漂流する国ニッポン の商品レビュー
「原発」をテーマとした本が次々と出版されている中で本書のテーマは、「原発をめぐる欲と金」である。 福島原発事故から1年以上を経る中で、明らかになってきた関係者たちの「欲と金」の実態を次々と告発する本書の内容は、確かに事実かもしれないが、読後感はよくない。 「捨石となった原発...
「原発」をテーマとした本が次々と出版されている中で本書のテーマは、「原発をめぐる欲と金」である。 福島原発事故から1年以上を経る中で、明らかになってきた関係者たちの「欲と金」の実態を次々と告発する本書の内容は、確かに事実かもしれないが、読後感はよくない。 「捨石となった原発作業員」「原発マネーという錬金術」「原発マネーに依存した過疎地の経済」「政財官学マスコミに還流する巨額な原発マネー」等と展開される本書の内容は、「原発の光と影」のうちの「影」の部分のみを徹頭徹尾取り上げ、強調したものとなっていると感じた。 ジャーナリストが上梓した本の内容であるし、その内容の一部はすでにいろいろこの間に見聞きした内容であるのだから、全て事実なのだろう。 しかし、格差構造になっている原発の最底辺の作業員が一番被爆したことは事実だとは思うが、それを「捨石になった」と表現することは、「告発」なのか「誹謗」なのかという思いも持った。ちょっと言いすぎなのではないのだろうか。 また、過疎地に巨額の「原発マネー」が札束で頬をひっぱたくように注がれて、過疎地の住民がその「金」で過疎地に似つかわしくない過剰な「インフラ」を整備したり「職場」を確保したりしたことも事実なのだろうが、「過疎化」の中で、苦渋の選択をしてきた僻地の人々の気持ちを考えると、もう少し別の表現や別の考察はできなかったのだろうかとも思えた。 本書の内容は「原発政策」のもつ一面だとは思うが、やはり「光と影」のなかでの「影」の部分のみを取り上げて強調する内容は公平ではないと思う。 本書は、原発の「影」の一面をげんのうで釘の頭をひっぱたくように、容赦なくはっきりと認識することができる本であると思うが、この認識のみでは、今の日本が抱え込んだ問題を解決することは難しいのではないかという点であまり高い評価はできない本であると思った。
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