持ち重りする薔薇の花 の商品レビュー
丸谷才一氏最後の長編小説。 元経団連会長にして旧財閥系企業の名誉顧問である梶井のもとに、ジャーナリストの野原が訪れる。梶井は、80年代初めのニューヨークで、音楽院に通う日本人学生たち(厨川、西、小山内、鳥海)と知り合った。そして彼らが結成した弦楽四重奏団に「ブルー・フジ・クワル...
丸谷才一氏最後の長編小説。 元経団連会長にして旧財閥系企業の名誉顧問である梶井のもとに、ジャーナリストの野原が訪れる。梶井は、80年代初めのニューヨークで、音楽院に通う日本人学生たち(厨川、西、小山内、鳥海)と知り合った。そして彼らが結成した弦楽四重奏団に「ブルー・フジ・クワルテット」と命名。やがて世界有数のカルテットに成長した四人には様々な軋轢が起こりはじめるが…。 旧仮名遣いで紡がれてはいるが、なめらかな文章は読みやすく、酔える。四人が繰り広げる愛憎劇は、実に人間くさく、芸術とは縁遠いように思える。しかし、確執が深まるほど、奏でられる音楽は一層美しくなるという皮肉。堪らない、けれども読むのをやめられない。
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年に1度くらい、何故か発作的に丸谷氏の旧仮名遣いのヌメッとした文体を読みたくなります。もっとも挫折することも多いのですが、この作品は楽しく読めました。 世界的名声を得た日本人弦楽四重奏団(クヮルテット)が経てきた道のり・人間模様を、彼らの結成時からの支援者であった元経団連会長が...
年に1度くらい、何故か発作的に丸谷氏の旧仮名遣いのヌメッとした文体を読みたくなります。もっとも挫折することも多いのですが、この作品は楽しく読めました。 世界的名声を得た日本人弦楽四重奏団(クヮルテット)が経てきた道のり・人間模様を、彼らの結成時からの支援者であった元経団連会長が、友人の元編集者の求めに応じて語るという形式です。 その中で、片やクラシック音楽(やM&Aなどの経済関係やその他諸々)についての蘊蓄を披露しつつ、もう一方では通俗的なメンバー間の確執(それも女性がらみできわどい描写)も語られます。 つまり高尚と卑俗の混合です。このあたり、読み手が丸谷さんに何を期待するかで評価は割れそうですが、個人的には良い塩梅と思います。ただ全体に達観というか(それが味といえば味なのですが)余りにさらりと語られ過ぎてるように思います。まあ、著者も作品中の語り手もお年寄りですからね。
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クァルテット。それは四重奏のこと。 どうやら四重奏は、 他の何重奏よりも、 オーケストラよりも、 緊密な構造らしい。 不思議なもので、クァルテットの人間関係が複雑になるにつれ、奏でられる音楽は、深く、美しいものになるようだ。 なんと恐ろしく興味深い世界なのか。
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丸谷氏最後の小説だというので読んでみました。 軽妙な作品で読み易かったですが、クラッシックに詳しくないと面白さ半減でしょう。(私は半減) うんちくを読むのも楽しいけど、曲を頭で流しながら、モデルの人物像を思い浮かべながら読めたらなあーという感じでした。 M&Aの話とかは面白...
丸谷氏最後の小説だというので読んでみました。 軽妙な作品で読み易かったですが、クラッシックに詳しくないと面白さ半減でしょう。(私は半減) うんちくを読むのも楽しいけど、曲を頭で流しながら、モデルの人物像を思い浮かべながら読めたらなあーという感じでした。 M&Aの話とかは面白かったけどさ。 文学系なら少しはついていけるので、やっぱりそっちをテーマにした本の方が私にはあってるかも知れません。 選択ミスか。
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丸谷才一さんの最後の長編『持ち重りする薔薇の花』を読了。やはり彼の作品は少しばかりノスタルジーを感じさせ、だが確実に我々の弱い部分、世界とは異なっている日本人の独特な感性や行動の仕方を物語にして見せつけてくれる。俺たちってそういえばどうだよねって言う感じで。日本をきちんと外から見...
丸谷才一さんの最後の長編『持ち重りする薔薇の花』を読了。やはり彼の作品は少しばかりノスタルジーを感じさせ、だが確実に我々の弱い部分、世界とは異なっている日本人の独特な感性や行動の仕方を物語にして見せつけてくれる。俺たちってそういえばどうだよねって言う感じで。日本をきちんと外から見ている人だからかける物語な気がした。品のよい、いい作品です。品のよい小説を読みたい方是非どうぞ。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
クヮルテットの4人組のドロドロ ”薔薇の花束を4人で持つには持ち重りする” というのでこの題名 まわりくどい横道逸れ話が多く、 さらっと読んだだけではわかりにくい けど人生の機微の勉強にはなります
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音楽を通して全編に匂い立つ、かくも美しく深淵なる日本語。 ”日本人男性作家”ならではの性的描写(性への我執?)は華麗にスルー。
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テーマがいい。クインテッドだなんて、なかなか気が利いてる。 でもやっぱり芸術家よりビジネスマンのほうが好きだな~。 初めは旧仮名遣いが取っ付きにくいかなと思ってたけど、全然そんなことなくてかえって滑らかで素敵。日本語って美しい。
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丸谷才一さんの遺作小説になってしまいました・・。これが発表されたのは去年の秋。元々10年に一回くらいのペースで小説を発表されてきた丸谷先生、きっとこれが最後だ、とご自分でも思われてたんでしょうね。 すっごぉ~~く面白かったです。 丸谷さんの老いに伴うあれこれ、なんて素人考え...
丸谷才一さんの遺作小説になってしまいました・・。これが発表されたのは去年の秋。元々10年に一回くらいのペースで小説を発表されてきた丸谷先生、きっとこれが最後だ、とご自分でも思われてたんでしょうね。 すっごぉ~~く面白かったです。 丸谷さんの老いに伴うあれこれ、なんて素人考えで心配しないで、素直に発表されてすぐに読めばよかった…。 経済界の大物・梶井が、自分(や関係者)の死後に発表するようにと、懇意な記者・野原に語る、弦楽四重奏団の黎明期から現在までの三十年。 若き楽団員の、これから大きな夢が形になっていくぞ、という時期の心弾む横顔から、私生活のトラブル、ちょっとした言葉の齟齬からもたらされるギクシャク、また並行して、梶井や野原の人となり&人生について、どこをどう読んでも面白くて、丸谷先生、これまで楽しませてくれてありがとうございました、と深々と頭を下げて御礼を言いたい気持ちです。 私、弦楽四重奏のあれこれ、なんて何も知らないけど(でも弦楽四重奏にバイオリンが二本入るのは知ってましたよ。(*^_^*))梶井の目線で語られる、4人の奏でる音楽はまるで紙面から立ち上がってくるように気持ちに響くものがありましたし、また、弦楽四重奏曲に関するウンチクもとても楽しく読みました。 帯からそのまま引用すると、 カルテットというのは、四人で薔薇の花束を持つようなものだな。 面倒だぞ、 厄介だぞ、 持ちにくいぞ。 というのがタイトルの由来で、(でもちょっとそこには、その例えでいいのかな、私にはあんまりしっくり来ないんだけど、なんて、大胆にも言ってみたりする。汗) また、早めにクレームをつけてしまえば、カルテット4人のキャラ設定には頷けるものがあったけど、トラブルが起こる時の発端がちょっと唐突すぎる場合があり(主に男女間の揉め事絡みだけどね)、そこは今一つ・・・だったかな、なんて。 でも、たった4人で一つの音楽の世界を作り上げる楽しさ、困難さ、また、その中での人間臭さの描写には、うん、さすが丸谷さんらしい品のいい“風俗小説”だと思いました。 そして、絶えず美しい弦楽の調べが流れているような小説を読みながら、私ってばなんて俗なヤツなの、と思いつつ、これって、丸谷先生の「微笑み返し」だったんだなぁ、と。 長年の丸谷才一ファンに、というお気持ちだったんでしょう、これまでの長編、中編、エッセイ、その他の匂いを伝えるエピソードがさりげなくはめ込まれていて、その時々の丸谷さんの姿勢や若かった自分、なんてものまで思い出せたのは嬉しいプレゼントでした。(だから、前に述べた“唐突な展開のエピソード”もそのためにやむを得ず挟み込んだもの?なんて、思ったりするのは贔屓の引き倒しすぎるでしょうか?) 昭和元年生まれの丸谷さんが現役で活動されている、という思いが、実はかなり私にとっての力になっていたんだなぁ、なんて、こんなところでしんみりしたりもして。 どうもありがとうございました。 あなたのおかげで、自分に自信を持つことができ、人生の指針まで時に提示してもらい、また、その余得(弊害とも言う?(*^_^*))としてちょっと意地悪になった読者です。 お疲れ様でした、どうぞ天国でも洒脱で全体主義嫌いな丸谷さんでいてくださいますように、と言わせてもらいたいです。
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やっと今読んでいます。恥ずかしながら新刊が出たときはスルーしておりました。タイトルの「持ち重りするバラの花」束は、語られる弦楽四重奏団のメンバーが自らをなぞらえているもの。ひいては多分「芸術」ってこと。 長編というより中編ですが(残念)、読み惜しみしながら読んでいます。
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