音楽の科学 の商品レビュー
倍音や音色など、個人的に何となく不思議に思っていたことが扱われていたので面白かった。脳内の広い領域で音楽が処理されていると聞くとやはり活性化が促されるメリットを感じる。視覚への影響で有名なゲシュタルト原理(類同、近接、連続)が音楽へ作用されるパートが一番面白かった
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まだ読み始めです。 認知科学、文化学、その他非常に多様な観点から音楽を科学しています。 「音楽は普遍的で宇宙人にも分かるのか?」「音楽は人間に必ずしも必要か?」「音楽は常に人にとって良い物か?」など様々な問いが提示されます。
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600ページを超える大部のハードカバーで、活字も小さめなので、かなりボリュームがある。じっくりと時間をかけて読んだ。 音楽の認知科学の分野は、これまで数冊読んできたが、あまり期待されるような成果が出ておらず、はっきり言って現代科学にしてはかなり立ち後れた分野である。つまり、なぜあ...
600ページを超える大部のハードカバーで、活字も小さめなので、かなりボリュームがある。じっくりと時間をかけて読んだ。 音楽の認知科学の分野は、これまで数冊読んできたが、あまり期待されるような成果が出ておらず、はっきり言って現代科学にしてはかなり立ち後れた分野である。つまり、なぜある種の音の組み合わせが、人間にとって快かったり不快だったりすのか、はっきりとした原因は未だ掴めていない。 この本の著者は音楽の専門家でも科学の専門家でもなく、「サイエンス・ライター」である。従ってこの本は音楽にも科学にも詳しくない人でも容易に読めるよう、とてもかみ砕いて書いてある。逆に言うと、専門的な語句をあまり使えないために、妙に冗長だったり不正確だったりする面もある。この本が異様に長いのも、「簡単に書いてある」せいだ。 とはいえ、書かれている情報はなかなかの分量である。私にとってはどれも興味深いトピックなので、丁寧に読んでみた。 どうも著者は、いわゆる「現代音楽」(主に無調の、前衛的な欧米音楽)を今ひとつと思っているらしく、シュトックハウゼンとかブーレーズの前衛性について、人間の認知論的側面から離反してしまっている(わかりにくくなってしまっている)という難点を挙げている。 しかし私の場合でいうと、確かにはじめは得意でなかったが、徐々に慣れ親しんでいき、しまいには「現代音楽」でない近代音楽にはどうも物足りなく感じてしまっているのだが、そういう点は、どうなんだろう。 本書で最も興味深かったのは、音楽が「言語」と似た何物かである、という最後の方の章だった。音楽を認知する脳の反応を調べると、確かに言語に対する反応と、重複する箇所もあるらしい。 確かに音楽は明確なシニフィエ(意味内容)を持たないシニフィアンの構造体である、と言うことができそうだ。ジャック・ラカン的な意味で、音楽はシニフィアンが織りなす心的複合体である。ただしこのシニフィアンは情動(ダマシオの言う、感情以前の反応としての情動)レベルでよく作用する。なぜなのかは科学的に解明されていないが、とにかく、たとえばある種の和音の連結が特定の情動を惹起することは確かだ。 とはいえ、音楽的な構造は著者の言うように、文化のコードによって規定されたものでもある。文化が異なれば音楽の情動化作用も異なってくるのだ。 クラシックや西洋由来のポピュラーミュージックに限らず、著者はいわゆる民俗音楽に関してもよく調査している。わかりやすく(通俗的に)書いてはいるが、その裏にある学問的知識はたいしたものだ。かなり詳しく調査したのだろう。 音楽において「予測されたとおりに進行すると快があり、時折予測を裏切ったときにも快がある」という点に、著者はちょっとこだわり過ぎなのではないかとも思ったが、ここに含められた膨大な情報が、読者に「音楽とはどういう現象なのか」ということの再考をしきりにうながしてくれるのは確かだ。
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600pの大作だが非常に面白かった。クラシックからロック、現代音楽まで、出てくる曲をYouTubeなどで聴きながら読むのも、また愉しい。
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サイエンスライターが書いた音楽の本。音程、和音の検証から、ゲシュハルト認知心理学など、多面的に音楽とはなにかを考える。
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なぜ音楽を聴くのか、音色をなぜ理解できるのか、とか、音楽にまつわる素朴な謎を徹底的に検証していく。 そもそも僕は音楽に係る理論を全然解していないので、600ページ以上の理論本を読むことにちょっと構えていたんだけど、読んでみるとまるでミステリのように次々と思考法が展開していく様...
なぜ音楽を聴くのか、音色をなぜ理解できるのか、とか、音楽にまつわる素朴な謎を徹底的に検証していく。 そもそも僕は音楽に係る理論を全然解していないので、600ページ以上の理論本を読むことにちょっと構えていたんだけど、読んでみるとまるでミステリのように次々と思考法が展開していく様にワクワクしたのであります。どの話題でも、芸術論で語り始め、認知科学でオチをつけるパターンが多いのですけど。 音楽は聴こえる音だけではなく、過去に聴いてきた音楽によって聴こえ方が変わるという、まぁ当たり前といえば当たり前の帰結にもいろいろと考えさせられたよ。
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現時点で分かっている音楽の科学的考察。ちゃんとクラシックから民族音楽、ロックから現代音楽まで幅広く引用されているところがいい。分厚いがためになった。引用されている曲を聞きながら読み込めばさらにためになるだろう。ただ3800円は買うには高い…。 調の話、何を人は良いメロディと思う...
現時点で分かっている音楽の科学的考察。ちゃんとクラシックから民族音楽、ロックから現代音楽まで幅広く引用されているところがいい。分厚いがためになった。引用されている曲を聞きながら読み込めばさらにためになるだろう。ただ3800円は買うには高い…。 調の話、何を人は良いメロディと思うのか、音を分類する脳、不協和音とは、リズムとは、音色とは、音楽を聴いて脳のどこが反応し、なぜ感動するのか、ジャンルをどう分類しているのか、音楽に言葉や意味はあるのか。 人にとって科学的に音楽とは何かは分からない。脳は活性化されるかもしれないが、生きる上で動物的に必要な能力ではない。その曖昧な音の羅列に勝手に美しさや意味を見いだし、時に自分でも表現する人の不思議さにも気づく。理論的にも音楽を理解出来たのはためになった。音楽の歴史上で直面してきた限界、そしてそれを超えてきたことが捉えられるのは、表現することにも役立つはず。
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600ページを超える大著。音楽を聴くということに関する医科学的なアプローチの現在地点を紹介する、というのが本筋。 音楽理論の基本的な部分は分かっているので、それ以外の要素はためになった。非西洋音楽の構造、音楽を聴くことと脳神経学の現在地点、現代音楽を聴くために何を知っておくべき...
600ページを超える大著。音楽を聴くということに関する医科学的なアプローチの現在地点を紹介する、というのが本筋。 音楽理論の基本的な部分は分かっているので、それ以外の要素はためになった。非西洋音楽の構造、音楽を聴くことと脳神経学の現在地点、現代音楽を聴くために何を知っておくべきか、など。特にライヒの音楽に触れるきっかけになった記述は慧眼であった。 本書の参考音源はすべてwebに上がっている。ひとつ一つ耳で確かめながら読むとなおよい。
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大冊だ.本文だけで620ページ.読むと言うより何が書いてあるかをなぞった感じだが,クラシックだけでなくポピュラーや民族音楽まで手を広げて,興味ある論説を展開している.物理学の学位を有している著者の幅広い知識に感心した.日本人でこのような著作を書ける人はいないのかなー.
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フィリップ・ボールが、完全に量産体制に入っている。「自然が作り出す美しいパターン」三部作の『かたち』『流れ』、年明けに発売される『枝分かれ』。その合間をぬって『音楽の科学』ときた。それにしても1年間に4冊の本は、なかなか出せるもんじゃない。 それはさておき、本書『音楽の科学』は...
フィリップ・ボールが、完全に量産体制に入っている。「自然が作り出す美しいパターン」三部作の『かたち』『流れ』、年明けに発売される『枝分かれ』。その合間をぬって『音楽の科学』ときた。それにしても1年間に4冊の本は、なかなか出せるもんじゃない。 それはさておき、本書『音楽の科学』は、心して掛かった方が良い一冊だ。なにしろ全620頁による圧巻のボリューム。さすがに気持ちが萎えそうになる。こういう時、僕は最初のページからは読まないことにしている。 そんな訳で、一番肝になりそうな第10章「音楽はなぜ人を感動させるのか」をちょい読み。 この章で論点となっているのが、音楽による感情の喚起が先天的なものか、後天的なものかというものである。記憶や文化との結びつきで説明しようとするのが「参照主義」、すべて音楽自身の持つ力によると考え、音楽以外の背景状況などは一切ないと考えるのが「絶対主義」と呼ばれるそうだ。この議論は、数学は発明か、発見かという議論にも非常に似ている。また、音楽も数学もルーツを辿っていくとピタゴラスに行きあたるという点が興味深い。 その気になれば、この章だけで十分な量のレビューが書けるほどの読み応えである。時間のある時に、きっちりと向きあいたい。これは楽しみだ。
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