ためらいのリアル医療倫理 の商品レビュー
http://kumamoto-pharmacist.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/post-cba1.html
Posted by
発売直後に購入。少し読み始めていたものの、カバンの中に放り込んだままでした。ごめんなさい、岩田先生。久しぶりに電車の中で読み直すが、一々納得。質より量。イエス・ノーで考えない。焦るな。じっくり、ゆっくり。命の等価性への疑問。ためらいながら、おじおじしながら語ること。マニュアル・ガ...
発売直後に購入。少し読み始めていたものの、カバンの中に放り込んだままでした。ごめんなさい、岩田先生。久しぶりに電車の中で読み直すが、一々納得。質より量。イエス・ノーで考えない。焦るな。じっくり、ゆっくり。命の等価性への疑問。ためらいながら、おじおじしながら語ること。マニュアル・ガイドラインを尊重しつつも、現前の患者にどのように対峙すればいいのか。有責性への自覚。 感動と納得をもって一気に読了しました。
Posted by
「医者はすべての患者を平等に扱うべし」等の倫理規定を絶対視するのではなく,より現場にフィットした形で考えていこうという好感の持てる本。医療倫理に限らず社会問題を考える上でも示唆に富む。 医師といえども時間的・空間的に近い関係の人を思うのが当然であり,そのことを無視して理想論を言...
「医者はすべての患者を平等に扱うべし」等の倫理規定を絶対視するのではなく,より現場にフィットした形で考えていこうという好感の持てる本。医療倫理に限らず社会問題を考える上でも示唆に富む。 医師といえども時間的・空間的に近い関係の人を思うのが当然であり,そのことを無視して理想論を言っても仕方ない。そういう制約の中で,患者をそれなりに平等に扱うように,なんとかやりくりしていこう。なるほど実に現実的だ。大きな病気をしたら,こういう医者に診てもらいたいかも。「仁術」としての医療に関して語られる,医者にとっても患者にとってもためにならないうわべだけのきれいごとを排除していく。「患者の気持ちがわかる医者になる」なんてまず無理だ,と著者は言う。患者の気持ちがわかると思ってる医者は,その時点で自分を上位に位置づけるており自己矛盾を来している。 著者の著作に通底するのは,徹底した二元論の否定,価値相対主義。死の定義が次第に変遷していったように,文化や社会的合意が境界を決める一つの基準になることはある。しかし,脳死を死と認めるか否の選択が個人にゆだねられているように,グレーゾーンは常にある。著者がロールモデルとする内田樹の影響が色濃く出ている。「理路」などの内田用語も頻出。本書のタイトルも,内田樹のデビュー作『ためらいの倫理学』をふまえたものだという(p.203)。ちなみに「醸成」のことを「醸造」(p.161他)というのは内田先生も使ってなかったと思うけど。 喫煙と健康,延命と苦痛の緩和,すべてはトレードオフで,何を重視するかは個人個人さまざま。また他人の事情をすべて理解し推し量ることもできない。だから医師は患者の価値観を尊重し,「ためらい」ながら対峙する。
Posted by
内田樹氏からの影響がその著作から強く感じられる多作の大先生による医療倫理本。指摘の通り、医療倫理を定型にはめないことは大切だと思う。また、(おそらく永遠に)結論に至らないのであろうが、時間的、空間的、多面的に考えることが臨床現場ではリアルなのだ思う。
Posted by
お医者さんのエッセイ。内田樹先生みたいなの。特段読むべきところなし。むしろ有害か。 「受精卵から胎児、出産、新生児までの「価値」は変じていきます。その変じ方はひとそれぞれです。僕には、まだ人工妊娠中絶が正しいか否か、あるいはどの週数ならば正当化されるのか、その正確な答を...
お医者さんのエッセイ。内田樹先生みたいなの。特段読むべきところなし。むしろ有害か。 「受精卵から胎児、出産、新生児までの「価値」は変じていきます。その変じ方はひとそれぞれです。僕には、まだ人工妊娠中絶が正しいか否か、あるいはどの週数ならば正当化されるのか、その正確な答を知りません。たぶん、そんな答えはどこにもないのでしょう。ただ、「どこにも正しい答えはない。僕の主観(価値観)があるだけである」という理解・納得が生じれば、プロ・ライフとプロ・チョイスが不毛に罵りあう必要はなくなるのではないかと思います。大事なのは、相手の言い分を効くことで、こちらの正当性を主張することではないと、僕は思うのです。多くのプロ・ライフ、プロ・チョイスの人たちは、「自分たちは正しくて、相手が間違っている」という強固な信念の故に、\kenten{どちらも間違っている}のです。」p.73
Posted by
岩田健太郎先生の最新刊。大きなサイドチェンジあり、鋭いスルーパスあり、しかし、最後のシュートは読者の自由な発想で。そんな堅苦しくない、ディベート感あふれる本でした。
Posted by
- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
自分が働き出して3年が経つがそこで感じるようになったことは、医学など科学は如何に曖昧な部分が多いかということ、また医学的な「正しさ」というのは何処まで患者に適応できるのかということだ。インフォームド・コンセントの際や日常診療での患者からの質問に、それはこれこれこうです、と断定口調で話せるのがかっこいい、プロだ、と初めは思っていたけど、そう簡単に断定できるものはほとんどないと強く感じるようになった(知識不足は論外として)。超高齢者への(利益の少ないと予想される)積極的医療、透析を拒否する高齢者との対話など、何を大事にするかという価値観は人様々であり画一的な答えなんてないと確認できた。またコレステロールや尿酸値などの数字がちょっと高いことなどを理由にして、ただでさえ内服薬が多い患者にどこまで医学的正当性を理由に勧めればよいのか、またはそこまでの権利があるのか。「医学的正当性をあえて選択しないことが許容されるとしたら、それはどのような条件下においてか?」このような問いの立て方はこれから自分が医療・患者に向き合っていく上で大事なヒントとなってくれたような気がした。岩田健太郎先生とは一度もお会いしたことはないが、今や私のロールモデルとなっています。
Posted by
- 1
- 2