慢性疼痛 の商品レビュー
「痛み」とはなにか? この問いかけへの深みのある考察は、本書ではそれほど多くない。 が、「痛み」とは何かという説明から本書は始まり、他者の痛みという「捉えることのできない存在」を、どうにかして捉えて治療しようとすることを通じて、痛みとは何か?という問いへの一定の回答は、おぼろげ...
「痛み」とはなにか? この問いかけへの深みのある考察は、本書ではそれほど多くない。 が、「痛み」とは何かという説明から本書は始まり、他者の痛みという「捉えることのできない存在」を、どうにかして捉えて治療しようとすることを通じて、痛みとは何か?という問いへの一定の回答は、おぼろげながら本書に存在する気がしてならない。 本書では、身体に問題がないにもかかわらず、身体に堪え難い痛みを感じる症状と、その原因と治療法について手際よく(そして親しみやすく)描かれている。 たとえば、何が「正しい生き方」なのか?と問われても、よほど極端なケースを除いて、ほとんどの人にとっては正しい間違っているかを判断できないと考えるのが普通だろう。 そもそも生き方が間違っていても、身体には軽い影響しかないのが普通なのだから。 ところが生き方が間違っていると「身体に激痛が走る」人たちがいる。本書で触れている痛みとはこうした不思議な痛み(というのは一般の人が持つ多くのイメージなのだが)である。 失恋によって、文字通りに「胸が痛む」ことが実際にあるとは信じられない人も多い。 しかし事実として「胸が痛む」人が実際にいる。そうした通常の手順ではなかなか見つけることが難しく、また痛みを取るのも難しいケースの最終的な解決策として、森田療法と断食療法が紹介されている。 本書で取り上げられている痛みについては(そもそもなのだが)身体と精神、脳と身体というわけ方で捉えてしまうと、本書で主張していることはわかりづらいと思われる。 どちらかというと診療科目という、治療する側の都合に合わせた解釈から離れる必要はあると感じた。 本書のほかに身体表現性障害についての新書は、磯部潮『体にあらわれる心の病気』もあり、こちらも対策するに十分に参考になる。 また脳の可塑性に注目した治療法としては、ノーマン・ドイジ『脳はいかに治癒をもたらすか』で紹介されている。同じ慢性疼痛とはいってもだいぶ症状も原因も異なるのだが、脳から治すという点では興味深い。
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[ 内容 ] その苦痛を、家族から「大袈裟だ」といわれたことはありませんか。 整形外科医などの所見以上に苦しくて、いくら周囲に説明してもなかなか分かってもらえない独特の痛み方ではないですか。 何度検査しても「異常なし」と診断されたり、毎回異なる病名を告げられたりしていませんか。 日本人の七人に一人に疼痛があり、その八割の人は治療効果が上がっていないと推定されます。 痛みは我慢するほど膨れ上がります。 でも、大丈夫。 一緒に「こじれた痛み」を癒しましょう。 [ 目次 ] 第1章 「心因性による慢性疼痛」とは何か(痛みは個人的感覚;痛みの感覚は無限大 ほか) 第2章 「得体の知れない痛み」という疾患(人気作家を襲った激痛;こんな激痛が心因から起きるはずがない ほか) 第3章 なぜ心療内科医が痛みを診るのか(断腸の思い;がっかり盲腸 ほか) 第4章 治療という戦い(厚さ五センチのカルテ;痛みのキャッチ法 ほか) 第5章 「分かってもらえない痛み」への理解(悩みを相談する人の心理;「分かってもらえない」いらだちが痛みを増幅させる ほか) [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]
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鎮痛剤が効かない。病院で検査を受けてもどこにも異常がない。慢性疼痛には心因性のものがあることを一般にはほとんど知られていない。医療関係者にさえ十分に認識されているとはいいがたいのが現状。痛みが激しければ激しいほど心因性のわけがないと、その思い込みが治療をますます遅れさせる。日本人...
鎮痛剤が効かない。病院で検査を受けてもどこにも異常がない。慢性疼痛には心因性のものがあることを一般にはほとんど知られていない。医療関係者にさえ十分に認識されているとはいいがたいのが現状。痛みが激しければ激しいほど心因性のわけがないと、その思い込みが治療をますます遅れさせる。日本人の7人に1人が疼痛に悩んでおり、うち8割もの人が治療の効果がなく苦しんでいる。痛みの大きさは主観的であり客観的な評価が難しく病変も見つけられない。疼痛が和らぎ、もう治ったと薬をやめてしまうと、すぐに症状が再発してしまう。慢性疼痛の薬物治療の難しさである。心因性疾患について理解を深めるとともに周囲の人間の接し方についても細かに示唆が行き届いている。
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痛みとは何か。それは、「組織の実質的あるいは潜在的な障害に結びつく(略)不快な感覚・情動体験」である。ここで大切なことは、痛みは単なる感覚の異常ではなく、「情動」、つまり精神心理的なものを伴っていることだと著者は言う。本書は、この情動体験から表現される実際の痛み、つまり精神心理的なものに引き起こされる「(心因性)慢性疼痛」がテーマだ。 身体に異常はないが痛みがひどくて辛いのに、周囲には「わがまま病」「いたがり屋さん」などと言われて二重に辛い。そんな状態が続いたら、それは「慢性疼痛」である可能性が高い。こうした患者を30年間で1,000人以上見てきた心療内科医である著者は、この病気の真因が患者の身体ではなく心(生き方、人生観、生活習慣など)にあること、そして治癒のためには、適切な服薬とカウンセリングが必要なことを本書で力説する。 身体的病変のみでなく、精神心理面の異常でも痛みは起こりうる。世間にこのことが広く知られ、痛みを抱える患者が1人でも減ってほしいという著者の願いが、医学的知見とともに凝縮された一冊。
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利用者さんの気持ちを知りたく読んでみたが私自身にも当てはまり癒されてしまった。「脳が痛いと思ってしまう」んだよね。だから嘘ではなく本当に痛い。それを受け入れて支援しよう。
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痛みというのは他人にはわからないものだ。 たとえ痛さはテレビを通じては伝わりにくいので アクション芸人が存在する。 しかし現実では、原因不明で痛がると「我慢が足りない」などと 揶揄されてしまう。 そのような人々はこの本を読んで少しは楽になるのかもしれない。 私の周りにもその...
痛みというのは他人にはわからないものだ。 たとえ痛さはテレビを通じては伝わりにくいので アクション芸人が存在する。 しかし現実では、原因不明で痛がると「我慢が足りない」などと 揶揄されてしまう。 そのような人々はこの本を読んで少しは楽になるのかもしれない。 私の周りにもそのような人がいるかもしれない。 がんばらない楽しい生き方、それが楽しいのかもしれない。
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評価:★★★★★(5/5) 作家の夏樹静子さんを診察された心療内科医 平木英人による著書。 「異常なし」と診断されつつも長引く痛みに悩んでいる人は少なくないと思う。 痛みは他者からは理解されにくく、「大げさだ」とか、時には社会的に否定される人もいる。 本書は、慢性疼痛につい...
評価:★★★★★(5/5) 作家の夏樹静子さんを診察された心療内科医 平木英人による著書。 「異常なし」と診断されつつも長引く痛みに悩んでいる人は少なくないと思う。 痛みは他者からは理解されにくく、「大げさだ」とか、時には社会的に否定される人もいる。 本書は、慢性疼痛についての分かりやすい説明が、森田療法、絶食療法について著者の想いとともに解説されている。 著者は『おこがましいようではありますが、「故き」時代を知る市井の一心療内科医が経験したことを書き残すことで、心因性による慢性疼痛の「治療の道筋」といったものを示せないだろうか ー そうした思いからこの本を記しました。』とのこと。 痛みはかならずしも身体的な問題”のみ”で生じるのみではなく、心に起因する問題でも発現する。あるいは、身体的な問題で生じた痛みを、心が就職する形で表現される。心に起因する痛み。それゆえにこじれた問題を生じてしまう。「身体に原因のある痛みであれば、その原因に応じた程度の痛みにとどまります。しかし心は無限大ですから、心に起因する痛みもいくらでもひどくなっていくのです。」とのこと。 心療内科は、痛みを持った人などが、ドクター・ショッピングを繰り返して、最期の果てに行き着くような所になってしまっているようだ。その痛みの原因が、身体的な問題であれば理由がついた気がするのだが、心の問題で生じたとなれば、そなんだか「格下げ」された気持ちになってしまう。そういう気持ちもよくわかる。 慢性疼痛を煩う人、接する人、ご家族、幅広い人に読んでもらいたい本だ。 ---------------- 【目次】 第一章「心因性による慢性疼痛」とは何か 第二章 「得体の知れない痛み」という疾患 第三章 なぜ心療内科医が痛みを診るのか 第四章 治療という戦い 第五章 「分かってもらえない痛み」への理解 あとがき ----------------
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自分が普段から感じている痛みはまさに慢性の「疼痛」と呼んでいいものだと、この本で理解した。痛みの部位をいろいろな医療科にかかって検査を受けたが原因がまったくわからない。「異常ありませんね」と医者はいうが、「痛みは間違いなくあるのだ、それをわかってくれないのか」といういらだちを常に...
自分が普段から感じている痛みはまさに慢性の「疼痛」と呼んでいいものだと、この本で理解した。痛みの部位をいろいろな医療科にかかって検査を受けたが原因がまったくわからない。「異常ありませんね」と医者はいうが、「痛みは間違いなくあるのだ、それをわかってくれないのか」といういらだちを常に感じていた。この本はそうした自分の不快(QOLの低下)の原因を明らかにしてくれたような気がしている(正しいかどうかは、診察を受けてみなければわからないが)
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平木 英人 (著) その苦痛を、家族から「大袈裟だ」といわれたことはありませんか。整形外科医などの所見以上に苦しくて、いくら周囲に説明してもなかなか分かってもらえない独特の痛み方ではないですか。何度検査しても「異常なし」と診断されたり、毎回異なる病名を告げられたりしていませんか。...
平木 英人 (著) その苦痛を、家族から「大袈裟だ」といわれたことはありませんか。整形外科医などの所見以上に苦しくて、いくら周囲に説明してもなかなか分かってもらえない独特の痛み方ではないですか。何度検査しても「異常なし」と診断されたり、毎回異なる病名を告げられたりしていませんか。日本人の七人に一人に疼痛があり、その八割の人は治療効果が上がっていないと推定されます。痛みは我慢するほど膨れ上がります。でも、大丈夫。一緒に「こじれた痛み」を癒しましょう。
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体と心はつながっている。 そのことを以前から痛感して、持病に対処してきたが、まさに我が意を得たりの本。 ストレスは万病のもと。 ストレスを1つ1つ解消していく方法を自分なりに見つけていくことも大切だと感じた。
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