冬姫 の商品レビュー
冬姫を軸に回りの人物に少しずつ焦点を当てながら時代の流れを描く。信長、濃姫、蒲生氏郷、お市、細川ガラシャなどがそれぞれの物語を紡ぐ。忍びの小性もずの一途さが哀しかった。
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直木賞作家葉室麟氏の最新作が、織田信長の娘冬姫を主人公に据えていると聞き、受賞作よりも先に読んでみました。 意外にもあっさりとした読み口は、戦国を描く小説としては物足りなく感じる人もいるかもしれません。理を積み上げるというよりも、感覚的な筆運びによって絵巻のように情景が浮かんでい...
直木賞作家葉室麟氏の最新作が、織田信長の娘冬姫を主人公に据えていると聞き、受賞作よりも先に読んでみました。 意外にもあっさりとした読み口は、戦国を描く小説としては物足りなく感じる人もいるかもしれません。理を積み上げるというよりも、感覚的な筆運びによって絵巻のように情景が浮かんでいく、そんな小説でした。 各章の導入部で、その章でクローズアップされる登場人物を象徴させる手法は読んでいて楽しめました。既に時代背景の知識がある読者を「ああわかる、きっとあの人物のことだろう」と得意気な気持ちにさせてくれます。特に蜘蛛と絡めて描かれた築山殿の憎悪と哀愁に感嘆。 戦国オールスターが各章でゲスト出演しているような構成(最終章で私的に注目の近衛信尹が登場したのは嬉しかったですが)、主人公冬姫の存在感はそれこそ「春風」の如く。戦乱の風に撓りながらもたおやかに生き抜く戦国の姫の姿がさわやかに描かれていて、読後感は悪くないです。
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うーん…。何でこんなオカルティックな話になったんだ?どうにも冬姫の話ってな気がしない。時代的な背景なのか、あまりにも受け身体質だし。脇役が出張りすぎなのか、冬姫の影が薄いのか。
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「小説すばる」に連載した10話の単行本化。 織田信長の娘で蒲生氏郷の正室となった冬姫の一生を、「大名の娘は女の戦いで領地を増やす」という乳母の教えに疑問を持ちながら、主体的に独自の女の戦いを生きる姿を描いている。 信長の側室お鍋の方や信長の妹お市との確執、姉五徳の嫁ぎ先徳川家...
「小説すばる」に連載した10話の単行本化。 織田信長の娘で蒲生氏郷の正室となった冬姫の一生を、「大名の娘は女の戦いで領地を増やす」という乳母の教えに疑問を持ちながら、主体的に独自の女の戦いを生きる姿を描いている。 信長の側室お鍋の方や信長の妹お市との確執、姉五徳の嫁ぎ先徳川家康の長男信康の母築山殿との対決、信長の正室帰蝶との母子の信頼、信長を殺した明智光秀の娘でキリシタンとなった細川ガラシャとの心の交流、そしてお市の娘で蒲生氏郷を憎む淀君との戦いに、女として育てられた忍びの侍女と大力の巨漢を供に立ち向かう。 エンターテイメントではあるかもしれないが、重厚な作風が評価され、『蜩ノ記』で直木賞候補になっている時期の作品としては如何なものかと思う。
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織田信長の娘で蒲生氏郷に嫁した冬姫の「女いくさ」の物語。 信長周辺の話はいくらでも面白くなると思うのだけど、読者は史実として登場人物たちの行く末を知っているわけで、その中で、自分にしか書けないお話を上梓しようと思うと、これは難しいんだろうな・・とは想像がつきます。 で、葉...
織田信長の娘で蒲生氏郷に嫁した冬姫の「女いくさ」の物語。 信長周辺の話はいくらでも面白くなると思うのだけど、読者は史実として登場人物たちの行く末を知っているわけで、その中で、自分にしか書けないお話を上梓しようと思うと、これは難しいんだろうな・・とは想像がつきます。 で、葉室さんが物語の根っことして使ったツールは、戦国時代の女たちがいかに自分の才覚で生家や夫を守ったか、という意味での「女いくさ」+おやおや、そうくる???という妖かしの数々。 身内間でも頻繁に行われる毒飼いや、忍びの術としての幻惑&不思議のあれこれ。 戦国物として読んでいると、ふっと、眩暈を覚えるような異界に連れて行かれて、うん、これはこれで特色ある物語、ということなんでしょうが、正直、私はもっと地道な(*^_^*)描き方の方が好きだなぁ、と。これはあくまで私の好みの問題なんだけど。 冬姫の父・信長を慕う気持ちや、政略結婚とはいえ嫁いだ蒲生氏郷を好ましく思う気持ち。また、お市の方や茶々、その他、信長を取り巻く女たちの渦の中で自分を見失わない姿勢には好感を持てたけれど、今ひとつ、魅力に欠ける気が。そして、それは他の人物たちにも言えることで、なんか好きになれない人たちばかり。辛うじて氏郷にはしっくりくるものを感じたんだけど、それももうちょっと踏み込んでほしかった気がするし。 私は、葉室さんの「川あかり」で描かれた細やかな気持ちの動きの物語がとても好きなんだけど、その路線はあまり葉室さんご自身、お好きではないのかしら。
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