世代間格差 の商品レビュー
明治大学経済学部教授(経済学)の加藤久和(1958-)による、世代間格差の概説。 【構成】 第1章 世代間格差を考える 1 世代間格差を捉えるために 2 財政と労働市場からみた世代間格差 3 世代間格差の何が問題か 4 世代間格差拡大の背景を探る 5 本書の基本的な立...
明治大学経済学部教授(経済学)の加藤久和(1958-)による、世代間格差の概説。 【構成】 第1章 世代間格差を考える 1 世代間格差を捉えるために 2 財政と労働市場からみた世代間格差 3 世代間格差の何が問題か 4 世代間格差拡大の背景を探る 5 本書の基本的な立場 第2章 疲弊した社会保障制度 1 社会保障制度の概要 2 社会保障制度の問題点 3 社会保障制度改革の動向 4 海外の社会保障制度と改革のヒント 第3章 変貌する労働市場・雇用システム 1 日本型雇用システムの崩壊と変遷 2 企業主体の社会福祉の終焉 3 若年層と高齢層の労働市場 4 積極的労働市場政策とセーフティネット 第4章 立ち後れる人生前半への社会政策 1 少子化と世代間格差 2 人生前半期の社会政策 3 少子化対策としての家族政策 4 女性労働と就業環境 第5章 いかに世代間格差を縮小するか 1 世代間格差と財政システム 2 経済成長と整合的な社会制度とは何か 3 財政制度の持続可能性と世代間格差 4 精度の持続可能性を目指して 第6章 新たな経済社会システムを目指して 1 年金制度の改革 2 医療制度の改革 3 雇用システムの見直し 4 財政運営のあり方 5 少子化対策と人口減少への対応 6 世代間公平性をどう担保するか 世代間格差が世間で声高に議論されはじめたのはいつ頃だろうか。いつの時代も世代間の格差は存在するが、団塊の世代がすでに60歳定年に到達し、年金受給を迎えようとする現在ほどその問題が明瞭に示されている時期はないだろう。 本書は、所得の再分配と低所得者への生活保障を目的とする社会保障の負担・給付が、若年層と高齢者層の間で「分かち合う」というレベルを越えて格差が生じていることをコンパクトに論じている。もちろん、中にはこれまでさんざん議論されている事項の確認もある。 本書は、代替案を提示することが極めて難しいこの問題に対して、諸外国の社会保障制度を引き合いにだしながら、積み立て方式への段階的な移行を示す。これが第5章・第6章の議論である。 ただ、社会保障改革の実際のところの問題は、給付水準の引き下げという極めて難しい政治課題に対して、政府与党が政治生命をかけてこの問題に取り組み、投票率が相対的に高い年金受給世代の有権者の支持を取り付けられるかという点にある。 民主党政権による「税と社会制度の一体改革」が提示されているこのタイミングで、読むべき一冊である。問題は刻々と悪化している。有権者は、感情的な「世論」ではなく、理性的な「輿論」を形成して、この問題の答えをだす時に来ている。
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例によって、レビューは自分のブログに載せました。記事タイトルは「リアルディストピア」。 いや、本当に日本の将来は暗い。その現実が数字となって現れる。でも、だれかがその不都合な真実を明かさなければいけないのです。それがこの本。 「ガリア戦記」に残るカエサルの言葉「ほとんどの人々は、...
例によって、レビューは自分のブログに載せました。記事タイトルは「リアルディストピア」。 いや、本当に日本の将来は暗い。その現実が数字となって現れる。でも、だれかがその不都合な真実を明かさなければいけないのです。それがこの本。 「ガリア戦記」に残るカエサルの言葉「ほとんどの人々は、自分が望んでいる物事を喜んで信じる」。この言葉が時代を超えた真実だからこそ、最近でも「日本は借金が多くても大丈夫。それはそのほとんどが日本国民の債権となっているから」などといえるのではないでしょうか。「日本は借金が多くても大丈夫」は確かに私たちが望んでいること。でも現実は違うんです。 この本を読んで、それで自分が見知った事実を照らし合わせて、評価してみました。ちょっと力が入ったレビューなので、ぜひ読んでほしい、以下のURLです。 http://pinvill.cocolog-nifty.com/daybooks/2012/02/post-9e8e.html
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【読書その14】先月1月30日、国立社会保障・人口問題研究所が発表し、世間で大きな反響を呼んだ、新たな人口推計(12年推計)。 50年後の合計特殊出生率は前回の推計値(1,26)より上向き、1,35に改善すると予想されているものの、50年後には日本の人口の約4割が高齢者となり、そ...
【読書その14】先月1月30日、国立社会保障・人口問題研究所が発表し、世間で大きな反響を呼んだ、新たな人口推計(12年推計)。 50年後の合計特殊出生率は前回の推計値(1,26)より上向き、1,35に改善すると予想されているものの、50年後には日本の人口の約4割が高齢者となり、その時点での生産年齢人口が半減するという。 そのような現状におおいて、問題視されているのが広がり続ける世代間格差。 本書では、そのタイムリーな政策課題について、かなりわかりやすく説明をしている。世代間格差拡大の背景などの基本的なところから、我が国の社会保障制度、労働市場、雇用システム、少子化対策、諸外国との社会保障制度の比較に至るまで、本書が扱う範囲は非常に幅広い。 特に現在、目下、議論の的になっている現行年金制度の問題点、新年金制度の課題等についての記載も多く、年金制度について考える上で非常に良い本。
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少子高齢化に年金や雇用問題など、いまの社会システムの不具合について、経済学者の視点からわかりやすく解説してあります。 「社会福祉が充実してくると、経済発展が停滞する」という指摘がおもしろかった。不安定な環境のほうが、働く人々のモチベーションを高めるらしい?というのは、妙に納得のい...
少子高齢化に年金や雇用問題など、いまの社会システムの不具合について、経済学者の視点からわかりやすく解説してあります。 「社会福祉が充実してくると、経済発展が停滞する」という指摘がおもしろかった。不安定な環境のほうが、働く人々のモチベーションを高めるらしい?というのは、妙に納得のいく理屈です。 この本を読んで、とりあえず消費税UPは急務なのかなぁ、と覚悟が定まってきました。(私はもともと北欧型の福祉社会が好みなので、消費税高めの政策に転換していくといいな、と思っているのですが) あとは、これだけ経済やIT情報がグローバル化したことで、「国」という単位で世の中を動かしていくのは限界にきているのかも、という印象も受けました。今後は「都市」にシフトしていくのでは・・。
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日本の人口構造はこの数十年の間に激変を遂げた。しかし、社会保障制度の見直しは遅遅として進まない。若い世代が高齢世代を支えるというシステムが温存された結果、世代間に大きな格差が生じている。 本書は、こうした問題を「世代間会計」という新しい考え方を用いつつ、きちんと数量的に明らかに...
日本の人口構造はこの数十年の間に激変を遂げた。しかし、社会保障制度の見直しは遅遅として進まない。若い世代が高齢世代を支えるというシステムが温存された結果、世代間に大きな格差が生じている。 本書は、こうした問題を「世代間会計」という新しい考え方を用いつつ、きちんと数量的に明らかにするとともに、経済学的に持続可能なシステムの構築を提言している。将来への不安が増しつつある今、広く読まれるべき一書だろう。 たとえば、今年の政局でも大きな争点となった「子ども手当」に関しても詳細な分析を行ないつつ、今後は「直接的に出生促進を目的に掲げることも検討すべきである」というような提言を行っている。具体的には「フランスのような子どもにかかる手当についての対象を第二子以降に定め、かつ第三子以降は増額するという傾斜配分を行う」とする。 ちなみに、この給付方式は江戸時代版子ども手当ともいうべき「赤子養育仕法」とまったく同じ考え方である。先人の知恵の重みということについても考えさせられる提言といえそうだ。
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今、とてもホットな論題だと思う。 年金や、若者の就職の問題、少子化など。 日本が直面している問題は、人口構造がもたらしているものがほとんどであるといってもいいのではないだろうか。 そして、この問題は、いまだかつてどの国も直面したことのない問題である。 それぞれの課題について、解決...
今、とてもホットな論題だと思う。 年金や、若者の就職の問題、少子化など。 日本が直面している問題は、人口構造がもたらしているものがほとんどであるといってもいいのではないだろうか。 そして、この問題は、いまだかつてどの国も直面したことのない問題である。 それぞれの課題について、解決策があげられているが、著者が一番言いたいのはベーシックインカムの導入なのかな~と思った。 先ほど、企業の定年引き上げの義務付けが話題になっているが、なんというか、導入の手順がおかしいような気がする。 世代間の軋轢を無駄に生じさせてしまうのではないか、と懸念している。
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私たち現役世代が最も憂慮していることの一つ、年金などの社会保障問題。 ちゃんと貰えるのか、どんどん保険料値上がりしてくのかなど、現役世代と引退世代を比べた格差問題を書いている。 著者は年金受給額を減らせ、保険料を下げろなど、現役世代中心な意見を言っているのではなく、世代間で不公...
私たち現役世代が最も憂慮していることの一つ、年金などの社会保障問題。 ちゃんと貰えるのか、どんどん保険料値上がりしてくのかなど、現役世代と引退世代を比べた格差問題を書いている。 著者は年金受給額を減らせ、保険料を下げろなど、現役世代中心な意見を言っているのではなく、世代間で不公平がなく均衡した社会保障システムの構築の重要さを提議している。 全般に渡って詳しく書いてあるが特に注意すべきだと思ったのが、若者層の雇用拡大と高齢層との世代間格差の縮小ポイントは経済成長でパイの奪い合いではないと言うこと。 本著によると、高齢層が定年を伸ばしそのまま就業しているから現役世代の仕事が無くなるのではなく、経済成長が鈍化しているから相対的に仕事が無くなっているのだと研究結果に出ている。 つまり、現役世代の就業率を上げるには高齢層から仕事を取るのではなく、あくまでも経済成長を上げることが重要だと。 それと、これも本著によると、出生率増加には、社会保障としての現金給付より、現物給付の方が効果があると詳しく書いてある。 これも感覚的に理解し易い。 世代間で奪い合うのではなく、あくまでも全世代で協力して格差縮小していくことが大切だということがわかった。 世代間格差について本当に詳しく書かれている。 TPP問題や原発問題なども確かに重要な問題ではあると思うが、この世代間格差とゆう問題が今最も重要課題であると強く感じました。 若い世代の方に特に読んでほしい著書です。
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