ものかげのイリス(2) の商品レビュー
過去を浄化して見据えた未来に立ちはだかるのは
冒頭から唐突に始まる七彩の過去回想。これが、母や真希の隠れた現実から逃避する利也にとっての慰みと新たな愛情の発露となっていく第2巻である。 七彩の過去は壮絶極まるガチ相姦として描かれるが、愛情に飢えた父と娘の想いが交錯しつつすれ違う哀しさを強烈に湛えたものとなっており実に重...
冒頭から唐突に始まる七彩の過去回想。これが、母や真希の隠れた現実から逃避する利也にとっての慰みと新たな愛情の発露となっていく第2巻である。 七彩の過去は壮絶極まるガチ相姦として描かれるが、愛情に飢えた父と娘の想いが交錯しつつすれ違う哀しさを強烈に湛えたものとなっており実に重苦しい。しかし、重苦しいが故に官能的というのが作者の真骨頂かもしれない。しかも、これが逃避行中の利也と七彩の、愛欲に塗れた、ヤリまくりな温泉旅行とオーバーラップしていく趣向である。あぁ、いやらしい。 ただ、これはお互いがお互いの過去を振り返り、省みて、受け入れていく浄化の作業でもあるため、壮絶ながらどこか荘厳さも感じられる。この清らかさと毎日毎晩の肉欲三昧な、爛れた淫らさとのコントラストが何とも言えない。これにより、そして終盤で訪れる「過去との決別」を以て2人の間には未来が……というところまで実に素晴らしい展開だと思う。久し振りに物語と官能とがこれだけ濃密に絡んだ展開を見た気がした。 しかし、これで終わらないのが本巻のさらに凄いところ。過去を浄化して乗り越えた2人が明るい未来を見据えた瞬間に闇夜のごとく静かに訪れ、それでいて厳然と立ちはだかるのもやはり「現実」という……はぁ、厳しい。ある意味、究極の寝取られ感である。 このどんでん返しが本巻の末尾に位置するよう展開を考慮したのは編集者なのか作者なのか。どちらにせよお見事と唸る他ない。
DSK
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