悪霊(3) の商品レビュー
検閲にかかり差し替えられたほどの主人公の犯罪「告白」の章。カリスマ性をもつ青年ニコライ・スタヴローギンのあまりにも残忍かつ荒涼とした心の叫びが聞こえてくるような気がした。誰の心にも潜む「悪霊」が読み手の前に立ち昇ってくる。
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『悪霊』というタイトルのくせに上巻のワルワーラ夫人の庇護の元生活しているヴェルホヴェンスキー氏の高等遊民みたいな話で「このおっさん、好き勝手に暮らしてんなー」と気楽な雰囲気がある。 ところが、下巻に進むにつれてヴェルホヴェンスキー氏は脇によけて不穏な動きが出てきて事件が起こし、ラ...
『悪霊』というタイトルのくせに上巻のワルワーラ夫人の庇護の元生活しているヴェルホヴェンスキー氏の高等遊民みたいな話で「このおっさん、好き勝手に暮らしてんなー」と気楽な雰囲気がある。 ところが、下巻に進むにつれてヴェルホヴェンスキー氏は脇によけて不穏な動きが出てきて事件が起こし、ラストの方は悲惨。 「ルカの福音書」の引用にからめて、スタヴローギンを中心として(表面的にはピョートルだけど)悲劇に向かっていく展開の仕方、書き方は好み。 神(またはそれぐらいすごいもの)を信じるか、信じないかで全然違う。信じている人は平穏。信じてない人はなんで生きてるのか意味を見つけようとして苦しむ。そんな図式が古典文学にはよく見かける。 キリーロフの考え方も理解できない。だって、〜することで自分が神になるって⁉︎ うーん、大人なんですから妙な考え持たないで下さい…って思ってしまった。 自分自身でもやっぱり自信がなかったのか、揺らぎが見えてたけど。 日本では信仰を持たない人が多いので、自分を信じろ!という感じで、キリーロフとは全く違う。 それにしても、わかりにくい。 何回も何回もじっくり読まないと理解しがたいことだらけ。
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ステパンヴェルホベンスキーと、ニコライスタヴローギンの2人の主人公を親子として解釈する、亀山先生の解釈はとても面白い。
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ラストシーン衝撃!ダンサーインザダークが浮かんできたわ。自分はキリーロフのように、自殺をするような観念は持ち合わせていないと言ったスタヴローギン。それでもこの最期を選んだというのは、理性によって選び取ったというよりも、まさしく悪霊に取り憑かれたためと言えるのかもしれない。 しかし人が死にまくる。その中でも一番さらっと書かれた死、シャートフの奥さんと赤ちゃんの病死が一番堪えた。やはりわたしは死ねない。
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一番好きな小説。自分が歳をとったからなのか、亀山さんの訳が分かりやすいのか、これまで何度も読んできた本のはずなのに、新たな気づきも多く、世界も広く感じられた。
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訳者解説によると、ドストエフスキーはこの小説で神に対する罪の形として「使嗾」と「黙許」を示しているという。 自身は手を汚さず、曖昧な仄めかしによって人を操り、悪事をなす。悪事が行われていることを知りつつ、成り行きにまかせてそれを見逃す。 ...主体的に意思を持って悪事を「行う」の...
訳者解説によると、ドストエフスキーはこの小説で神に対する罪の形として「使嗾」と「黙許」を示しているという。 自身は手を汚さず、曖昧な仄めかしによって人を操り、悪事をなす。悪事が行われていることを知りつつ、成り行きにまかせてそれを見逃す。 ...主体的に意思を持って悪事を「行う」のではなく、自らの責任は回避しつつ悪事に「加担する」。「愛の反対は憎悪ではなく無関心である」という言葉のとおり、人間の弱さが「見て見ぬふり」という形で表れるとき、読者としてはいたたまれない気持ちになる。 すべてが他人事のようなスタヴローギンの振舞いには共感できず、軽薄な言葉に禍の種を混ぜて撒き散らすピョートルに、嫌悪感は抱いても憎悪はできず、ロシアを愛するロシア人であるにもかかわらず、自分の本心を気取ったフランス語でしか話せないステパン・ヴェルホヴェンスキーに苛立ちを感じ...何とも消化不良な読後感なのだが、それでも深く読み返したいと思う不思議な小説だった。ドストエフスキーの偉大さなのだろうか。 漫画版の助けを借りて登場人物を視覚化した上で再読してみたい。
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はっきりいってつまらない。内容が難しいとか登場人物がわかりづらいとか、そういった理解を阻む要素はあるけれども、それを抜きにして考えても単純におもしろくない。『罪と罰』や『カラマーゾフの兄弟』も、おなじように哲学的で難解な内容や、わかりにくい人物関係を含んでいるが、この2作品を読んだときは難しくもおもしろさを感じて、やっぱりドストエフスキーは凄い、と思ったものである。本作の場合はどうか。いつまで経っても恋愛だの活動だののいざこざが終わらず、そうこうしているうちに火事が起きてバタバタと人が死ぬのである。徹底的に私小説であればまだ楽しめるのだろうが、こういう「内輪」の話がいつまでもダラダラと続いているだけでは読んでもぜんぜんおもしろくない。むろん、わたし自身に読む能力が欠如しているという問題点はあるだろう。ただ、それでも先に挙げた2作は難しいなりにも楽しめたのに、本作にはそれがないので、やはり作品の問題ではないかと思う。世界的文豪の作品をこう称するのは気が引けるが、長いだけであんまり優れているとも思えない、悪い見本のような作品だと思う。
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「スタヴローギンの告白」だけは3種類の訳を読んだ。 しかし、現代はもうスタヴローギンさえ「悪」とはいえない時代。
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さっぱりわけがわからない、というのが正直なところ。 「わけがわからない」というのも何がわからないのかわからないみたいな、もうかなりぐちゃぐちゃにわからない。 僕はよく作品をとおして作者の性格や考えてることを想像してしまう。あまりいい癖じゃないかもしれない。ドストエフスキーは過去...
さっぱりわけがわからない、というのが正直なところ。 「わけがわからない」というのも何がわからないのかわからないみたいな、もうかなりぐちゃぐちゃにわからない。 僕はよく作品をとおして作者の性格や考えてることを想像してしまう。あまりいい癖じゃないかもしれない。ドストエフスキーは過去に何作か読んだことがあるから顔見知りぐらいにはわかるつもりだった。だけどこの本からは作者ってものがまったく想像できない。予想できない。何考えてこんなもの書いたんだ? いやもうさっぱりわからん。 ひたすら企みと悪意が描かれる。「同志仲間で」の混乱や、カルマジーノフの朗読みたいな、戯画化され誇張された滑稽さにカタルシスを感じる。作者自身が、「あーもうバカバカしい!」と言わんばかりにこれら登場人物に仕返しをしているような、何かそういった破壊的なものを感じる。 とりたてて誰かに感情移入できるってことはない…ロシアの当時の情勢に明るいわけでもないし、登場人物の思想はどれも極限まで突っ走っているように思えるから。ピョートルにいたっては全然わからん。小説的にあれだけ重要な役回りにも関わらず……たぶん人間じゃないんだろう。 印象に残ったところをかいつまんで…と思ったけどそれも案外難しい。どうなってるんだ。小説すべてが仄めかしのように思えて快いことなんてほとんどないし全体に暗い色調に沈んだみたいなのに、それこそ憑りつかれたように読んだし、そうせざるを得なかった。いつまでもこの小説に憑りつかれていたくはなかったから。
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スタヴローギンはブラックホールのような虚無であり、そこに何か自分好みの意味を見出してしまう周りの人々、という受け取り方もできるのかな。そしてその虚無は悪霊のように人々の中に入り込み湖に飛び込ませてしまう。もっと噛みしめるようにもう一度読みたい。
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