琥珀の眼の兎 の商品レビュー
ユダヤ系の富豪であり名家であるエフルッシ家の盛衰を描いた本書。著者はその末裔である。 舞台は19世紀から20世紀初頭、エフルッシ家はウィーンに大豪邸を構え社交界に顔を出し、美術品を蒐集する。そのなかには日本の根付も含まれる。時代、人、美術品が複雑に絡み合いながら残酷な命運を辿るの...
ユダヤ系の富豪であり名家であるエフルッシ家の盛衰を描いた本書。著者はその末裔である。 舞台は19世紀から20世紀初頭、エフルッシ家はウィーンに大豪邸を構え社交界に顔を出し、美術品を蒐集する。そのなかには日本の根付も含まれる。時代、人、美術品が複雑に絡み合いながら残酷な命運を辿るのだが、時代設定と場所、そして人種から察せられるように、その残酷さはナチによるものである。 本書は、海外では文学系の賞を受賞したらしい。たしかに、翻訳を通して読んでみてもノンフィクションや歴史物、伝記というより、頭から足まで文学的な表現と文体で彩られている。それが没落していく名家の数奇な運命を描くには合っているとは思うが、人によってはすこし読みづらいかもしれない。
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かつてウィーンやパリで栄華を極めたあるユダヤ人一族の末裔が、大叔父から相続した根付を巡り、一族の隆盛と悲劇の歴史を追うもの。19世紀末頃の勃興期から第一次、第二次大戦を経て、ほとんど全ての財産や友人を失う。日記や親戚へのインタビューから様々な史実が明らかになり、抑えた筆致ではある...
かつてウィーンやパリで栄華を極めたあるユダヤ人一族の末裔が、大叔父から相続した根付を巡り、一族の隆盛と悲劇の歴史を追うもの。19世紀末頃の勃興期から第一次、第二次大戦を経て、ほとんど全ての財産や友人を失う。日記や親戚へのインタビューから様々な史実が明らかになり、抑えた筆致ではあるが国や人種差別への怒りを感じる。最終的に根付は日本に永住を決めた大叔父の手で戦後間もない日本に持ち込まれる。そこでの友情にはホッとさせられる。戦争や人種差別は心底恐ろしいということを再確認。
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欧米各国での授賞という事と根付けの表紙とで根付けの蘊蓄がわかる欧米人が語る根付けの種集のお話かと思い3年ほど前に買った本だが、読み始めてわかったのが中身が全く違ったという事だ。ユダヤの大富豪エフルッシ家の末裔である陶芸家の著者が相続した根付の来歴を辿るために、その所有者達であった...
欧米各国での授賞という事と根付けの表紙とで根付けの蘊蓄がわかる欧米人が語る根付けの種集のお話かと思い3年ほど前に買った本だが、読み始めてわかったのが中身が全く違ったという事だ。ユダヤの大富豪エフルッシ家の末裔である陶芸家の著者が相続した根付の来歴を辿るために、その所有者達であった自分の先祖の血筋をたどりその様子を描いたノンフィクション小説である。ユダヤ人の才覚をもってしてパリで栄華をつかみながらもウィーンにおいて当初贅沢の極みの世界からナチスの横暴でもってすべてを失った家族、アメリカに逃れていた一人が敗戦後の東京へ。次々と寄せる歴史の荒波に呑まれながらも奇跡的に一族の中で受け継がれてきた根付けのコレクションを巡るお話に引き込まれ一気に読み進んだ。ただいつも翻訳物のときに思うがこの本も翻訳のクオリティは高いとは言えず日本語としては読みずらくはあったのが少し残念だが、その点を差し引いても読む価値のある本だと思う。20世紀のパリやウイーンの事を掘り下げて知る事の出来るのも楽しめるポイントだ。そんな久しぶりに出会った楽しめるノンフィクション物語を読むBGMに選んだのはEnrico PieranunziIの"Live in Japan". 知る人の多くないアルバムだと思うがなかなかです。
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内容はともかくとして、こんな角度からウィーンを知れることはそうそうないと思うので、作者に感謝。 ウィーンに住む大富豪のユダヤ人家族の持つ財宝のうちの一つである日本製根付のお話。 一族についての話なのか、根付についての話なのか、世界史についての話なのか、自分でもわからなくなってきた...
内容はともかくとして、こんな角度からウィーンを知れることはそうそうないと思うので、作者に感謝。 ウィーンに住む大富豪のユダヤ人家族の持つ財宝のうちの一つである日本製根付のお話。 一族についての話なのか、根付についての話なのか、世界史についての話なのか、自分でもわからなくなってきたと作者が書いていたけど、まさにその通り。 ある一族が持つ財宝から世界史が読み取れるというすごい作品。 ユダヤ人差別に関する問題については、詳しく勉強もしていないので私に語る資格はないけれど、確かに、自分たちと違う風習を持ち・違う宗教で・違う見た目で、よそからやってきた人たちが、これだけの莫大な富を得ていたら、なかなかそれを認めるのは難しいのかもしれない。 途中からノンフィクションとは思えなくなってきたけれど、これもまた事実。 けれど、目の前でルイ16世の机が窓から投げ落とされるっていったいどんな気持ちだろう。読んでるだけで胸が張り裂けそう。 暴動や革命もわかるけど、お願いだから歴史的価値のあるものに傷をつけないでほしい。 決して「面白い」わけでも「読んでて止まらなくなる」わけでもないけれど、貴重なウィーン本。
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これは、明治維新後、横浜港からジャポニズムブームに沸くパリへ、そして、ウィーンを経て第二次世界大戦後の日本に舞い戻ってきた根付264点の物語である。と、同時に、それはオデッサ出身のユダヤ人財閥エフルッシ家の汎ヨーロッパでの繁栄と二度の世界大戦での没落の物語でもある。さらに言えば、...
これは、明治維新後、横浜港からジャポニズムブームに沸くパリへ、そして、ウィーンを経て第二次世界大戦後の日本に舞い戻ってきた根付264点の物語である。と、同時に、それはオデッサ出身のユダヤ人財閥エフルッシ家の汎ヨーロッパでの繁栄と二度の世界大戦での没落の物語でもある。さらに言えば、それは20世紀という時代を小さな民芸品を通じて語ったもの哀しい歴史の物語である。
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美術や世界史にあまりなじみがないこともあり、 また文章もどちらかというと読みづらく、 ようやく最後までたどり着けたという感じで、 それほど感銘を受けませんでした。 しかしながら、ナチスがユダヤ人一家の財産を根こそぎ奪っていく中、 根付けが一家のメイドの機転で強奪の難を逃れ、 や...
美術や世界史にあまりなじみがないこともあり、 また文章もどちらかというと読みづらく、 ようやく最後までたどり着けたという感じで、 それほど感銘を受けませんでした。 しかしながら、ナチスがユダヤ人一家の財産を根こそぎ奪っていく中、 根付けが一家のメイドの機転で強奪の難を逃れ、 やがてふるさとの日本に戻ってくるくだりは非常にドラマチックで 感動しました。
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※このレビューにはネタバレを含みます
(読む前の印象) 無機質でなめらかで、収まるべきところに寸分の狂いもなく収まった瞳。あらすじを読む前に題名からそんなイメージが浮かんできて、気になった本。 内容はイギリス人の主人公が大叔父から根付のコレクションを受け継ぐところからはじまる。
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陶芸家のエドマンドは東京の大叔父の部屋で出会った264の美しい根付に魅了された。やがて根付を相続した彼は、その来歴を調べはじめる。根付を最初に手に入れたのは、彼の曾祖叔父だった。19世紀後半に日本から輸出された根付はマルセイユに上陸して、美術蒐集が趣味の曾祖叔父の手に渡った。根付...
陶芸家のエドマンドは東京の大叔父の部屋で出会った264の美しい根付に魅了された。やがて根付を相続した彼は、その来歴を調べはじめる。根付を最初に手に入れたのは、彼の曾祖叔父だった。19世紀後半に日本から輸出された根付はマルセイユに上陸して、美術蒐集が趣味の曾祖叔父の手に渡った。根付たちは華やかなりし頃のパリでプルーストやルノワールに愛でられ、その後、ウィーンの大富豪の親類の手に。だが、ナチスの魔の手が一族と根付に忍びよってくる―。根付の壮大な旅路を追いながら、エドマンドは一族の哀しい歴史を知る。全英を絶賛の渦に巻き込んだ傑作ノンフィクション
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19世紀末のパリからウィーン、そして戦後の東京へ・・海を渡った根付コレクションがたどる数奇な運命と、ユダヤ人銀行家の一族の興亡を描いたノンフィクション。 語り手の感傷がやや前に出すぎな気もしますが、小説風のドラマチックな場面もあったりと、ぐいぐい読めて面白かったです! 東欧の小村...
19世紀末のパリからウィーン、そして戦後の東京へ・・海を渡った根付コレクションがたどる数奇な運命と、ユダヤ人銀行家の一族の興亡を描いたノンフィクション。 語り手の感傷がやや前に出すぎな気もしますが、小説風のドラマチックな場面もあったりと、ぐいぐい読めて面白かったです! 東欧の小村から成り上がり、ナチの台頭ですべての財産を奪われたユダヤ系の子孫たちが、世界中に散っていく過程は、よくできた大河ドラマのよう。まさに、事実は小説よりも奇なり。
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※このレビューにはネタバレを含みます
18世紀初頭、ポーランド国境に近いウクライナ北部の寒村・ベルディチフから出てきたユダヤ人が名をヨーロッパ風に変え、当時の貿易港・オデッサで穀物取引に商機を見出し隆盛を極めていく。 やがて、一族は中央ヨーロッパへの橋頭保として、当時の政治・文化の中心地であるウィーン、パリへと子弟を派遣し銀行業を興し、ユダヤ系金融業者としてロスチャイルド家に並ぶ資産家として知られるようになる。 その末裔で、英国の著名な陶芸家である著者が、数奇な運命をたどって手元に伝わって来た日本の根付けコレクションを媒介に一族の来し方を探る迫真のドキュメント。 著者の丹念な調査と驚くべき粘りによって解き明かされていく数々の事実(芸術面ばかりでなくユダヤ人受難の歴史も)に感銘を受ける。印象派の絵画を好む美術愛好家の方などは、ヘタなミステリ小説を読むよりも興奮を覚えるに違いない。
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