服従の心理 の商品レビュー
ミルグラムの社会実験とそれにおける分析をまとめたもの。実験概要は、被験者は先生役を与えられ、実験者である指導役に、学習者が問題を間違えるごとに電流を流すよう指示される。また間違える度に一段階ずつ電流のボルトを上げるよう指示され、電流のショックに呻く学習者にどこまで強い電流を流し...
ミルグラムの社会実験とそれにおける分析をまとめたもの。実験概要は、被験者は先生役を与えられ、実験者である指導役に、学習者が問題を間違えるごとに電流を流すよう指示される。また間違える度に一段階ずつ電流のボルトを上げるよう指示され、電流のショックに呻く学習者にどこまで強い電流を流し続けるか?というもの。 実験は色々なパターンを変えて行われたが、概ねの結果としては多くの人は実験者の指示に逆らえず最高レベルまで電流を流してしまうということだった。被験者は特別サディスティックな性質を持っているわけではなく、至って普通の人たちである。それでも指示されると服従してしまう、という怖い結果だった。 そもそも服従とは個が権威システムへ組み込まれることによりエージェント(代理人)状態へ移行することだという。権威システム自体は家族、学校、会社、どこにでもあるし、その組織を安定させ秩序を保つためにはある程度必要かと思うが、その権威システムがイデオロギーを持って本来なら許されない物事にまで正当性を与えてしまうと、エージェント状態へ移行した際に暴走してしまう。そこには責任感の喪失、守るべきルールの変更があり、善良で平凡だったはずの人たちはその新たなルールのもとで感覚が麻痺していく。 またどれだけ自分の行為は許されないことだと思ったとしても、それを途中でやめることは今までの自分の非を認めることであり、集団の和を乱すことでもあり、その集団から報復される危険性があることでもある。なのでやめられない。エスカレートするしかなくなる。 そうした上記の一連はある種の"緊張状態"であるが、その緊張を解消する手段は大まかに2通り、1つは責任を回避する(命令に従っただけ、学習者が間違えるのが悪いetc)、もしくは学習者=被害者から徹底的に目をそらす、見ないようにすること。2つ目は、いよいよ非服従の選択をとることである。ただし後者はかなり精神的コストが高い。もうここまでくると服従する方が楽だ。服従する快楽はここにあるのだなと思う。とにかく"思考停止"の状態、権威者の言われた通りにしただけ、自分では何も考えない、これがその場を切り抜ける最もコストの低い選択なのだと思う。 そういう意味では、ミルグラムの実験にあるように、とある権威のもとで服従の態度を見せ残虐なことをしてしまう危険性をどんな人間も孕んでいるということだ。では、どうすればできるだけそのような事態を避けられるのか、と考えると、「自分がそういう危険性を孕んでいる」ということを「知っている」ということではないか。この実験で比較的早い段階で非服従した被験者やその際に責任転嫁せず自分の非を全面的に認めた被験者がいたが、彼らは欧州出身でファシズム政権を目の当たりにした人であった。 ただやはり、人間がある環境下において残虐な命令に服従してしまうことについては、その権威システムの強さだけではなく、生来からの「弱いものいじめ」欲がその権威のもとで正当化されて爆発している、という側面もあるのではないかと思う。歴史を遡ると弥生時代以降、いわゆる貧富の差が生まれて以降ずっと階級システムがあって、人は自分よりも下の者がいることで自らを保ってきた、と言うと露悪的だろうか。その気持ちが強大な権威システムによって正当性を与えられ最大利用されたのがファシズムでは…?なので「服従」という心理の一側面だけではないのではないか、とは思った。
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自律を知ろうとしたときに服従が生まれるプロセスを知っとくのは役に立つのでは、、、と思った。極端だけど。服従の行動をとるエージェント状態の一番の特徴は権威が命じる行動の中身に責任を感じなくなること(責任を取らなくていいのならそれをやる)エージェント状態と自律モードをスライダーで捉え...
自律を知ろうとしたときに服従が生まれるプロセスを知っとくのは役に立つのでは、、、と思った。極端だけど。服従の行動をとるエージェント状態の一番の特徴は権威が命じる行動の中身に責任を感じなくなること(責任を取らなくていいのならそれをやる)エージェント状態と自律モードをスライダーで捉えたときに、その上げ下げに関わるのは責任の捉え方と負い方なのかな。どう責任を捉えて負う方に倒していくか?それは自分で判断して決めることだろうと思う。なので、自律側に倒すには、判断する機会を奪ったり独占したり代わりにやってあげたり役割で線を引くのは長期的に見ていい方向に行かないんだろうな、と思った(なので、決める人と実行する人みたいな役割の分け方は最悪なんだろうな)
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有名な「アイヒマン実験」。「服従の本質というのは、人が自分を別の人間の願望実行の道具として考えるようになり、従って自分の行動に責任をとらなくていいと考えるようになる点である」まさに、ブラック企業に蔓延るクラッシャー上司がこれにあたる。自ら考える(疑いを持つ)力が必要な時代である。
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人間は人としての責任を忘れてしまう事がある。 誰かに服従した時、服従した人に対する責任を持ち、 自分自身の行動に一切の責任を持たなくなる。 それが、人を殺してしまう結果になっても。 これを、エージェント状態と言う。 そうならないために、何をすべきか、そして、 どうやってこの心理と...
人間は人としての責任を忘れてしまう事がある。 誰かに服従した時、服従した人に対する責任を持ち、 自分自身の行動に一切の責任を持たなくなる。 それが、人を殺してしまう結果になっても。 これを、エージェント状態と言う。 そうならないために、何をすべきか、そして、 どうやってこの心理と上手く向き合っていくのか。 使い方次第で、人を幸せにすることもでき、人を不幸せに することも出来るこの服従の心理、 あなたには使いこなせるか。
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ミルグラムの電気ショック実験。 これは、ナチスのアイヒマン実験とも呼ばれ、権威者による命令が個人を従属させ、殺人のような重大な結果をもたらしかねないことをシミュレーションしたもの。 解答者(役者)、被験者、指示者において、 ある単語の問題に対し、回答者が不正解だった場合、その被...
ミルグラムの電気ショック実験。 これは、ナチスのアイヒマン実験とも呼ばれ、権威者による命令が個人を従属させ、殺人のような重大な結果をもたらしかねないことをシミュレーションしたもの。 解答者(役者)、被験者、指示者において、 ある単語の問題に対し、回答者が不正解だった場合、その被験者は低い電圧から徐々に大きいで電圧(疑似)電気ショックを与えていく経緯について分析した実験。 それぞれが置かれた立場、ヒエラルキー、権威によってどのような結果となる傾向なのか分析した実験。 『典型的な兵士が殺すのは殺せと言われたからで、かれは命令に従うのが自分の義務だと心得ている。被害者に電撃を加える行動は破壊的な衝動から生まれるではなく、被験者が社会的構造に統合されてしまい、そこから逃げられないから生じるのだ。』 当時のナチスが特殊だったわけではなく、現代の組織に於いてでも大なり小なり、同様のジレンマ(責任転嫁)が発生しているのは明白である。
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スタンレー・ミルグラムといえばスモールワールド現象(六次の隔たり)と服従実験が広く知られており、多数の書物や文献で引用されている。実験結果を発表したのが1963年(昭和38年)。私の生まれた年だ。それまでは低く見られていた社会心理学の地位を一気に正当な学問の領域へ引き上げた歴史的...
スタンレー・ミルグラムといえばスモールワールド現象(六次の隔たり)と服従実験が広く知られており、多数の書物や文献で引用されている。実験結果を発表したのが1963年(昭和38年)。私の生まれた年だ。それまでは低く見られていた社会心理学の地位を一気に正当な学問の領域へ引き上げた歴史的実験である。 https://sessendo.blogspot.com/2009/03/blog-post_16.html
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
こんなにはっきり傾向が出てしまうものか~、でも自分も被験者だったらボタンを押してしまいそう、と思いながら読んでいたのだが、ただ作中では「明らかに反抗するのが人として正解なのにそれができない」というのが前提になっていたのに対して「明らかに悪いことと本気で判断できない場合もあるのでは?」と違和感をもったんだよな。ちゃんとした大学がやっている実験なんだから倫理ガイドライン的なものをクリアしているはずであって、素人が感情論で反抗すべきでないとか思いそう、と思ったので。ただそれが、複数の価値観の対立で本当に判断がつかないのか、権威への遠慮で判断力が鈍っていたのかの区別は難しそう。しかし本編中ではその違いには言及していなくて(当然に後者の前提のみで語られていた)、この点については訳者の解説で痒いところに手が届いた感じ。その他にも本編で足りなかったところについて明快に補足してくれていて、いちいち納得。権威に従ってしまう心理を否定する必要はないし、個人が自己犠牲的に戦う必要もない、組織の中で改善していけばいいじゃない、というとてもまっとうかつ前向きな結論も良かった。 ・人間の残虐な性向の存在をこの実験で否定できる訳ではない。それはまた別のきっかけで発露する可能性がある。 ・公開実験の仮定はおもしろい。他人の目があったら反抗したかもしれない=世間という別の権威に従っただけで個人の道徳心による反抗ではないにしても、現実的なブレーキにはなるだろう。 ・権威の性質についての考察もなるほど。権威だったら無条件に従う訳ではなく、科学や大学といった悪いことをしなさそうなイメージの権威だとより反抗しづらくなるというのと、そういう権威が悪いことをした時に、冷静に切り捨てられず「もしかしたらなにか事情があるのかも」と戸惑ってしまうという心理状態も納得。上記のひっかかりに対するある程度の回答になっている。 ベトナム戦争への批判、権威に対するマイナスイメージ等の時代背景がわかりやすく解説されていて良かった。しかし本文を読んでいる間は漏れなく条件設定されていると思ったのに、こんなに粗が出てくるものか。実験って難しいな。 なんかほとんど訳者解説への感想になってしまったな。
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心理学の文献ではしばしば登場する「ミルグラム実験」について、ミルグラム教授ご本人が書かれた報告書。 「アイヒマン実験」とも呼ばれるこの本は2008年に新訳として再版されるまでは約10年は絶版だったそうだ。 2012年には文庫化されたが、357ページで1300円という価格となってい...
心理学の文献ではしばしば登場する「ミルグラム実験」について、ミルグラム教授ご本人が書かれた報告書。 「アイヒマン実験」とも呼ばれるこの本は2008年に新訳として再版されるまでは約10年は絶版だったそうだ。 2012年には文庫化されたが、357ページで1300円という価格となっている。高すぎるのではと思い読み始めたら、疑念はすぐに払拭された。実験の全貌、ミルグラム教授の分析等、事細かく書かれている。被験者を募集するための広告、役割や条件を変えての全18種類の実験内容、被験者のナマの声等、読み応えは充分。 更によかったのが訳者山形氏による「訳者あとがき」である。通常のあとがきに加え、「蛇足 服従実験批判」とのタイトルで本書の分析・考察に情け容赦ない根本的批判を展開する。訳者がこんなに批判しちゃっていいの?とも思ったが、権威からの命令が責任回避や思考停止に陥ってしまう危険性を検証した本書に対し、訳者自ら、ミルグラム実験という「権威」を否定することでオチをつけたのでは、とも考えてしまった。
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ミルグラム「服従の心理」 権威に対する服従心理を紐解いた アイヒマン実験の報告書。なぜ 普通の軍人が 非人間的なユダヤ人虐殺や原爆投下をできたのか わかった気がする 服従の本質=自分の行動に責任を問われない→自分を権威に委ねる→自分の義務を果たしただけ
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話に聞くだけではどこまで信用できるのか分からないような印象を持っていた実験だが、こうして細部を知るとなかなか説得力がある。でもなお、この実験での「服従」の度合いが驚くべきものではあるとは言え、その絶対的な水準からあまり多くを汲み取るのも勇み足である気がある。巻末の山形解説もその点...
話に聞くだけではどこまで信用できるのか分からないような印象を持っていた実験だが、こうして細部を知るとなかなか説得力がある。でもなお、この実験での「服従」の度合いが驚くべきものではあるとは言え、その絶対的な水準からあまり多くを汲み取るのも勇み足である気がある。巻末の山形解説もその点、面白い。引き換え、いろいろ条件を変えて服従度合いへの影響を探るあたりは興味深い。 また、ミルグラムがベトナム戦争でのソンミ村虐殺などに極めて強い問題意識を持っていたこともはじめて知った。山形氏によれば、それがミルグラムの視野を狭めているということで、たしかにその側面は否定できないが、単に心理学の実験というだけではなく、社会的な強い問題意識がバックグラウンドがあるゆえ、これだけ人々の耳目を集める実験にもなったのだろう。
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