ことばは変わる の商品レビュー
内容は初めて言語学と比較言語学を学ぶ人を対象に分かり易く全体を把握できるように記述してあります。この本を読んだ後は本書で紹介されている言語学の本をいくつか読めば更によく言語学について理解できると思います。 私にとっては第7章ピジン・クレオールのトク・ピシンとハイチ・クレオー...
内容は初めて言語学と比較言語学を学ぶ人を対象に分かり易く全体を把握できるように記述してあります。この本を読んだ後は本書で紹介されている言語学の本をいくつか読めば更によく言語学について理解できると思います。 私にとっては第7章ピジン・クレオールのトク・ピシンとハイチ・クレオールについての解説を興味深く読みました。 「クレオールは言語接触の結果として新しく生まれた言語である。クレオールが形成されるまでにはその歴史的背景のため長年崩れた、堕落した、下品なことばという評価を受けてきた。ピジン・クレオールに対する偏見はすでに完全に過去のものである。万が一、いまだに偏見を持っている人がいるとすればその人は言語について何も語る資格がない。」 講義の中間試験(本書pp107-111より) (設問1)比較言語学について正しいものはどれか? ①2つ以上の言語が地理的に同系であることを前提に比べる。 ②2つ以上の言語が地理的に異系であることを前提に比べる。 ③2つ以上の言語が歴史的に同系であることを前提に比べる。 ④2つ以上の言語が歴史的に異系であることを前提に比べる。 (設問2)対照言語学について正しいものはどれか? ①同系の言語間でおこなうことはできない。 ②異系の言語間でおこなうことはできない。 ③同系の言語間でも異系の言語間でもおこなうことができる。 ④同系の言語間でも異系の言語間でもおこなうことができない。 (設問3)次の中で言語学的に不正確な表現はどれか? ①英語と日本語を対照する。 ②英語と日本語を比較する。 ③英語とドイツ語を対照する。 ④英語とドイツ語を比較する。 (設問4)分化する前の言語を何というか? ①祖語 ②先語 ③親語 ④古語 (設問5)サンスクリット語とギリシア語・ラテン語との共通点に気づいたのは誰か? ①ジョーンズ ②シュライヒャー ③ソシュール ④チョムスキー (6)青年文法学派の主張は何か? ①音素なくして形態素なし ②音法則に例外なし ③音韻に例外あり ④発音できない音はない (設問7)cantāre > chanterの意味は? ①cantāreからchanterになった。 ②cantāreは元はchanterであった。 ③cantāreはchanterよりも広く使われる。 ④cantāreはchanterよりも偉い。 (設問8)次のうち異化はどれか? ①「かほ」が「かお」になった。 ②「ななか」が「なのか」になった。 ③「あらたし」が「あたらし」になった。 ④「くびす」が「きびす」になった。 (設問9)次の記述で正しいものはどれか? ①チェコ語とハンガリー語はスラヴ語派に属する。 ②スウェーデン語とフィンランド語はゲルマン語派に属する。 ③ギリシア語とアルバニア語はギリシア語派に属する。 ④イタリア語とルーマニア語はイタリック語派に属する。 (設問10)次の記述で正しいものはどれか? ①トカラ語は6~8世紀の旧約聖書の言語である。 ②リトアニア語は1言語で1つ語派を形成する。 ③アルメニア語はフロズニーによって印欧語族に属することが確認された。 ④サンスクリット語は現在でも話者がいる。 解答1③ 2③ 3② 4① 5① 6② 7① 8② 9④ 10④
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「積ん読」になっていたので、やや焦って読了。著者ならではの軽やかなタッチで比較言語学の基礎が学べる一冊。言語は変わるとうこと。それから、言語にはすべてに共通する絶対的な「判断基準」は存在しないということ。それらの主張はぶれることがなく、今回も十分に味わい、理解することができた。言...
「積ん読」になっていたので、やや焦って読了。著者ならではの軽やかなタッチで比較言語学の基礎が学べる一冊。言語は変わるとうこと。それから、言語にはすべてに共通する絶対的な「判断基準」は存在しないということ。それらの主張はぶれることがなく、今回も十分に味わい、理解することができた。言語学入門書としてもオススメ。
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比較言語学ってなんとなくこんな感じなんだ、という概略がつかめる。めんどくさい記述が少ないので、読みやすいのが黒田さんの本の特徴だなと。敷居の下げ方が本当に勉強になるなあ。
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ラングとパロールを「言語とことば」と呼ぶことにしたのはいいが,その直後で「言語は変化する」と銘打っておきながら,例示されるのは「ことば」の方ばかりなので,定義通りに用語を使わないところから理系的素養がなさそうな匂いがプンプンする。同じく第1章に「科学とは本来,複雑なもの。ところ...
ラングとパロールを「言語とことば」と呼ぶことにしたのはいいが,その直後で「言語は変化する」と銘打っておきながら,例示されるのは「ことば」の方ばかりなので,定義通りに用語を使わないところから理系的素養がなさそうな匂いがプンプンする。同じく第1章に「科学とは本来,複雑なもの。ところが単純な答えを求める人は少なくない。(p.21)」というのも,ことば足らずで科学オンチの匂いがプンプンする。「ユニバーサルな現象を求める声は高い。だが,違いのほうに目が行くわたしには,不可能にしか思えない。」(p.82) とも言っている。違いに目が行くのは科学を勉強していなくても(科学を勉強していないから?)非専門家に多い。 とはいえ,語り口の軽妙さは相変わらず。入門というか入門前には非常に適していると思うけど,理論を打ち立てるアプローチが欠損している場合は科学ではなく「ことばものしり」でしかない。「20年足らずの言語活動からエラソーな結論を出してもらっては困るのだが」(p.16) という表現も経験主義の悪いところを感じさせる。 ***** こちらだって,なんとか分かりやすく伝えようと,努力はしている。だが,分かりにくい話を分かりやすくする方法が,そこらに転がっているわけではない。あったら教えてほしい。(p.14) 先のことは分からない。ただ,可能性を考えるとき,歴史を振り返ることは大切である。 わたしは人文科学が過去を見つめる学問だと考えている。現在を見つめる社会科学や,未来を見つめる自然科学に比べると,人文科学はなんとなく地味だなあと感じることもある。 だが過去をきちんと整理しないで,やみくもに未来へ進むことがはたしていいことなのか。むしろ現在を正しく把握し,未来に対して的確な判断をするためにも,過去を知っておくことは非常に重要であるはずだ。 少なくとも言語の研究では,比較言語学のように過去を追究する分野が現代の研究に必ず役立つ。だからこそ,絶対に無視してほしくないのである。(p.63) ラスクはなるべくたくさんの言語を同じ方針でまとめ,それをもとに比較をしていこうと考えた。ということは,なるべくたくさんの言語を勉強しようとがんばっていたことになる。そういう人をわたしは尊敬する。だって,最近の「言語学者」は,なるべく少ない数の言語を研究して,なるべく多くの論文を量産しようとするんだもん。 彼の研究はデンマーク語で書かれたものが少なくない。それでも注目されるんだから,それだけで優れていたのである。英語で論文を書きさえすれば注目されると考えている,現代日本の研究者と大違いだ。(p.75) いつの時代だって,若手は過去を乗り越えていく。だから言語学の大御所が「昔は言語学が輝いていたなあ」なんてぼやいていても,気にしてはいけないのである。(p.80) [言語学における偉大な功績なのであって]個人名ではないと断っているのにこういう意見を書く人が,とくに英語専攻の受講生に多かった。生成文法に洗脳されすぎではないだろうか。ほかにはソシュールやサピアを挙げた者がいた。「黒田龍之助」の名前を挙げた者さえいたが,これはこの講義の単位に卒業がかかっている4年生であった。(p.83) 「言語学者」という語に惑わされないでほしい。学術論文を書いているとか,大学に勤めているとか,はたまた立派な髭を生やしているとか,そういったことは何ひとつ言語学者の条件ではなく,一般的なイメージにすぎない。 名もない人々のさまざまな発想が,今日の言語学の基礎を築いた。わたしはそう考えているので,言語学史を「偉人伝」にはしたくないのである。(p.85) [小学生が]作文の中に「マジ楽しかった」「ヤバイ疲れた」などと書くのは,「思ったことを素直に書きましょう」と指導しているからではないか。(p.195) 人の意見を鵜呑みにしないで,自分でも考えてみる。大学はそういう訓練をする場である。資格を取るための予備校ではない。(p.211) だいたい,学問分野に無理して目的を作ろうとすると,なんだかコジツケみたいで,潔くないものができ上がる。大切なのは,言語自身を追究することである。(p.216)
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黒田龍之助氏の本。筆者独特のユーモア、皮肉が込められている文章がよい。 比較言語学のほんとうに「入門」といった感じ。大学の講義を受けているような印象。 また、学生に課されたレポートと、実際のレポートも掲載されており、いろいろな考えに触れられることにも、新鮮な感じがあり、個々の...
黒田龍之助氏の本。筆者独特のユーモア、皮肉が込められている文章がよい。 比較言語学のほんとうに「入門」といった感じ。大学の講義を受けているような印象。 また、学生に課されたレポートと、実際のレポートも掲載されており、いろいろな考えに触れられることにも、新鮮な感じがあり、個々の学生の意見もそれぞれ興味深く、考えさせられるものが多かった。 比較言語学は、日本では、あまり研究者がいないよう。 幾分、多言語話者が少ないということも一因にある。 「多言語話者がすごい」というのはともかく、日本人の比較言語学の研究者が増えてほしい。 比較言語学について、まったくの初心者だが、その使われる専門用語や、概説、研究史など、筆者が簡潔に且つ丁寧に説明している。 ビジン・クレオール語というものも知り、個人的に興味・理解が深まる。
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入門書の中でも敷居が低い。広く浅く扱おうとしているためか、系統だった記述に欠ける傾向がある。講義実況中継風の雰囲気を出す狙いがあるかもしれないが。各章ごとに、授業で実際に課された問題と学生の解答が掲載されている。他人のふんどしと言えなくもないが、様々な考え方があるのだと分かった。...
入門書の中でも敷居が低い。広く浅く扱おうとしているためか、系統だった記述に欠ける傾向がある。講義実況中継風の雰囲気を出す狙いがあるかもしれないが。各章ごとに、授業で実際に課された問題と学生の解答が掲載されている。他人のふんどしと言えなくもないが、様々な考え方があるのだと分かった。黒田さんの考えと異なる考えに対して、手厳しいツッコミが職業意識を感じた。
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