞かない人を想像してしまうが、目的達成のために信念を曲げない主人公は、見ててとても痛快です。 今回はその痛快さに加え、恋煩いへの心の変化など、主人公から目が話せません。 後書によると、スピンオフもあるそうで、文庫化が待ち遠しい。
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『隠蔽捜査』、『果断』程ではなかったけど、さらりと読みすすめられ、すっきり気持ち良い読後感でした。今野敏さんの警察小説はやっぱり面白い。
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