1,800円以上の注文で送料無料

鷺と雪 の商品レビュー

4

136件のお客様レビュー

  1. 5つ

    35

  2. 4つ

    56

  3. 3つ

    26

  4. 2つ

    3

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/02/01

『鷺と雪』 その時々において、いろいろな出来事があり、時と共に流れていく。 ドッペルゲンガー ハイネの『影法師』森鷗外・訳『分身』芥川龍之介『凶』梅若万三郎『鷺』『源氏物語 葵上』能面

Posted byブクログ

2024/01/10
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ベッキーさん完結編…なんだけど、正直「えっこれで終わっちゃう?!?!」という気持ちも強い。恋愛ものじゃないのだけれど、思わせぶりな軍人がチラチラ出てきて2.26事件か~あぁー…となってしまった。与謝野晶子の「君死にたまふことなかれ」の解釈や芥川の腹巻のことは「なるほど~」と思った。華族の地位を捨てた『不在の父』、この当時からお受験はすごかったんだな…と思わせる『獅子と地下鉄』、いたずらにしても底意地が悪いお嬢様とカメラ、そして勝久…となった『鷺と雪』。まあここで余韻を残して終わるのが綺麗なんだろうなぁ…

Posted byブクログ

2023/12/28

個人的には三作の中で「不在の父」が一番心に残った。父はなぜ消えたのか。「わたし」との対話では、人の避けられない業のようなものがあるのかと思った。 「鷺と雪」では再び『漢書』の一節が出てくる。「善く敗るる者は亡びず」 ベッキーさんは問いに対して「はい、わたくしは、人間の善き知恵を...

個人的には三作の中で「不在の父」が一番心に残った。父はなぜ消えたのか。「わたし」との対話では、人の避けられない業のようなものがあるのかと思った。 「鷺と雪」では再び『漢書』の一節が出てくる。「善く敗るる者は亡びず」 ベッキーさんは問いに対して「はい、わたくしは、人間の善き知恵を信じます。」と答える。 その答えが、不穏な時代の雰囲気を感じさせる話の中で、人が縋れる真摯な強さを与えてくれているように感じた。

Posted byブクログ

2023/04/02

二つ目の話のあたりで、これはシリーズものの途中から読んでしまったな…と気づいた。 ラストがとても切ないし、うわぁ〜…となった。そこに辿り着くまでも節々に戦争の影が見えてたので少し落ち込んだが、話はどれも面白かった。ベッキーさん素敵

Posted byブクログ

2023/03/18

時代は、昭和初期。当時の士族のお嬢様と、その付人としての運転手の女性“ベッキー”さんが、日常生活の謎解きをする「ベッキーさん」シリーズ。第3作で最終作の、短編3編。 第1作から読まなかった事は、大失策。 推理小説ですので、各作品その時代らしい謎解きが楽しめます。そして、作中に何作...

時代は、昭和初期。当時の士族のお嬢様と、その付人としての運転手の女性“ベッキー”さんが、日常生活の謎解きをする「ベッキーさん」シリーズ。第3作で最終作の、短編3編。 第1作から読まなかった事は、大失策。 推理小説ですので、各作品その時代らしい謎解きが楽しめます。そして、作中に何作かの文芸作品を絡めます。その作品にも興味がわきます。 「不在の父」 自宅から突然失踪した子爵。その行方と理由を探します。実際にあった男爵失踪事件を題材にされています。山村暮鳥の囈言という詩の一節が、最終話への布石となります。この詩は、はじめ知りましたが、犯罪名と名詞で熟語としたような魅惑的な作品でした。 「獅子と地下鉄」 受験を控えた少年の上野補導事件。銀座三越のライオンにたどり着きます。 「鷺と雪」 ドッペルゲンガーと思われる現象の謎解きです。 そして、お嬢様が密かに想いを寄せる青年将校と最後になるであろう奇跡的な語らいが見事な最終話です。 この最終話のベッキーさんの語らいの部分が、理解できず、まあいいか?と諦め気味だったのですが、直木賞評価を読んだところ、宮部さんの論評で納得させていただきました。当初から、謎多き女性でしたが、未来から来たお嬢様になるほどと。 二、二六事件が、最終話を飾るのですが、三島由紀夫の憂国、宮部みゆきの蒲生邸と、視線が変われば小説も変わりますね。数行の昭和史から含まれるものが多い創作でした。

Posted byブクログ

2023/03/04

うーむ、この作家とはどうやら合わない気がする。最初から文体に馴染めず仕舞い。 内容は大正・昭和を背景にして、色々伏線を張り巡らしていて、世俗も感じさせるなとは思いつつ。。。 まぁあくまで好みのレベルのような気はしますが、文体に乗れないというのは読み手にとっては致命的な訳でして。

Posted byブクログ

2023/01/02

昭和初期、古さより新鮮で清々しく色鮮やかな感じがしました。全体のバランスが素晴らしく、現代もよいけどこういう時代ってステキだなと感じました。最後が切ない。

Posted byブクログ

2022/12/21

この幕切れには言葉がすぐに見つからなかった…。切ないとか、やるせないとかでは言い表せない感情が読後に残りました。 昭和初期の華族の令嬢とその女性運転手が様々な謎を解くベッキーさんシリーズの最終巻。 収録作品は三編。過去二作品を通しての語り手である〈わたし〉こと英子の成長もあって...

この幕切れには言葉がすぐに見つからなかった…。切ないとか、やるせないとかでは言い表せない感情が読後に残りました。 昭和初期の華族の令嬢とその女性運転手が様々な謎を解くベッキーさんシリーズの最終巻。 収録作品は三編。過去二作品を通しての語り手である〈わたし〉こと英子の成長もあってか、収録作品の背景にあるものも、身分や格差といった社会のひずみを映したものが多くなってきたように思います。 そうしたひずみに対し英子はどこか無垢に近づいていきます。それは上流階級で育ってきたゆえの純粋無垢さゆえの行動、感覚と言えるのかもしれない。 その純粋無垢さを表現しているのが、作品全体に漂う一種の品位。英子の日常であったり教養が出てくる部分の切り取り方が、本当に見事の一言に尽きる。 家族との食事や女学校でのやりとりもそうだし、文学や芸術に関する含蓄や教養も、その品位を裏付けします。そこに北村作品ならではの静謐で品のいい語り口が加わり、シリーズ全体の空気感というものが醸成されている気がします。 昭和華族という設定を、設定だけに終わらせず物語に完全に取り込めたのは北村さんだからこそなのではないかと感じます。 だからこそ、上流階級で育った純粋無垢な英子がベッキーさんとの事件の数々を通して成長していく、というのも実感できるし、なによりまっさらな英子と徐々に不穏さをましていく時代との対比が映えてより心に残る。 それがシリーズ最終話の表題作「鷺と雪」で頂点を迎えます。物語の終盤でベッキーさんが英子にかける言葉。そして運命の電話。歴史の大きな転換点。日常と非日常が入れ替わっていくであろう日。シリーズはある意味では大きな余白をともない、閉じられたように思います。 その余白に読者である自分は様々なものを思い、そして言葉で昇華しきれなかったものをいまも詰め込もうとしているようにも思います。 シリーズ三部作と不穏さを増す現代の時代というのは図らずもリンクしているようにも思える。だからこそベッキーさんの言葉というものの切実さはフィクションの壁を越えて、今の自分の心にも強く突き刺さりました。 第141回直木賞

Posted byブクログ

2022/06/16

5・15事件のあった昭和7年に始まった不穏な時代を背景に、上流階級の令嬢と才色兼備の運転手<ベッキ-さんとわたし>シリ-ズの最終巻。 華族主人の失踪の謎を追う『不在の父』、受験戦争に喘ぐ良家の少年と日本橋三越本店前のライオンのからくりを探る『獅子と地下鉄』、帝都・東京に雪の舞う昭...

5・15事件のあった昭和7年に始まった不穏な時代を背景に、上流階級の令嬢と才色兼備の運転手<ベッキ-さんとわたし>シリ-ズの最終巻。 華族主人の失踪の謎を追う『不在の父』、受験戦争に喘ぐ良家の少年と日本橋三越本店前のライオンのからくりを探る『獅子と地下鉄』、帝都・東京に雪の舞う昭和11年2月26日、偶然の成行きから劇的な運命の幕切れとなった『鷺と雪』は、第141回直木賞受賞作。・・・芳醇な文芸の香りとミステリ-のエキスが散りばめられた、北村薫文学の代表作。

Posted byブクログ

2021/10/02
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

2.26事件で終了、ということは知っていたので、どう転んでもハッピーなエンディングにはならないのは分かっていたが、このような切なさで終わってしまうとは。 現代に生きる私たちが当たり前と思う自由が、当たり前ではなかった時代、それを当たり前にしていく過程の時代である。当たり前の自由が数多くの犠牲の上に成り立っていることを、もっと私は自覚した方がいいかもしれない。 上野で、英子が危機に瀕したとき、それを手引きしたのが子供だった、ということに辛さを感じる。生きることに必死だった、だからといって、このようなことをしていい訳がない。それでも手引きをした子供を心を痛めずに罪人と言えはしない。このような状況(大人が指図して犯罪に加担する子供)で子供に罪はない、という人はいるが、それは私は違うと思っている。人は誰かのせいにしたがるものである。子供だから罪はない、という言葉を当の子供が言ってはいけない。子供が子供であるということを利用した犯罪に罪がない訳がない。罪は罪として、痛みを背負って生きていくのが人生なのではないだろうか。度胸があり、仲間のしんがりになって、大人の男をどやしつけながら、キイちゃんは消えた。きっとこの時代、たくさんのキイちゃんがいたはずだ。現代はキイちゃんの心に痛みを感じられる世の中になっているだろうか。 英子もだんだんと大人になり、周囲の結婚の話も身近になる。仲良しの桐原道子様も想い人と結婚の運びになる。修学旅行に出かけたのちに聞かされた、写真の不思議の話。なるべく、オブラートに包むようにしていたが、これは人の悪意のなせるものではないだろうか。何かが気に食わないというわけではなくとも人に意地悪してやろう、という気持ちになることはある。お金があって、相手がお美しく、お幸せなご結婚をされるのが分かっていれば、なおのこと。分かりたくない心理だが、分かる自分もいる。 ベッキーさんを意識していたような桐原勝久様も大名華族の方とご結婚の運びになる。ベッキーさんのように千里の道を見とおすような頭脳を持っていたとしても、時代の流れを止めることは出来ない。 「別宮には何も出来ないのです」「前を行く者は多くの場合、慚愧の念と共に、その思いを噛み締めるのかもしれません」「何事も━お出来になるのはお嬢様なのです。明日の日を生きるお嬢様方なのです」 この言葉が染みる。 願いは必ず叶うもの、という先生の言葉を英子が、無責任だ、願い事は簡単には叶わないから願うのだ、と言ったことに、ベッキーさんが英子が言うことは、いうまでもないことであって、人生を長く生きている、先生が知らないはずがない、とたしなめるシーンも良かった。「そのお言葉が多くの哀しみに支えられたものに思えます。お若いうちは、そのような言葉が、うるさく、時には忌まわしくさえ感じられるかもしれません。ですけれど、誰がいったか、その内にどのような思いが隠れているか、そういうことをお考えになるのも、よろしいかと存じます。」これは現代の私たちにも通じることではないだろうか。 若月さんへの想いがこのような結末を迎えても、しっかりとした足取りで未来を歩いていく英子であってほしい、と未来を生きる人間の一人として思った。

Posted byブクログ