考えるとはどういうことか の商品レビュー
外山氏の本は久しぶりに読んだと思いますが、この本ではエッセイストの彼が「考える」ということについて本を書いています。前書きに書いてあった「知識と自由な思考は両立どころか反比例するのでは」という内容には「なるほど」と思いました。 また日本語の曖昧さを解説している部分において、人の...
外山氏の本は久しぶりに読んだと思いますが、この本ではエッセイストの彼が「考える」ということについて本を書いています。前書きに書いてあった「知識と自由な思考は両立どころか反比例するのでは」という内容には「なるほど」と思いました。 また日本語の曖昧さを解説している部分において、人の出入りが少ない関西では「曖昧さ」が強く、関東ではそれを理解する能力が低くなる(p90)とは、両方に住んだ経験のある私にとっては合点がいくものでした。 以下は気になったポイントです。 ・例えば911テロをテレビで見ていた感覚は不思議であった、それ以前はどんな大事件も過去の出来事としてしか見ることができなかったが、昼と夜とが同時に存在する球面上の出来事は把握できないのではないか(p12) ・第一人称から第三人称までは球面を捉えられない、文法では認められない第四人称をとりいれることが球面思考への第一歩(p17) ・一般的な道徳から離れた価値観を持つことができる立場が、第四人称である(p18) ・平面世界の論理や価値観にとらわれずに別の考え方ができるのが球面思考、そのため同じ出来事や言葉でも平面と球面思考では意味合いが異なる(p23) ・カーライルの言葉:知識、経験、思考の3つが融合されないと大きなことはできない(p36) ・イギリス人は中流以上の過程では子供を甘やかすので、家庭から離れて厳しい環境の中で生活する方が成長する上で良い経験になると考える(p44) ・人材登用には、ギリシア式(推薦による推薦状を重視)、中国式(ペーパーテスト)、縁故があり、どの国もどれかを採用するか併 せて使っている(p65) ・歴史的に見れば、恋愛結婚を例外とする社会のようが家庭は安定する(p69) ・閣下や殿下は「その建物の下」、陛下は「宮殿の階段の下」であり、当人から離れたものを指して呼びかけるほど、相手への尊敬が高まる(p92) ・「いらっしゃる」と敬語にすることで自分ではなく相手が主語だとわかり、あなたはという二人称は不要、参りますの謙譲語の場合も同様(p92) ・コカコーラは「飲め」という代わりに「スカッとさわやか」と感覚的な印象を伝えて日本で成功した(p105) ・東洋で最初に自国語を使って大学の講義ができるようになったのが日本、19世紀終わり頃から外国人教師を減らした結果(p106) ・もともと日本語の文章には句読点はなく、センテンスという概念がない。句読点は江戸時代までなかった習慣(p112) ・料理とは、「理:ことわり、を「料」はかる、考える」で、「事をはかり、おさめる」が原義である、調理も「理をととのえしらべる」の意味(p124) ・和裁は着る人を問わず同じ大きさのものを仕立てる、小柄な人はそれをたくしあげてきつける、なので代々着ることが可能(p130) ・映画では監督が俳優より大きな力を持っている点は、舞台演劇と大きく異なる(p137) ・選手は一次的な動きをするのに対して、監督は二次的活動、どちらが優れているのではなく、両者は相反関係かもしれない(p141) 2012年4月28日作成
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『思考の整理学』の外山 滋比古の最新エッセイ。生涯現役を地でいっておられる。 「知識と思考は反比例する」をはじめとした、考え方の根本になる複数の小編からなる。こういう抽象的なことを、シンプルにわかりやすく書くのはかなり難しい。その点、とても読みやすく書かれている。もちろん、賛同し...
『思考の整理学』の外山 滋比古の最新エッセイ。生涯現役を地でいっておられる。 「知識と思考は反比例する」をはじめとした、考え方の根本になる複数の小編からなる。こういう抽象的なことを、シンプルにわかりやすく書くのはかなり難しい。その点、とても読みやすく書かれている。もちろん、賛同し得ない論もあるが、作品としての奥深さには脱帽。
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20120325 二次的創造、日本のこれからのヒントになるのではないだろうか。考える事の楽しさ、繰り返し読みたい本。
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かつて、アメリカに留学した日本人が、現地の学生に「見合い結婚」というシステムをうらやましがられた、という話が印象に残っています。 恋愛結婚のアメリカでは、週末にデートしなくてはいけないので、平日しか勉強ができない、ということらしい!?
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
さすが『思考の整理学』の外山滋比古先生、思索に耽る愉しさを再び想起させてくれる一冊。これが編集者を前に口頭でなされた”語りおろし”だというのだから驚き。恐らく活字になる段階で幾ばくかの編集は入ってはいるだろうけど、各章ごとにテーマにブレがなく示唆に富む言葉が並ぶ(若干、最終章は散漫になってる気がするけど)。ちょいと前に読んだ「下山の」なんとかより、よほどしっかりした内容。松岡正剛氏とはまた異なる切り口で、日本固有の文化や習慣にも、自信と誇りを持つよう訴えかける部分も力をもらえる。好著です。
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知識の重要性に偏りすぎの社会に、疑問を投げかける本。第一章の平面思考から球面思考への考え方は、面白い。情報に日々埋れて大変な人には、自らの思考法を再考するのに、参考になるのでは。
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