「本屋」は死なない の商品レビュー
久しぶりで硬派のノンフィクション、それも書店についての本を読む。モノとしての本に対して自分が持っている価値観(こだわり)が、自分だけのものではない、ほかの人とも共有できるものであったことを認識することができ、正直嬉しかった。従って、モノとしての本を扱うリアル書店も当分はなくならな...
久しぶりで硬派のノンフィクション、それも書店についての本を読む。モノとしての本に対して自分が持っている価値観(こだわり)が、自分だけのものではない、ほかの人とも共有できるものであったことを認識することができ、正直嬉しかった。従って、モノとしての本を扱うリアル書店も当分はなくならないであろう。定年を迎えたら、小さい本屋を開きたくなった。
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「本屋」は死なない!と声高に叫んでいる内容ではない。死なないで欲しいと切実な悲鳴に似た内容である。 独自の選書眼で地方発のベストセラーを連発した「盛岡さわや書店」のカリスマ書店員・伊藤氏とその弟子たちの話は、とくに興味深かった。 さわや書店には12,3年前に行ったことがあ...
「本屋」は死なない!と声高に叫んでいる内容ではない。死なないで欲しいと切実な悲鳴に似た内容である。 独自の選書眼で地方発のベストセラーを連発した「盛岡さわや書店」のカリスマ書店員・伊藤氏とその弟子たちの話は、とくに興味深かった。 さわや書店には12,3年前に行ったことがある。大した広さでもないのに東洋文庫が棚一面に陳列されていた。東京ではジュンク堂などの書店でしか品ぞろえしていない商品群だ。盛岡の人の読書欲のすごさにびっくりした。 全国的にも有名なさわや書店も近くにジュンク堂書店が出店してから苦境に立たされ、それを機に伊藤氏は書店業から引退する。 取次のPOSデータによる配本まかせ、本部一括仕入れによる地域色を排した全国一律の棚構成、俗に言う『金太郎飴書店』と対極の店として存在感のあったさわや書店も、経営が厳しくなってからは「普通の本屋になろう」と方針転換しているらしい。それはつまりベストセラーを前面に押し出し、経費節約のためにパート・アルバイトで店を切り盛りし、支払いのために月末には返品を大量に出すとうことか。 個性的な書店がなくなるプロセスが非常によくわかる。おそらく全国的にこういう現象が増えているのであろう。 書店は明らかに衰退産業である。個性ではなく資本力がものを言うつまらない業界になりつつある。 しかし、もし本屋という業態がこの先、新しい展開を見せるとしたら、その先鞭をつけるのは、おそらくここに登場するあきらめの悪い曲者たちだろう。 抗い続けて欲しいと思う。
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以前から気になっていた一冊でしたが、今年から読書環境を電子書籍リーダーに切り替えたので、読める機会はないだろうと思っていました。なにしろ、電子書籍は印刷の本とは対立構造にあり、印刷の本しか扱わない書店にとっては電子書籍は商売敵でしかないですからね。それが電子化されたということ自体...
以前から気になっていた一冊でしたが、今年から読書環境を電子書籍リーダーに切り替えたので、読める機会はないだろうと思っていました。なにしろ、電子書籍は印刷の本とは対立構造にあり、印刷の本しか扱わない書店にとっては電子書籍は商売敵でしかないですからね。それが電子化されたということ自体に、まず驚きました。 ここでいう「本屋」は、一般の書店ではなく、そこで働く書店員、それも本の並べ方や棚のつくり方にこだわりを持っている書店員をさしています。本書を読むまで、書店の品揃えはともかく、並べ方まで意識したことはなかったので、新鮮な気持ちで読むことができました。 著者は取材した店員の方々以上に、書店のあり方にこだわっているのかもしれません。棚のつくり方にこだわりがなく、ただ取次から送られてきた書籍を並べるだけの書店は嫌っているし、そういう売り方しか認めない大型チェーンの書店に対する嫌悪感を隠そうともしていません。 とはいえ、とは思います。著者がこだわっているほど、読者や一般の消費者は棚の中の本の配置に気を留めているとは言えないし、書店員もそれを理解していて、わかる人には書店員の意図やこだわりがわかるし、わからない人にも目的とする本や関連書籍を見つけやすい配置を目指す、そういう形にしているのであり、こだわりを押しつけているわけではないでしょう。 本屋も商売でやっている以上、経営を継続させることもミッションのひとつ。来店者の利便性を優先させて棚を作っているでしょうし、そこは著者のこだわりとは相容れない部分となっているかもしれません。 その辺りの対比というか、著者が自分の理想と現実との間で苦悩している姿も見て取れます。自分の理想を押し通そうとする著者と、現実の商売の立場からそれは不可能だとする書店側のギャップは、いつまでも埋まらないものではないかと思います。 著者や書店員のこだわりとは関係なく、書店はいまや重大な岐路に立たされています。新刊書を多数発行し、書店は返本前提でそれらを受け入れるというビジネスモデルが崩壊しつつあり、売れない書籍が多数出版される状況が出版社や書店の経営を苦しめています。また、ネット通販や電子書籍の販売も本格的になり、書店で本を買わない人も増えてきました(私もその中に入っています)。 そういった中で、書店や出版社がどのような生き残り策、あるいはビジネスモデルの変換を行えるかは、今後の出版のあり方を含めて注目すべき部分ですが、まだその見通しは立っていませんし、本書の射程とは別の部分の問題提起であるようにも思います。
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悩ましい本。難しい本。 巡り巡って、最後はガワの話?装丁が素敵、以上のこと、紙としての、物質としての本、って意識は原田さん以外の書店員さんはあったのかなぁ。 著者の中で答えが出てないなかで、本屋は死なないって結論ありきなんだけど、まだモヤモヤしてる頭のなかをとりあえず文書にしてみ...
悩ましい本。難しい本。 巡り巡って、最後はガワの話?装丁が素敵、以上のこと、紙としての、物質としての本、って意識は原田さん以外の書店員さんはあったのかなぁ。 著者の中で答えが出てないなかで、本屋は死なないって結論ありきなんだけど、まだモヤモヤしてる頭のなかをとりあえず文書にしてみました、って感じてしまう。何か提言とかあるわけでもなし。 結局僕は本屋じゃないからなぁ。本屋に何を期待するかとか、改めて本屋との関係を考えるきっかけにはなりました。
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この著者は王道から外れた書店、書店員をいばら道を歩くヒーローように仕立て上げたい、気持ちもちょっとある。ように思える。 この人も取りあえず本を手渡す人になってみればいいのにと思う。 結局際を行く書店員や書店の周囲を巡っているだけのような印象。 私も本を手渡す人になりたい。 そこ...
この著者は王道から外れた書店、書店員をいばら道を歩くヒーローように仕立て上げたい、気持ちもちょっとある。ように思える。 この人も取りあえず本を手渡す人になってみればいいのにと思う。 結局際を行く書店員や書店の周囲を巡っているだけのような印象。 私も本を手渡す人になりたい。 そこには必ず広い売り場が必要ということではない、と判った。 それから随所に出てくる伝説の書店員なる人々は気になった。 彼らの考え、功績などはに今後知ってみたい。
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※このレビューにはネタバレを含みます
原田真弓 ひぐらし文庫 井原万見子 イハラハートショップ 道成寺 妻宝極楽 わが妻こそ日本一なりと大切にすることが、一家の繁栄、極楽浄土への道という考え 盛岡 さわやか書店 伊藤清彦 図書館の仕入れ 図書館流通センター TRCが用意するセットに頼る 南相馬の図書館 鳥取 奈良敏行 定有堂書店 ちくさ正文堂 古田一晴
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職業柄ということでもなく、本もしくは本屋さんについて書かれた本は好きである。最近は電子書籍について書かれた書物も数多く、それらを読むことも多いが、本書はそんな時代背景の中で、特に紙の本、実体としての本を扱う、書店員の方々をクローズアップしたルポである。しかも、敢えて全体像を俯瞰し...
職業柄ということでもなく、本もしくは本屋さんについて書かれた本は好きである。最近は電子書籍について書かれた書物も数多く、それらを読むことも多いが、本書はそんな時代背景の中で、特に紙の本、実体としての本を扱う、書店員の方々をクローズアップしたルポである。しかも、敢えて全体像を俯瞰したり、一般化したりして、より明確な結論に向かわせることを、極力排そうとした態度が一貫している。その“散漫さ”が、どこかの評ではマイナスの言われ方もされていたが、僕自身はとても誠実で好ましいルポだと思った。取材先と取材先の間に現れる国道沿いのチェーン店の様子なども含めて「日本って書店多いよな」という実感と共にリアルな現状が飛び込んでくる。――この中に出てくるいくつかの書店には行ってみたいと心から思った。そしてこの中に出てくるいくつかの本を読んでみたいとも思った。この本を読んでも出版界や書物の未来像は分からない。でも、「本」に対する愛おしさを再確認することはできるはず。僕はそうだった。
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骨のある全国の書店や書店員を紹介する。札幌のくすみ書房も登場。大手流通網に左右され管理されるチェーン店ではなく、地域に根ざした本屋のポリシーをこれからどうやって守っていくのか、それを考えるためのヒントが様々ある。
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書店員の中に「本屋」を発見した著者の視点が素晴らしい。 本文中では、書籍の中に「本」を発見しようかという考察もあり、新刊発行点数が多過ぎると言われるいまの出版業界に投げかけるメッセージの重要性は計り知れない。 ここに紹介されている書店以外でもこの「本」を面陳にしているところが多い...
書店員の中に「本屋」を発見した著者の視点が素晴らしい。 本文中では、書籍の中に「本」を発見しようかという考察もあり、新刊発行点数が多過ぎると言われるいまの出版業界に投げかけるメッセージの重要性は計り知れない。 ここに紹介されている書店以外でもこの「本」を面陳にしているところが多いことを、金太郎飴的な新刊書店ばかり作っている業界人は知るべきであろう。 事業の維持、安定した経営ということで考えれば、ここに描かれる書店が本来あるべき姿というわけでは決してない。が、僕はそこにいる「本屋」に憧れを禁じえない。 「本屋」は死んではいけない。祈りに近いそうした想いに応えてくれるリアルが、本書には詰まっている。
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本屋とは本好きには特別な場所である。その場所が徐々に失われつつある。その現状をレポートしているのが本書。地方の小売店は苦戦を強いられており、グループで展開さらに新古書、ゲームなどを扱わなければやっていられなくなっている状況で、孤軍奮闘する様々な書店があると知りエールを送りつつ、決...
本屋とは本好きには特別な場所である。その場所が徐々に失われつつある。その現状をレポートしているのが本書。地方の小売店は苦戦を強いられており、グループで展開さらに新古書、ゲームなどを扱わなければやっていられなくなっている状況で、孤軍奮闘する様々な書店があると知りエールを送りつつ、決して楽観的には見ていない著者。だが希望はあるとする姿勢に、敬意を表したい。
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