電力と国家 の商品レビュー
福島の原発事故以来、東京電力(といふか電力会社)といふものがどんな組織であつたのか、国民の前に明らかになつてきてゐます。 なぜかういふことになつてしまつたのか、そもそも誰が悪いのか。本書では、それを日本における電力事情の歴史を振り返ることで明らかにしてゐます。 現状の問題点を挙...
福島の原発事故以来、東京電力(といふか電力会社)といふものがどんな組織であつたのか、国民の前に明らかになつてきてゐます。 なぜかういふことになつてしまつたのか、そもそも誰が悪いのか。本書では、それを日本における電力事情の歴史を振り返ることで明らかにしてゐます。 現状の問題点を挙げる発言はいろいろな場所でいろいろな人が発信してゐますが、佐高信氏は今日に至る歴史的経緯を述べてくれます。 電力を国家管理から死守してきた「電力の鬼」松永安左ェ門とその後継者たる木川田一隆の戦ひに多くを費やし、断片的ながら「松永安左ェ門伝」の様相さへ呈してゐます。 「国家対電力」といふ緊張関係を失つたのは、木川田一隆の薫陶を受けたとされる平岩外四からだと佐高氏は指摘します。国家に介入させずの原則を崩し、当時の通産省と通じるやうになります。原子力発電の主導権を通産省に明け渡したといふことですな。今回噴出した諸問題は、平岩外四の方向転換以降に端を発してゐると。実際には様様な要因が重なつてゐるのでせうが。 佐高氏はいつも、個人名を出すのが特徴。「東電が悪い」「民主党が悪い」などと組織名で批判しても詮無いといふことでせう。実際に行動を起こすのは組織や建物ではなく、個人であります。 もはや既存の電力会社には自浄能力はありますまい。しかし巻末で佐高氏はかすかな希望を感じとつてゐます。新たに「中央対地方」(この用語には抵抗を示す人も多いでせうが)の対立軸が出来つつあると。知事を中心とした地方が連携をとることが出来ればいいのですがね... http://genjigawakusin.blog10.fc2.com/blog-entry-279.html
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時節柄、また佐高信の本ということで読んだ。戦時中の電力国家統制から民営化を全国民を敵に回して成し遂げた松永安佐エ門。その弟子で原子力発電の導入を意思決定した木川田一隆。この両者には「反吐が出るほど役人が嫌い」という共通の思想があったが、木川田の弟子・平岩外四から東電の変節は始まり...
時節柄、また佐高信の本ということで読んだ。戦時中の電力国家統制から民営化を全国民を敵に回して成し遂げた松永安佐エ門。その弟子で原子力発電の導入を意思決定した木川田一隆。この両者には「反吐が出るほど役人が嫌い」という共通の思想があったが、木川田の弟子・平岩外四から東電の変節は始まり、今回の福島原発事故という人災を生んだ、というストーリー。電力史や佐高の舌鋒もさることながら、松永の生き様や「大人物は大きく意地を通し、小人物はつまらない意地にこだわる」という「大意地、大人物」論に共感を覚えた。奥池のアセッサーから帰るJR車中で読了。
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