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文化と外交 の商品レビュー

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2012/04/26

パブリックディプローマシーとは、相手国の政府ではなく相手国の国民に働きかけて、国際社会における自国の存在感やイメージを向上させ、自国についての理解を高めて行く外交政策である。 しかし、ソフトパワーやクールジャパンといった掛け声は手垢まみれで、明確なターゲットの不在、情報の操作可...

パブリックディプローマシーとは、相手国の政府ではなく相手国の国民に働きかけて、国際社会における自国の存在感やイメージを向上させ、自国についての理解を高めて行く外交政策である。 しかし、ソフトパワーやクールジャパンといった掛け声は手垢まみれで、明確なターゲットの不在、情報の操作可能性への過信など、戦略の不在と過剰を問題視する。 むしろ自国の負の現実も含めて事実を伝える自己批判力のある発信が国際的発信力をもたらす、透明性や対話力が示す懐の深さが対外政策を円滑にする、という著者の意見に耳を傾けたい。 実際に、スイスがマネー・ロンダリングにより悪質な組織の運営を間接的に支援しているとのグローバル社会の批評に対処した例や、東日本大震災でのトモダチ作戦などの好例がある一方で、ベトナム戦争時の米国への批判をかわそうとして失敗したパブリック・ディプローマシーの例、が紹介されている。 外交は一部のエリートではなく、市民社会レベルでの相互理解の努力が必要であること。そして、ハードパワー、ソフトパワーの両面での外交努力が必要であることを学ばせてくれる。

Posted byブクログ

2011/12/11

  著者は、文化人類学から国際政治を分析。  先日、リアルの講演会に参加したので、著書を読んでみた。  リアルの講演会は、大統領選予測など、報道ものが多かったが、この本は、パブリック・ディプロマシーという文化外交の部分に焦点をあてたもの。  例えば、最近中国が豊富な経...

  著者は、文化人類学から国際政治を分析。  先日、リアルの講演会に参加したので、著書を読んでみた。  リアルの講演会は、大統領選予測など、報道ものが多かったが、この本は、パブリック・ディプロマシーという文化外交の部分に焦点をあてたもの。  例えば、最近中国が豊富な経済支援とともに、孔子学院を世界中に立地させているというような話。  ユニセフのような理想主義、各国の国民が高い水準の文化と知識を持つために活動するのか、それとも自国のための国益追求のためのソフトパワーとして実施するのか、著者はその中間領域があるとの立場。  自分は、端的にいって、国益を実現するためのソフトパワーとして位置づけた方が税金を支出する理屈がたつと思う。もちろん、相手国に対して、どうお化粧するかは別にして。  最終的には国益に資するような効果を生まなければ、政策と長続きしない。  アイドルをかわいい大使に任命したり、トムクルーズを観光大使に任命しても、結局、それが日本の国益にどう役立っているのか、説明できなければ、国の役所のやる仕事ではないと判断される。  そういう厳しいチェックに、別に事業仕分けであっているというよりも、税金を支払う国民の目からあっているという意識が重要。

Posted byブクログ

2011/11/26

政府同士の外交ではなく、相手国の世論に働きかけるパブリック・ディプロマシー。現在のいわゆる韓流や、戦後の米国の対日政策が思い浮かぶ。マーケットの小さい韓国が外に向かざるを得ないのは国家の方針としてしょうがないが、ちょっと前の男優さんたちや女性グループの露出の多さで日本における韓国...

政府同士の外交ではなく、相手国の世論に働きかけるパブリック・ディプロマシー。現在のいわゆる韓流や、戦後の米国の対日政策が思い浮かぶ。マーケットの小さい韓国が外に向かざるを得ないのは国家の方針としてしょうがないが、ちょっと前の男優さんたちや女性グループの露出の多さで日本における韓国の好感度は全般的に上がっているように思える。(同時に反発もあるが) 日本を占領した米国も、その政策によって瞬く間に敵からあこがれの対象になってしまった。 「パブリック・ディプロマシー」という言葉自体は、意味合いこそ現在と違うものの、19世紀半ばには確認できて、その実践例ははるか昔のアレクサンドロス大王の対ペルシア人政策にまで遡るとのこと。 クール・ジャパンという言葉を聞くようになって久しい。しかし、そのポップカルチャーが日本発の文化と認知されていないところも多いようである。 国のバックアップを呼びかけたいところだが、ここがソフトパワー外交の難しいところで、政府の関与が露骨になるとその魅力が低減されてしまうという。著者は、ソフトパワーの原動力はあくまで民だとし、政府の関与は知的財産権の整備など最低限にすべきとしている。 「「美人コンテスト」ではない。好感度やブランドばかり気にするのでは、世論調査の浮き沈みのみを杞憂する政治家と何ら変わるところがない。むしろ、必要とあれば「美人」の概念そのものを変えてゆくこと、そして、そのために人びとの「心と精神を勝ち取る」こと。それがパブリック・ディプロマシーの要諦に他ならない」(193ページ)

Posted byブクログ