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幻影の書 の商品レビュー

4.2

55件のお客様レビュー

  1. 5つ

    18

  2. 4つ

    16

  3. 3つ

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2024/09/16

理不尽とも独りよがりとも思える作品だけど自分の中でオースターの中で好きな作品上位に入るな。 小説を読む時に各章の切れ目を意識することはあまりなく、区切りがいいから続きは明日読もうくらいのものだったけれども本作は各章の区切りをとても意識しながら読むこととなりました。 そして、先...

理不尽とも独りよがりとも思える作品だけど自分の中でオースターの中で好きな作品上位に入るな。 小説を読む時に各章の切れ目を意識することはあまりなく、区切りがいいから続きは明日読もうくらいのものだったけれども本作は各章の区切りをとても意識しながら読むこととなりました。 そして、先日うっかり海外小説の翻訳は忠実に訳さなくてもいいしなんなら勝手に日本語付け足してるみたいなことを言ってる訳者の人を見つけてしまったのだけれども、柴田元幸さんに謝れと思ったよね。

Posted byブクログ

2024/09/08

あの本、読みました?という番組で鈴木保奈美と九段理江がこの『幻影の書』について「すごくいいですよね~」的なことを言っていて気になって購入した。この作者の作品はこれが初めてになります。 語り手であるジンマーの思考とか物事の描写がとても細かく、ジンマーからずっとこの語りを聞いているよ...

あの本、読みました?という番組で鈴木保奈美と九段理江がこの『幻影の書』について「すごくいいですよね~」的なことを言っていて気になって購入した。この作者の作品はこれが初めてになります。 語り手であるジンマーの思考とか物事の描写がとても細かく、ジンマーからずっとこの語りを聞いているような気分だった。小説内で登場する『マーティン・フロストの内なる生』という映画は、え?これ一つだけでも面白い小説(映画)一本になるのでは?というものだった。と思って最後解説読んだら現実世界でちゃんと映画化されたというのだから凄い。

Posted byブクログ

2024/08/12

否応なく連想するのはビクトル・エリセの映画「瞳をとじて」。あちらは映画についての映画、こちらは映画についての小説。オースターの映画への視点は、キャラクターに対するそれと同じく微細で、映画が映像をもって語るものを文章で表現してみせている。 家族を失い、喪失を埋め合わせるように仕事に...

否応なく連想するのはビクトル・エリセの映画「瞳をとじて」。あちらは映画についての映画、こちらは映画についての小説。オースターの映画への視点は、キャラクターに対するそれと同じく微細で、映画が映像をもって語るものを文章で表現してみせている。 家族を失い、喪失を埋め合わせるように仕事にのめり込む。それが終わってしまうと、次は焦燥に駆られるが誰かれ構わず傷つけるわけではなく、女にだけ怒りを向ける。女を罵倒し論理をぶつけて支配してそれに飲まれる、そんな弱さの埋め方が生々しくてしんどい。前に読んだムーンパレスも傷心男が女を罵倒して癒そうとするシーンが出てきたのだが、オースター流の傷ついた男の表象なのだろうか。ある時代に定着した観念で、今読むと古いノスタルジックな男の描き方に思える。古いんだから当たり前だが。 理不尽な悲劇から再起する物語ではあるが、そこよりも悲劇から逃げ自罰のために多くの人の人生まで巻き込んだ男の悲劇の果てがあまりに壮絶で、その姿が強く印象に残る。逆に主人公の復活はあんまり思うところが浮かばなかった。

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2023/10/23

傷ついた人物が、ひとつの話を通して傷を癒して再生していく話ではあるのだけれど 本当に希望をもつ終わり方なのかはもう少し頭の中で転がして考えたい。 そう思える感じが良い。

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2022/08/28

消息不明になっていた、昔トーキー時代の喜劇俳優の作品を追っかけるようにして観た主人公がそれを本にし、それを読んだ俳優の妻から連絡あり、その俳優の自伝を書いている女性と知り合って… という話。 ポール・オースターは、話の中に話を盛り込むのが多く、読むのが難解かもしれないですが、かな...

消息不明になっていた、昔トーキー時代の喜劇俳優の作品を追っかけるようにして観た主人公がそれを本にし、それを読んだ俳優の妻から連絡あり、その俳優の自伝を書いている女性と知り合って… という話。 ポール・オースターは、話の中に話を盛り込むのが多く、読むのが難解かもしれないですが、かなり面白い話でした。 決して明るくは有りませんが…

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2021/07/05

飛行機事故で妻と子供を失った男が、ある喜劇映画に惹きつけられ、その映画作家についての著書を作成する。 刊行された著書はやがてもう死んだとされていた映画作家の身内に届き、そこからこの作家の失踪にまつわる話が展開されてゆく。 急な転変も幾度かあるけれど、緻密な文章がそれをリアリティに...

飛行機事故で妻と子供を失った男が、ある喜劇映画に惹きつけられ、その映画作家についての著書を作成する。 刊行された著書はやがてもう死んだとされていた映画作家の身内に届き、そこからこの作家の失踪にまつわる話が展開されてゆく。 急な転変も幾度かあるけれど、緻密な文章がそれをリアリティに変えていく。ス トーリーテリングの巧さが本作でも見られる。男の魂が「本当に」救済されたのかどうかはわからない。 読み終わった後、何が本当なのか分からなくなる。 心地いい謎が残る本。

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2020/09/07

ポール・オースターは、孤独を友とする人にこの本を与えてくれた。主人公が絶望と孤独という死の淵から、生きる事への希望に至るまでを描いた物語。芸術作品や書物は生きた証であり、自らの作品の全てを葬り去る事など本当は望まないのだ。人は生きた証を、誰かに理解して欲しいし愛が必要なのだと思い...

ポール・オースターは、孤独を友とする人にこの本を与えてくれた。主人公が絶望と孤独という死の淵から、生きる事への希望に至るまでを描いた物語。芸術作品や書物は生きた証であり、自らの作品の全てを葬り去る事など本当は望まないのだ。人は生きた証を、誰かに理解して欲しいし愛が必要なのだと思いました。

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2020/08/10

私にとっては初のポール・オースターの小説。本好きの人には知られているが、今まで手に取る機会がなかった。 本書はミステリー仕立ての小説であるが、謎を解くことが読者の目的ではない。テーマを一言で表すのは難しいが、人間の抱える闇と懺悔か。誰にでもある、弱さや辛い経験とどう向き合うか、が...

私にとっては初のポール・オースターの小説。本好きの人には知られているが、今まで手に取る機会がなかった。 本書はミステリー仕立ての小説であるが、謎を解くことが読者の目的ではない。テーマを一言で表すのは難しいが、人間の抱える闇と懺悔か。誰にでもある、弱さや辛い経験とどう向き合うか、が問われているのだと思う。 著者はアメリカ人で、小説の舞台もアメリカだが、時代は1920年代から1980年代にまで及ぶ。1920年代といえば、モノクロの無声映画全盛の時代であり、その多くはコメディであった。本書の主人公は大学講師であり物書きであったが、個人的な不幸に見舞われ落ち込んでいたところ、ある喜劇役者の映画を見た。その役者は何十年も前に失踪し、それ以来行方が分からなかった。大学講師はその役者について調べて本を出版したところ、彼の妻と名乗る人から手紙をもらう。 とても細かいプロットであり、なかなか面白く読めた。アメリカ人作家らしく、ドラマティックな展開をし、舞台もバーモントからニューメキシコとアメリカを横断する。ちょっと腑に落ちない部分もあったが、小説としてのエンターテイメント性や完成度は素晴らしいと思った。あとがきに書いてあって興味深かったのは、本書で架空の映画の脚本が書かれているのだが、それが実際に映画になったとあった。機会があれば観てみたい。

Posted byブクログ

2021/01/13

オースター初読み。航空機事故で妻子を失った大学教授と謎の失踪を遂げた映画俳優、二人の思いがけぬ邂逅により数奇な運命が動き出す―。米文学にミステリー、そこに映画評論までもが混ざり合い、久方ぶりの新鮮な読書体験だった。登場人物の織り成すドラマは濃密で、彼らの歩む人生の悲哀が滲み入って...

オースター初読み。航空機事故で妻子を失った大学教授と謎の失踪を遂げた映画俳優、二人の思いがけぬ邂逅により数奇な運命が動き出す―。米文学にミステリー、そこに映画評論までもが混ざり合い、久方ぶりの新鮮な読書体験だった。登場人物の織り成すドラマは濃密で、彼らの歩む人生の悲哀が滲み入ってくる。人は喪失を経て再生すると言うが【二度目の喪失】を経たデイヴィッドが辿り着く境地には哀愁と悲壮感が色濃く漂っている。運命の歯車が一巡し、新たなプレーヤーがアルマの秘匿したフィルムを発見した時、彼は次なる口伝者となるのだろうか。

Posted byブクログ

2020/01/05

初期の「ニューヨーク三部作」がまだ二冊残っているが、これが図書館に来たので先に読むことにした。 「孤独の発明」「鍵のかかった部屋」「偶然の音楽」は若者が辿った運命の陰が色濃くにじんだ、思索的な作品だった。と、一からげには出来ない。それぞれに印象的な部分が多いが。それは先に残したレ...

初期の「ニューヨーク三部作」がまだ二冊残っているが、これが図書館に来たので先に読むことにした。 「孤独の発明」「鍵のかかった部屋」「偶然の音楽」は若者が辿った運命の陰が色濃くにじんだ、思索的な作品だった。と、一からげには出来ない。それぞれに印象的な部分が多いが。それは先に残したレビューに託すとして、その後何作かの後にこの「幻影の書」が書かれている。 読了した「ムーン・パレス」は、詩を散ちばめような文章が、物語を語っている。 そして「ムーン・パレス」は主人公のストーリーの中に、彼の運命に交わる新たな人生の物語りが入り込んでくる形になっている。 その第二、第三の物語の感覚がいつか彼に反映して、より自分をくっきりと見ることができる。という方法を取り入れてくる。 その作中の第二・第三の物語が、主人公の人生と周辺の人々との時間だけでなく、入り込んだ別な時間(彼にとっては過去だった時間)に別な人生を生きてきた人物の時間が、ついに彼に追いつき、じわじわと入り込んで、彼の運命まで(良くも悪くも)狂わせてしまうことになる。 そういった形式が、顕著になっている。 この「幻影の書」では、彼のストーリーであったもの彼の運命であったものの中に、ここではヘクター・マンといういう喜劇俳優の話がジンマーの生活に否応なしに入り込んて、彼の運命に重なる様子が、実に重く苦しい。ジンマーの苦悩は消化できっずますます重みを増してくる、そしてヘクターとジンマーが生きていく(または生きてきた)悲しさが、ついには取り返しのつかない狂気にまでつながっていく。 暗い世界だったが、オースターのストーリー性が見事に発揮され、読まなくてはいられなかった。 主人公はデイヴィット・ジンマーという。「ムーンパレス」で瀕死のマーコを探し出す友人の名前と同じだ。 彼とマーコは別れた後、時がたってウォールストリートですれ違い軽く挨拶をして、その後二度と会わなかった。 暫くしてジンマーは教授になり愛する妻と息子か出来る。だが妻が両親に会いに行く飛行機が落ちて二人とも亡くなってしまった。どん底のジンマーは自殺を試みたが果たせず、光のない世界をさまよっていた。時が過ぎ、ふと夜につけたテレビで、サイレント映画の中でヘクター・マンという、喜劇俳優にはほど遠い、美青年が懸命に演技するのを見た、そのナンセンスな俳優とギャクの構成に思わず笑っていた。これが彼の苦悩の消滅の大きな前触れだった。 へクター・マンが作った古いサイレント映画のフィルムはもう少ししか残っていなかったが、彼は寄贈されたと言う12巻を追って海を渡り「ヘクター・マンの音のない世界」という本を書いた。 そこに美しい客が来る。死の床にあるあるヘクター・マンの招待だった。彼は何度も断り拳銃で脅され、ついに心の声に従ってヘクターに会いに行く。 最後の作品を残して失踪したといわれるへクターは生きていて、まさにその生の灯火が消えようとしていた。 ジンマーを迎えに来た女は、ヘクターの使用人兼当時のカメラマンの娘だった。 彼女はヘクターの自伝を書こうとしていた。 遠い道のりはヘクターの話を聞くのに十分だった。 彼は、また映画を撮っていた。だが死後24時間以内に彼に関する全てを燃やしてしまうように遺言した。彼は今までの人生で償輪なければならない重いものを抱えていた。ジンマーはその映画が見たかった。しかしそれにまつわる話が様々に入り組み、ジンマーや周りの人々まで巻き込み。やがてそれは炎になる。 随分前にDVDで「King of Kings」という、モノクロ、サイレント映画を見たことがあるのを思い出した。

Posted byブクログ