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幻影の書 の商品レビュー

4.3

52件のお客様レビュー

  1. 5つ

    17

  2. 4つ

    15

  3. 3つ

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2023/10/23

傷ついた人物が、ひとつの話を通して傷を癒して再生していく話ではあるのだけれど 本当に希望をもつ終わり方なのかはもう少し頭の中で転がして考えたい。 そう思える感じが良い。

Posted byブクログ

2022/08/28

消息不明になっていた、昔トーキー時代の喜劇俳優の作品を追っかけるようにして観た主人公がそれを本にし、それを読んだ俳優の妻から連絡あり、その俳優の自伝を書いている女性と知り合って… という話。 ポール・オースターは、話の中に話を盛り込むのが多く、読むのが難解かもしれないですが、かな...

消息不明になっていた、昔トーキー時代の喜劇俳優の作品を追っかけるようにして観た主人公がそれを本にし、それを読んだ俳優の妻から連絡あり、その俳優の自伝を書いている女性と知り合って… という話。 ポール・オースターは、話の中に話を盛り込むのが多く、読むのが難解かもしれないですが、かなり面白い話でした。 決して明るくは有りませんが…

Posted byブクログ

2021/07/05

飛行機事故で妻と子供を失った男が、ある喜劇映画に惹きつけられ、その映画作家についての著書を作成する。 刊行された著書はやがてもう死んだとされていた映画作家の身内に届き、そこからこの作家の失踪にまつわる話が展開されてゆく。 急な転変も幾度かあるけれど、緻密な文章がそれをリアリティに...

飛行機事故で妻と子供を失った男が、ある喜劇映画に惹きつけられ、その映画作家についての著書を作成する。 刊行された著書はやがてもう死んだとされていた映画作家の身内に届き、そこからこの作家の失踪にまつわる話が展開されてゆく。 急な転変も幾度かあるけれど、緻密な文章がそれをリアリティに変えていく。ス トーリーテリングの巧さが本作でも見られる。男の魂が「本当に」救済されたのかどうかはわからない。 読み終わった後、何が本当なのか分からなくなる。 心地いい謎が残る本。

Posted byブクログ

2020/09/07

ポール・オースターは、孤独を友とする人にこの本を与えてくれた。主人公が絶望と孤独という死の淵から、生きる事への希望に至るまでを描いた物語。芸術作品や書物は生きた証であり、自らの作品の全てを葬り去る事など本当は望まないのだ。人は生きた証を、誰かに理解して欲しいし愛が必要なのだと思い...

ポール・オースターは、孤独を友とする人にこの本を与えてくれた。主人公が絶望と孤独という死の淵から、生きる事への希望に至るまでを描いた物語。芸術作品や書物は生きた証であり、自らの作品の全てを葬り去る事など本当は望まないのだ。人は生きた証を、誰かに理解して欲しいし愛が必要なのだと思いました。

Posted byブクログ

2020/08/10

私にとっては初のポール・オースターの小説。本好きの人には知られているが、今まで手に取る機会がなかった。 本書はミステリー仕立ての小説であるが、謎を解くことが読者の目的ではない。テーマを一言で表すのは難しいが、人間の抱える闇と懺悔か。誰にでもある、弱さや辛い経験とどう向き合うか、が...

私にとっては初のポール・オースターの小説。本好きの人には知られているが、今まで手に取る機会がなかった。 本書はミステリー仕立ての小説であるが、謎を解くことが読者の目的ではない。テーマを一言で表すのは難しいが、人間の抱える闇と懺悔か。誰にでもある、弱さや辛い経験とどう向き合うか、が問われているのだと思う。 著者はアメリカ人で、小説の舞台もアメリカだが、時代は1920年代から1980年代にまで及ぶ。1920年代といえば、モノクロの無声映画全盛の時代であり、その多くはコメディであった。本書の主人公は大学講師であり物書きであったが、個人的な不幸に見舞われ落ち込んでいたところ、ある喜劇役者の映画を見た。その役者は何十年も前に失踪し、それ以来行方が分からなかった。大学講師はその役者について調べて本を出版したところ、彼の妻と名乗る人から手紙をもらう。 とても細かいプロットであり、なかなか面白く読めた。アメリカ人作家らしく、ドラマティックな展開をし、舞台もバーモントからニューメキシコとアメリカを横断する。ちょっと腑に落ちない部分もあったが、小説としてのエンターテイメント性や完成度は素晴らしいと思った。あとがきに書いてあって興味深かったのは、本書で架空の映画の脚本が書かれているのだが、それが実際に映画になったとあった。機会があれば観てみたい。

Posted byブクログ

2021/01/13

オースター初読み。航空機事故で妻子を失った大学教授と謎の失踪を遂げた映画俳優、二人の思いがけぬ邂逅により数奇な運命が動き出す―。米文学にミステリー、そこに映画評論までもが混ざり合い、久方ぶりの新鮮な読書体験だった。登場人物の織り成すドラマは濃密で、彼らの歩む人生の悲哀が滲み入って...

オースター初読み。航空機事故で妻子を失った大学教授と謎の失踪を遂げた映画俳優、二人の思いがけぬ邂逅により数奇な運命が動き出す―。米文学にミステリー、そこに映画評論までもが混ざり合い、久方ぶりの新鮮な読書体験だった。登場人物の織り成すドラマは濃密で、彼らの歩む人生の悲哀が滲み入ってくる。人は喪失を経て再生すると言うが【二度目の喪失】を経たデイヴィッドが辿り着く境地には哀愁と悲壮感が色濃く漂っている。運命の歯車が一巡し、新たなプレーヤーがアルマの秘匿したフィルムを発見した時、彼は次なる口伝者となるのだろうか。

Posted byブクログ

2020/01/05

初期の「ニューヨーク三部作」がまだ二冊残っているが、これが図書館に来たので先に読むことにした。 「孤独の発明」「鍵のかかった部屋」「偶然の音楽」は若者が辿った運命の陰が色濃くにじんだ、思索的な作品だった。と、一からげには出来ない。それぞれに印象的な部分が多いが。それは先に残したレ...

初期の「ニューヨーク三部作」がまだ二冊残っているが、これが図書館に来たので先に読むことにした。 「孤独の発明」「鍵のかかった部屋」「偶然の音楽」は若者が辿った運命の陰が色濃くにじんだ、思索的な作品だった。と、一からげには出来ない。それぞれに印象的な部分が多いが。それは先に残したレビューに託すとして、その後何作かの後にこの「幻影の書」が書かれている。 読了した「ムーン・パレス」は、詩を散ちばめような文章が、物語を語っている。 そして「ムーン・パレス」は主人公のストーリーの中に、彼の運命に交わる新たな人生の物語りが入り込んでくる形になっている。 その第二、第三の物語の感覚がいつか彼に反映して、より自分をくっきりと見ることができる。という方法を取り入れてくる。 その作中の第二・第三の物語が、主人公の人生と周辺の人々との時間だけでなく、入り込んだ別な時間(彼にとっては過去だった時間)に別な人生を生きてきた人物の時間が、ついに彼に追いつき、じわじわと入り込んで、彼の運命まで(良くも悪くも)狂わせてしまうことになる。 そういった形式が、顕著になっている。 この「幻影の書」では、彼のストーリーであったもの彼の運命であったものの中に、ここではヘクター・マンといういう喜劇俳優の話がジンマーの生活に否応なしに入り込んて、彼の運命に重なる様子が、実に重く苦しい。ジンマーの苦悩は消化できっずますます重みを増してくる、そしてヘクターとジンマーが生きていく(または生きてきた)悲しさが、ついには取り返しのつかない狂気にまでつながっていく。 暗い世界だったが、オースターのストーリー性が見事に発揮され、読まなくてはいられなかった。 主人公はデイヴィット・ジンマーという。「ムーンパレス」で瀕死のマーコを探し出す友人の名前と同じだ。 彼とマーコは別れた後、時がたってウォールストリートですれ違い軽く挨拶をして、その後二度と会わなかった。 暫くしてジンマーは教授になり愛する妻と息子か出来る。だが妻が両親に会いに行く飛行機が落ちて二人とも亡くなってしまった。どん底のジンマーは自殺を試みたが果たせず、光のない世界をさまよっていた。時が過ぎ、ふと夜につけたテレビで、サイレント映画の中でヘクター・マンという、喜劇俳優にはほど遠い、美青年が懸命に演技するのを見た、そのナンセンスな俳優とギャクの構成に思わず笑っていた。これが彼の苦悩の消滅の大きな前触れだった。 へクター・マンが作った古いサイレント映画のフィルムはもう少ししか残っていなかったが、彼は寄贈されたと言う12巻を追って海を渡り「ヘクター・マンの音のない世界」という本を書いた。 そこに美しい客が来る。死の床にあるあるヘクター・マンの招待だった。彼は何度も断り拳銃で脅され、ついに心の声に従ってヘクターに会いに行く。 最後の作品を残して失踪したといわれるへクターは生きていて、まさにその生の灯火が消えようとしていた。 ジンマーを迎えに来た女は、ヘクターの使用人兼当時のカメラマンの娘だった。 彼女はヘクターの自伝を書こうとしていた。 遠い道のりはヘクターの話を聞くのに十分だった。 彼は、また映画を撮っていた。だが死後24時間以内に彼に関する全てを燃やしてしまうように遺言した。彼は今までの人生で償輪なければならない重いものを抱えていた。ジンマーはその映画が見たかった。しかしそれにまつわる話が様々に入り組み、ジンマーや周りの人々まで巻き込み。やがてそれは炎になる。 随分前にDVDで「King of Kings」という、モノクロ、サイレント映画を見たことがあるのを思い出した。

Posted byブクログ

2020/05/18

失意にもがくデイヴィッドをかろうじて現実につなぎとめたのは、古き映画の一場面だった。 「幻影」という言葉がなんとぴったりなのだろう。 その場で起きたことはもちろん、語られた話も映画の中も、どれもが眼の前で起きたことのように映像的でリアル。混同してしまいそうになること二度三度。 ...

失意にもがくデイヴィッドをかろうじて現実につなぎとめたのは、古き映画の一場面だった。 「幻影」という言葉がなんとぴったりなのだろう。 その場で起きたことはもちろん、語られた話も映画の中も、どれもが眼の前で起きたことのように映像的でリアル。混同してしまいそうになること二度三度。 にもかかわらず、である。 このストーリー展開。今、すべてが幻影だったといわれたとしても納得してしまいそうである。 作品、あるやいなや。  (実体のあるものにできる「影」を思いつつ。)

Posted byブクログ

2018/11/24

柴田元幸訳ポール・オースター作品もこれで11冊目。本作のハイライトは、なんと言ってもその視覚的描写の素晴らしさに尽きる。 飛行機事故で家族を亡くして失意のどん底にいた「私」は、映画界から突如失踪した監督・俳優のヘクター・マンが作った無声映画に救われた。そして、マンに関する著作を発...

柴田元幸訳ポール・オースター作品もこれで11冊目。本作のハイライトは、なんと言ってもその視覚的描写の素晴らしさに尽きる。 飛行機事故で家族を亡くして失意のどん底にいた「私」は、映画界から突如失踪した監督・俳優のヘクター・マンが作った無声映画に救われた。そして、マンに関する著作を発表したところ、彼の妻から手紙が届く。 マンの作った映画がこの小説の中で、まるでもうひとつの作品であるかの如く描かれているのだが、その描写があまりに美しい。映画を、まして無声映画を文字でここまで生き生きと描写できるものなのか、と感動すら覚える。もちろん、描写だけでなく、その映画のストーリーも秀逸。文字を目で追っているだけで、自分の頭の中でリアルにその光景が浮かび、登場人物に感情移入してしまう。 これまでに読んだオースター作品は、結論を敢えて書き切らず、読者の想像に委ねるものが多かったが、それらと比較すると、本作は書き切っている感が強い。しかしながら、読者に委ねる部分が減ったこと以上に、視覚的描写とストーリーテリングが素晴らしい。ごく近しい人が亡くなるなど、本来悲しみを覚える場面が多くあるのだが、読後感として残るのは美しさだ。豊かで細やかな描写がこの読後感を創出している。

Posted byブクログ

2018/09/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「誰もが彼のことを死んだものと思っていた。」  この時点で面白そうな雰囲気がぷんぷん漂う。予想に違わず、ぐんぐんと物語の世界に引き込まれ、体を持って行かれるような経験をした。絶望の淵に立たされた主人公が仕事に没頭することで立ち直っていく、というのはポール・オースターの作品によく見られるパターンだが、そこに古典的なミステリの要素が加えられ、主人公の行く先から目が離せなくなる。  簡単なあらすじ。  飛行機事故で妻と2人の子供を失い、絶望に直面していたデイヴィット・ジンマーは、ある一本の無声映画に出会う。映画の主演であり監督でもある人物、ヘクター・マンは過去に謎の失踪を遂げており、すでに死んだものとされていた。しかし、デイヴィッドがヘクターの映画について丹念に調査し、一冊の書を書き上げたあと、デイヴィッドの辿った軌跡の糸口が舞い込む。ヘクターの元へ案内したいと訪ねてきたアルマから、デイヴィットのその後の人生について聞かされた。なんと彼は誰にも見せない映画を撮り続けていたのだ。せっかくヘクターの元にたどり着いたデイヴィットだったが、さらなる絶望が待っていた…。  著者の功なのか訳者の功なのか、とにかく文章表現がすばらしい。こういう表現もあるのか!と読んでるだけでワクワクする。こんな本に出会えて幸せ。

Posted byブクログ