かわいそうだね？ の商品レビュー

綿矢りさ【著】

2022/08/20

以下の２作品を収録。

「かわいそうだね？」
樹里恵もアキヨも、誰かがいないと自分を確立することができない時点で甘いなぁと見下しながら読んでいたが、とにかく最後の隆大の家で関西弁でブチギレる爽快感で読後感スッキリ。さすが関西人、キレても吉本みたいに面白さが滲み出る。

自分は「1人だから寂しい」と思うことはほぼなく、「一緒にいて楽しいのであればそれはそれでアリ」という交際感情で40年以上経っても価値観変わらなかったので、この話の登場人物たちのように、他人への熱量がある行動には共感はできていない。一方、アメリカ帰りで快活な性格かと思いきや、結局周りに流されているだけで、実は他人への熱量は低く、結果うまくいかない隆大には共感するものがあった。

彼氏が元カノを家に住まわせるという設定でここまで話を膨らませて面白く書けるのだなぁと感心しながら読んだ。exの家に住み込んだり、樹里恵という彼女の存在を無視して隆大と好き放題したりと、都合良くアメリカ帰りを免罪符にしているアキヨが、日本人から見るとファッションセンスダサく、就職難で日本社会で暮らすことに順応できていない描写が、郷に従わない報いを受けていて痛快。

「亜美ちゃんは美人」
文章量短めの2本目なので期待せず読んだら、こちらの方が面白かった。
・美人な女子とそうでもない女子が仲良く行動しているメカニズム
・タトゥーを入れる美人や、オラオラ系ブサイクを選ぶ美人がいる理由
といった、男性作家が書いたら炎上しそうな事案に対して、女性作家としてあけすけに、もっともらしい分析がされている。

ここでも、チンピラ馬鹿の崇志が海外留学帰りの設定になっており、作家の帰国子女ディスが気持ち良い。
誰もが自分を愛するが故に孤独な亜美ちゃんのわがままとおかしさの描写が良い。また、すべてを看破しているかのような亜美研究会の小池くんに痺れた。

両方のエピソードとも、女性の水面化の攻防がリアルに描かれているように思えて、かなり面白かった。

以下、亜美ちゃんは美人より
--
すなわち、かわいいは権力、ださいは死刑。
--
この子はお姫様だけど、この子はいくらでもからかってもいいとか、まるでテレビの中のアイドルと女性のお笑い芸人のようにやすやすと立ち位置を決めたがるが、女同士の世界でははっきりした立ち位置などなく、みんな、同じだけ価値のある女の子として存在している。
--
「普通、亜美さんのような方は、友達はいても親友はいないものです。人の気持ちが分からない美人とは、元来孤独なものですからね。」
「復讐できる機会ですね」
--
なぜ私が選ばれたのか。それは私が亜美を好きではなかったからだ。

※余談だが、水色主体の単行本にピンク色の紐しおりの装丁が綺麗。

2022/07/10

高校生のときはいまいち共感できなかったけれど、今読み返すとよくわかる。

温泉旅行でこっそり携帯のメールを見てしまうシーンなんかは、読んでいてつらかったです。
しゃーない、で済ませなくちゃいけないなんて、やるせないなあ……。

2022/01/19

短編２つ。どちらも共感しかない。もう、共感しかない！
女性ならではの思い、考えが詰まってた。
可愛くなれない自分、かわいそうという憐れみ、国の違い、嫉妬。わかるー、がじんわりと襲ってきて、最後には「ほんと、そうなのよ！」となっていた。
本を読み進めるの苦手だけど、これは一気読み。
この小説すごいなー。こんな小説が書ける人になりたい。

2021/11/10

彼が長くつきあっていた元カノと一緒に住み始めて悩み続ける百貨店勤務の女の話と、とんでもない美人を親友に持った女の苦悩の話の2話の中篇小説集。

どちらも読みやすくて面白い、特に2つめの主人公の心の葛藤がよくわかるかも。

2021/09/17

【おすすめの人】
女の嫉妬を読みたい人
女社会あるあるが面白い人

【感想】
かわいそうだね？と亜美ちゃんは美人の2編
かわいそうだね？は彼氏彼女と元カノの3人の三角関係と彼女独特な世界観が面白い☺️
か弱く女らしいが難しい私にはとっても共感だった
☺️
亜美ちゃんは美人は女同士の嫉妬や美人ならではの悩みがわかりやすく描かれていてこれも独特だと思いつつも共感☺️

2021/08/16

狂気的ともいえる感情の爆発を、コミカルな表現を挟んで説明しているので、深刻な状況であるにも関わらず、どうしてもクスッと笑わざるを得ない。。　最後の展開には、痛快さと笑いが入り混じった感情が湧いてきて、ページを捲る手が止まらなかったです。

2021/01/24

かつてフランス人の友人に勧められた本。
恋人に違和感を抱きつつも自分を騙し騙し交際を続ける主人公。
恋人の元カノにも感じよく接しようと努力する。
フランス人にはこういう性格理解できるのだろうか。
いや、無理だろうな…
別れるわけではなく、恋人や元カノに言いたいことは言った上で関係を続けそうだ。
それでみんな仲良くなっちゃったりして。

2020/12/29

女同士の嫉妬の物語、2編。「かわいそうだね？」と「亜美ちゃんは美人」

マツコ・デラックスが言ってた。
女同士であっても、男目線を通して互いを評価してる。女子会だって、自分の趣味100%じゃなくて、ある程度男ウケするファッションで行くだろ？って。
それを思い出した。この本でも、女同士の嫉妬の間に男が介在してるから。

「かわいそうだね？」
悪い男やなー、気を付けよう（笑）と思った。いや、アキヨって女が悪いんだろうか？なんにせよ、しゃーない。この恋は諦めるしかない。暴れまくるところが痛快で結構好き。

「亜美ちゃんは美人」
美人の辛さってあんまり焦点当たらないと思う。期待されるとか、注目浴びちゃうとか。でもね、正直ね、私はそれでも美人になりたい。それですら羨ましいんだもの！美人さん、すいません。

2020/11/28

綿谷さん、感度高いよなー笑
生きてていろんなことを人一倍経験し、感じているんだろうなー。

女、猫かぶって生きてる。
自分をよりよく見せて生きてる。
その方が普段は生きやすいから。
けど、「ねこがいなくなった」ときとの差がはげしく恐ろしいと言われる。ギャップになる。嫌われる。

だからといって日常で闇の部分見せると引かれる。周り、離れる。

なにこれ。
生きにく。

主人公はとっても日本人らしく、ザ日本人の思考がほろほろとでている。

文中で客観的に「日本人のならではの思考」として「和をもって貴しとなす」「本音と建前」「内弁慶」の言葉を挙げていたが、まさに彼女こそこれの塊。

女をよくわかってるな〜と思いました。

逆に「亜美ちゃんは美人」は綺麗事では？と感じた。
さかきちゃん、いい子すぎないか？
私なら嫉妬でもっとこの子のこと突き放してしまうかも。

2020/09/20

2020/9.14.
お、女〜〜〜〜〜〜〜〜〜！って感じ！共感したくないのに理解出来てしまうというか、心がハイな時に読んで心淀ませたい感じの本だった。蹴りたい背中で離れて以来の綿矢りさ著を読んだけれど、存外読みやすくてびっくりしてしまった。面白かった。