1,800円以上の注文で送料無料

魚影の群れ の商品レビュー

4.4

10件のお客様レビュー

  1. 5つ

    5

  2. 4つ

    3

  3. 3つ

    1

  4. 2つ

    0

  5. 1つ

    0

レビューを投稿

2024/06/21

うちは今、けっこうな田舎にあって、この前、2、3日うちを開けたら、ネズミかハクビシンか、アナグマが天井裏に住みついてた。というか東京に住んでた時も、防災用のビスケットがネズミにやられて、そこはあんまり田舎関係ないかも。前に虫に詳しい友達が言ってたんだけど、害虫を家に入れないために...

うちは今、けっこうな田舎にあって、この前、2、3日うちを開けたら、ネズミかハクビシンか、アナグマが天井裏に住みついてた。というか東京に住んでた時も、防災用のビスケットがネズミにやられて、そこはあんまり田舎関係ないかも。前に虫に詳しい友達が言ってたんだけど、害虫を家に入れないためには、たえず「ここは人間のテリトリー!」とアピることが大事らしい。なので天井は、クイックルワイパーでドスドスつついてがんばった。ケーブルかじられて火事とか怖いし。人間さまの尊厳ってないね。虫やハクビシンとタイマン張らないと、家も守れない。 よく「自然を守ろう」とかって言ったりするけど、自然って、ちょっと気を抜くと、自分なんてぷちっと潰してくる。それは不運も大きいし、それこそ「災害級」の確率でしか起こらないかもしれないけど、毎日地味にナワバリ争いは続く。 ナワバリが崩れるのは対自然だけじゃなかった。この本では、「おいおい、他人も自分の力ではどうにもならないのかよ〜!」いう気持ちになった。周囲のすべてにたいして、わたしの尊厳はとってももろい。わたしは、わたしのどんな部分に、わたしの尊厳と存在意義を見出せるか。

Posted byブクログ

2023/03/25
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

動物をテーマとした短編4作を収録。 海の鼠は瀬戸内の島で大量発生した鼠に対応する人々を描いた実話にもとづいた話。 鼠取り機、殺鼠剤、蛇など、鼠駆除に様々な方策が講じられ、一定の効果はあるものの、結局人間の力で鼠の群れを壊滅させることはできず、島民は鼠の害にあいつつも、状況を諦め、受け入れていく。そのうち、人口の減少と共に鼠は自然に減っていく。 これはウィズコロナになっていく今の状況にも似ており、自然の力に対して、人間はどうにもできないことを知らされる。 そのほかの話はフィクションだが、いつも淡々とした文体のノンフィクションを書く筆者であるが、心理描写も上手いと思った。

Posted byブクログ

2022/04/30

『魚影の群れ』の肉体労働者の描写&人間ドラマは、中上健次を彷彿とさせる無駄のない筆致で漁師の厳しさがひしひしと伝わってくる。 『海の鼠』、好きだなぁ、コレ(笑)。子供の頃に「これでもか」と公開された、動物パニック映画を思い出すからだ。鼠映画は『ウイラード』ってのがあった。 そうい...

『魚影の群れ』の肉体労働者の描写&人間ドラマは、中上健次を彷彿とさせる無駄のない筆致で漁師の厳しさがひしひしと伝わってくる。 『海の鼠』、好きだなぁ、コレ(笑)。子供の頃に「これでもか」と公開された、動物パニック映画を思い出すからだ。鼠映画は『ウイラード』ってのがあった。 そういえば『熊嵐』は『グリズリー』か(笑) 人間があの手この手で駆除しようとしても目的を遂げられず、結局解決できない、というのが現実味があって好き。虚ろになった島民たちが、鼠に食われるとわかっていても作物を作ろうとする……シュールだ。 共食いの話は、人間は為す術がない宇宙人が結局バイキンで死ぬ『宇宙戦争』を思い出す。

Posted byブクログ

2021/12/03

1950年頃愛媛県戸島で起きたネズミ大量発生騒動をモデルにした「海の鼠」など4編。自然災害を書かせたら神。時代も環境も違うのに臨場感があって、村人の一人になって一緒に毒ダンゴを作ってる気持ちになった。名作揃いの吉村昭氏の著作の中でも決して引けを取らない。高熱隧道や羆嵐と同じレベル...

1950年頃愛媛県戸島で起きたネズミ大量発生騒動をモデルにした「海の鼠」など4編。自然災害を書かせたら神。時代も環境も違うのに臨場感があって、村人の一人になって一緒に毒ダンゴを作ってる気持ちになった。名作揃いの吉村昭氏の著作の中でも決して引けを取らない。高熱隧道や羆嵐と同じレベルの衝撃。短いページの間に何度も期待と歓喜と失望が繰り返される。1960年代から70年代にかけて吉村昭と新田次郎の新作が読めてたなんて、その時代の読者は幸せだなぁ。

Posted byブクログ

2018/08/07

「海の鼠」「蝸牛」「鵜」「魚影の群れ」の4篇の短篇集。 実話に基づくらしい。 筆者の綿密な取材により、ありありとその世界が伝わる。 中でも、大量発生する鼠に苦慮する島の顛末を描いた「海の鼠」。自然現象にいかに人は無力か。島民の悲哀。そして、「鼠駆除」がもたらしたもの…。氏の筆...

「海の鼠」「蝸牛」「鵜」「魚影の群れ」の4篇の短篇集。 実話に基づくらしい。 筆者の綿密な取材により、ありありとその世界が伝わる。 中でも、大量発生する鼠に苦慮する島の顛末を描いた「海の鼠」。自然現象にいかに人は無力か。島民の悲哀。そして、「鼠駆除」がもたらしたもの…。氏の筆致が秀逸。

Posted byブクログ

2015/09/13

久しぶりに本を読んで鳥肌がたった。総毛立つとはこのことであろう。 それが、最初の海の鼠である。 あくまでリアルにリアルに(この話は実話であるようなのだが)描く筆力に感服。 最後の話、表題作もよい。 心に迫るものを感じて本を置いた。

Posted byブクログ

2013/12/18

マグロ、鼠、鵜、蝸牛をテーマにした「動物小説」の短編集(4編)。 動物を通じて自然の厳しさを描き、また自然(動物)と対峙するプロの生き様をヒューマンタッチに描く。 吉村昭の作風でもある詳細な事実調査の積み重ねからなる迫りくるリアリティに自ずと惹きこまれてしまう。 歴史小説にはない...

マグロ、鼠、鵜、蝸牛をテーマにした「動物小説」の短編集(4編)。 動物を通じて自然の厳しさを描き、また自然(動物)と対峙するプロの生き様をヒューマンタッチに描く。 吉村昭の作風でもある詳細な事実調査の積み重ねからなる迫りくるリアリティに自ずと惹きこまれてしまう。 歴史小説にはない新鮮さを堪能できた。

Posted byブクログ

2012/12/30

瀬戸内海の小島で爆発的に大量発生するドブネズミ、会員制販売され常習性のある食用カタツムリ、鵜飼される鵜、津軽海峡のマグロ、とその周りの人間の話。 李鴻章が「耕して天に至る。以て貧なるを知るべし。以て勤勉なるかな。」と称した光景を見てみたい。人が土地に対してした敢闘の証。 棚田っ...

瀬戸内海の小島で爆発的に大量発生するドブネズミ、会員制販売され常習性のある食用カタツムリ、鵜飼される鵜、津軽海峡のマグロ、とその周りの人間の話。 李鴻章が「耕して天に至る。以て貧なるを知るべし。以て勤勉なるかな。」と称した光景を見てみたい。人が土地に対してした敢闘の証。 棚田ってきれいだな、くらいに感じていただけだったけど、たくさんの労働と忍耐と、土地への愛着の産物だったようです。 ドブネズミの駆除の仕方や、鵜飼やマグロ漁の仕方、卒塔婆などの単語など、知らないことがまだまだたくさんあると教えてくれる良い本!

Posted byブクログ

2011/11/04

ネズミ恐るべし。最近ダニとの闘いを経験したので、身につまされる。 鵜飼の話、漁の話、と、親爺目線の話が多く、普段の私の読書領域とちょっと違って面白かった。 昔「破獄」は読了済み。次は話題になっていた地震の本を読んでみたい。

Posted byブクログ

2011/09/18

2011 9/18読了。WonderGooで購入。 自分には珍しくタイトルとジャケット、それにあらすじを見て衝動的に買った本。でも大正解だった。 ノンフィクションでもよく知られる吉村昭が、人と動物の関係(っていうのは動物と心を通わせるとかそんなものではなく、村を荒らす鼠の大群、新...

2011 9/18読了。WonderGooで購入。 自分には珍しくタイトルとジャケット、それにあらすじを見て衝動的に買った本。でも大正解だった。 ノンフィクションでもよく知られる吉村昭が、人と動物の関係(っていうのは動物と心を通わせるとかそんなものではなく、村を荒らす鼠の大群、新種の食用蝸牛、鵜飼の苦悩、マグロ漁師の生活、といった荒々しいもの)について、取材に基づいて書いたであろう小説集。 1本目「海の鼠」のインパクトは凄い。 瀬戸内海の貧しい小島が百万匹を超えていく鼠の大発生と立ち向かい、あらゆる方策を試みて、効果は上がらない。 にもかかわらず植えても鼠に食われる作物を植え、鼠のあいまを縫うようにして収穫して生きる。若者たちが島を出るようになって人口が半減してもなお住み続ける。「人が土地を支配する」のではなく「土地が人を支配する」というのは、転勤族の自分には全くわからない感覚だけど、鼠を踏みながらくらす人たちの話から現実にあることなのだと伝わってくる。 とても面白かったので著者の他の作品も是非読んでみたい。

Posted byブクログ