井上ひさしの読書眼鏡 の商品レビュー
書評というか読書エッセイという趣のある本で、毎度のことながら本が小ぶりで量が少ないのが残念(同じく読売に連載された『本の運命』もそう)。 ただ著者の義理の姉である米原万里の著作解説は良いもの。
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・せっかく東条がヒットラーと共に世界の憎まれ者になっているのだから(このまま首相をつづけさせて)彼に全責任を負はしめる方が良いと思ふ。『情報天皇に達せず』 ・細菌の歴史は20億年、引きかえ現世人が出現したのは10-20万年前。つまり人類はまだ子供であると考えたとき、大江さんの言葉は私たちに希望を与えてくれます。『「自分の木」の下で』 ・「世紀」とは一宗教の教祖の誕生を基準にした百年単位の便宜的な時代区分の称、なにほどのことはあるまいという気がする一方で、地球上の大半がそれに従っている以上、その慣習を大切にして、ものを考えるときの基本的な枠組みの一つにしようというのは悪いことでない。 ・人はよくだまされたといって逃げますが、しかし人はだまされていたという自分の愚かさにやはり責任をもたなければならない。『憲兵だった父の遺したもの』 ・現状のままやっていくのが安全だという思想がまかり通っている。みんな責任を取りたくないからだ。つまり正当な社会性が育つ契機が社会の中にないのではないか。「見たくない思想的現実を見る』 ・まことに残念なことだが、「見えても見せず、聞いても聞こえず」というのが人間の常である。
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井上ひさし氏といえば、私の世代は「ひょっこりひょうたん島」の原作者という印象が強いですね。恥ずかしながら、氏の小説や戯曲は読んだことがありません。少し前に「この人から受け継ぐもの」という小文を読んだぐらいです。せめて「吉里吉里人」ぐらいは読もうと思っているのですが。 さて、本...
井上ひさし氏といえば、私の世代は「ひょっこりひょうたん島」の原作者という印象が強いですね。恥ずかしながら、氏の小説や戯曲は読んだことがありません。少し前に「この人から受け継ぐもの」という小文を読んだぐらいです。せめて「吉里吉里人」ぐらいは読もうと思っているのですが。 さて、本書は、井上ひさし氏が読売新聞で連載していた読書エッセイ等を採録したものです。 いろいろな方の読書案内は、自分では気がつかないような本を知るよいきっかけになりますね。また米原万里さんの本も読んでみようと思いました。
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優れた読書家が勧める本は、その本単体の輝きの魅力以上の輝きを放つ。そこには、信頼できる目を持った読書家の切り口が反映されるからだ。愚にもつかない内容の本でも、「この本いいです。面白いです」とPRする人の魅力が附帯すると、大きな力になる。 最近では本当の読書家たちよりも、タレントや芸人が勧める本が読まれる傾向なのは気になるが、多くの人が本を手にするきっかけにするならば、それもまたよしなのかもしれない。 読書や本についての物事に興味がある人は、たいてい自分が信頼している読書家、あるいは書評家、作家など、それぞの「水先案内人」を持っているのではないだろうか。 私の信頼する読書家のひとりが2010年4月に他界した井上ひさしだった。 本書は読売新聞に2001年から04年まで連載した「井上ひさしの読書眼鏡」、米原万里展図録に掲載された「米原万里の全著作」、「藤沢さんの日の光」の3部からなる。 白眉はやはり書名になったパートだろう。 本書で勧められている本で、読みたいなと思った本をメモ代わりに列挙。 「現代英米情報辞典」研究社出版 「年表で読む哲学・思想小事典」白水社 「日本史事典」朝倉書店 「情報天皇に達せず」磯部書房(昭和28年刊) 「日本現代演劇史昭和戦後編2」白水社 「憲兵だった父の遺したもの」高文研 「見たくない思想的現実を見る」岩波書店 「ニュルンベルク軍事裁判」原書房 「新撰組読本」光文社文庫 中でも今自分の関心にひっかかったのは「ニュルンベルク軍事裁判」の中にあるというナチスの航空大臣で国家元帥のヘルマン・ゲーリングのこんな証言。井上の引用によると 「もちろん、国民は戦争を望みませんよ。運がよくてもせいぜい無傷で帰ってくるぐらいしかない戦争に、貧しい農民が命を賭けようなんて思うはずがありません。一般国民は戦争を望みません。ソ連でも、イギリスでも、アメリカでも、そしてその点ではドイツでも同じことです。政策を決めるのはその国の指導者です。…そして国民はつねに、その指導者のいいなりになるように仕向けられます。国民にむかって、われわれは攻撃されかかっているのだと煽り、平和主義者に対しては、愛国心が欠けていると非難すればよいのです。このやり方はどんな国でも有効ですよ。」 さきごろ、北朝鮮のミサイル騒ぎで沖縄各地に迎撃ミサイルのPAC3が配備されたが、そのときがそんな風だった。 分かっていても繰り返される。過去の経験や歴史が、なぜこうも学びとられない社会なのか。 ナチスがやったことと同じことが、いま日本で起きつつある。あらためてそのことを感じる内容だなと思った。 やはりもう一度、太平洋戦争前の日本の言論状況を知る必要があるなあ、とあらためて思った。ふたたび、国への帰属心が異様なまでに肥大化した人や、戦争が好きな人、戦争で利を得る人たちに操られて、無為な死を「栄光」だとする思潮がはびこらない前に。
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井上ひさしの目に適った、面白い本の書評の数々。特に、昭和史に関する本が多い気がする。米原万里の全著作についての書評も面白い。
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昨年亡くなった著者の2001年から2004年にかけて「読売新聞」に連載していた書評集。 読みやすいが、とても奥が深い。彼から学ぶものは多い。
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大満足しました!下手な文章で感想を述べるのが申し訳ないです。ぜひ読んでください。私はこれからしばらくは、紹介された本を読むことになります。まずは、大江健三郎さんの「憂い顔の童子」を買ってきてよみます。お菓子を食べるのを ちょっと控えて本代にまわします。
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井上ひさしが讀賣新聞に連載していた書評コラムを中心にまとめたコラム。やはり、その洞察力の深さに感嘆!! 同じ本を読んでいても、jこんなに深さが違うのかとちょっとショックを受けてしまいましたが…。 本は、素敵だ!
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B6判で、余白も多いので、あっという間に読んでしまった。表紙カバーは、最近ときどき見かける布のような手触りのある用紙で、白。真ん中に、座りのいい細い明朝体でタイトルが刷られ、その下に眼鏡の絵。帯も一色で、シンプルだけど印象深い装丁。深い赤のスピンもきれい。 井上ひさしの本の話は面...
B6判で、余白も多いので、あっという間に読んでしまった。表紙カバーは、最近ときどき見かける布のような手触りのある用紙で、白。真ん中に、座りのいい細い明朝体でタイトルが刷られ、その下に眼鏡の絵。帯も一色で、シンプルだけど印象深い装丁。深い赤のスピンもきれい。 井上ひさしの本の話は面白いが、取り上げられているのが、骨太かつ大部のものばかりで、気軽に私も買って読んでみよう! とは、スッといかない。まだまだ勉強が足りない。
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