いまはむかし の商品レビュー
情景が目の前に浮かび上がってくる。 それが一番に思い浮かんだ感想だった。 私の歴史の知識は中学の頃に学校で習ったくらいしかない。 しかし、都の景色、大通りの様子が読んでいる中で3Dの映画を見ているかのように鮮明にイメージすることができた。 石・竹林・木・傷。そして何より、登場人...
情景が目の前に浮かび上がってくる。 それが一番に思い浮かんだ感想だった。 私の歴史の知識は中学の頃に学校で習ったくらいしかない。 しかし、都の景色、大通りの様子が読んでいる中で3Dの映画を見ているかのように鮮明にイメージすることができた。 石・竹林・木・傷。そして何より、登場人物の心情が、どんどん頭に浮かんでくるのだ。 それはきっと、作者の表現の豊かさが与えてくれているのだろう。 私は本を読むとき、書かれている登場人物と共に主観で話を追っていく。 話に入り込んでしまうのだ。 入り込んでいると、たまに先が読めてしまうことがままあるが、この本ではそれがまるでなかった。 所々に「びっくり」が隠されており、予想外のストーリーが展開される。 それでいて、読み終えたときに「納得」できた。 さらに、どの登場人物も印象に残る人々だ。 少しだけしか出てこない人物までも、濃く、深く、心情が伝わってきて印象に残る。 その人物の、心のうちに引き込まれていく。 時に、痛いほどそれが伝わってきて、涙を流さずには読めなかった。 私は、この本が大好きになった。 本当にオススメできる一冊。
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まず、私がこの作品を読もうと思ったきっかけは、作者・安澄加奈さんの経歴に驚かされ興味を持ったからだった。 この作品がデビュー作であり、その前にジャブ小説大賞で奨励賞を受賞した「願いの神様」が初投稿の作品だと知った時、一体どれほどのどんな文才を持った大型新人なのだろう思った。そ...
まず、私がこの作品を読もうと思ったきっかけは、作者・安澄加奈さんの経歴に驚かされ興味を持ったからだった。 この作品がデビュー作であり、その前にジャブ小説大賞で奨励賞を受賞した「願いの神様」が初投稿の作品だと知った時、一体どれほどのどんな文才を持った大型新人なのだろう思った。そんな作者の、竹取異聞というタイトル通り竹取物語をモチーフにした話ということは、お堅い文章の歴史もので少し難しい話だろうかと想像していたのだ。 しかし、数ページ読んでその考えは打ち砕かれた。 難しい言葉などはなく、すらすらと読んでしまう文章の流れで、気づけばあっという間にページを進めていた。 まるでライトノベルのように、テンポよくキャラ達が動いているのが想像でき、読者をも登場人物たちの旅に誘う感じがしたほどだった。 そして、読むほどに敵と味方が増えていく展開は、まるでシリーズものを読んでいるような充実感があった。 普通ならこの様々に変化・展開する話を一冊にまとめようとすると、話がとっちらかってしまいごちゃごちゃとした中途半端な話になってしまいそうだが、この作品ではそれぞれのキャラの想いを活かしつつ上手くまとめられているところがすごいと思った。 読み終わった頃には、日本最古の物語が生まれる瞬間に自分たちも一緒に立ち会ったような気持ちになり、改めて自分の人生とはどんなものにこの先なっていくのだろうと考えてしまった。 ぜひ安澄加奈さんの今後の作品も楽しみにしたいと思った。
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