オレンジだけが果物じゃない の商品レビュー
半自伝的小説。 主人公はキリスト教一派の熱心すぎる信者である養母に育てられる。信仰の中で育ちそれが絶対であり、進学しても周囲に溶け込めない。 信仰の中は安全であったけれど成長するにつれそれは崩壊して行く。 厳しいなと思う。その中しか知らないということ。それが正しいと思っていたのに...
半自伝的小説。 主人公はキリスト教一派の熱心すぎる信者である養母に育てられる。信仰の中で育ちそれが絶対であり、進学しても周囲に溶け込めない。 信仰の中は安全であったけれど成長するにつれそれは崩壊して行く。 厳しいなと思う。その中しか知らないということ。それが正しいと思っていたのに。 母親の理想を離れると叩きのめされる。 所々に別の話が紛れ、はじめはこの話は何?と思ったけど、それは主人公がその中に逃避しなんとか折り合いを見つけようとしてるんだなと読み進めるうちに思った。 気の毒な境遇であるのに、笑ってしまうところもあり、そこが余計に微妙な複雑な心持ちになってしまう。 母子関係や子育てにおいて国内の何人かの作家の小説を読んだことがあるが、こういう書き方は絶対にしていない。そこが新鮮でもあり、やや入り込みにくさもあった。 それにしても養父の影が薄いのなんの。そこもポイントだと思う。
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著者の半自伝的小説。 狂信的家庭のなかで育ったジャネット。 その中にいる間はそれが当然の世界であったのが 成長するにつれ、その壁は崩れていきます。 そして崩れた先にあったのは読んだ通り。 でも最後のクリスマス。 そう簡単には家族のつながりが切れないというラストで終えたのは ...
著者の半自伝的小説。 狂信的家庭のなかで育ったジャネット。 その中にいる間はそれが当然の世界であったのが 成長するにつれ、その壁は崩れていきます。 そして崩れた先にあったのは読んだ通り。 でも最後のクリスマス。 そう簡単には家族のつながりが切れないというラストで終えたのは 著者が自分自身と家族を受け止めることができた証なのでは、 と思いました。 大変な人生を生きていくうえで「物語る」ことの意味を知る作家の、 自分の孤独と苦しみをアイロニーで昇華した、これぞ処女作品。
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白水の海外小説の誘惑シリーズの面白さたるや、まあ世界中から優れた文学を選んでいるのかもしれないけれども、ほんとうにすごい。この本がいいな、と思ったのは、圧倒的な価値観のゆらぎを多角的な視点からえがいているから。自分の育ってきた環境の中で絶対とされてきたものと、自分の心の中から成長...
白水の海外小説の誘惑シリーズの面白さたるや、まあ世界中から優れた文学を選んでいるのかもしれないけれども、ほんとうにすごい。この本がいいな、と思ったのは、圧倒的な価値観のゆらぎを多角的な視点からえがいているから。自分の育ってきた環境の中で絶対とされてきたものと、自分の心の中から成長とともに湧き出てきたものが相入れないものだったときのゆらぎが、なんだかとても切実で、でも優しい。どちらが絶対にいい、というわけでもなくて、でもどこにもいけなくて、本当にひとりぼっちで孤独なはずなのに、それを包み込み落とし込む小説的なユーモア。全体的にユーモアが悲劇的な状況を見事に包んでいて、それが面白さと深みに拍車をかけているかんじ。こんなに素敵ながそこらじゅうに散らばっているなんて、まったく海外小説の誘惑シリーズは計り知れない。 にしても、主人公の名前を自分にするっていうのは、ある種かなり危険なコミットメントであることは明白ですが、それをやってのける、いやそれをやらなければならなかったというのは、この本があまりにも切実であった証拠のようにおもう。処女作というのは、こういう切実さがあってわたしはとてもすきだ。
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以前に読んだとき、あまりに面白くてしばらく他の本を読むことが出来ませんでした。ジャネットは不幸なひとではなかったと思う。養母は圧倒的なパワーの持ち主だけど、ジャネットを愛してるし。この本はめちゃくちゃ面白いです。客観的に人生を見つめる周りも見つめるジャネットの姿勢が好き。
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なんていうか、わたしはけっこうポストモダン的な、価値相対主義的な考え方をする人間で、だからこそ絶対的なものに対する希求が非常に強い人間で。正しさの消え失せた世界でどう生きていくか、という問いに真摯に向き合っていると感じるのは英語圏の文学が多い。そしてこの小説はそんな問いにとても真...
なんていうか、わたしはけっこうポストモダン的な、価値相対主義的な考え方をする人間で、だからこそ絶対的なものに対する希求が非常に強い人間で。正しさの消え失せた世界でどう生きていくか、という問いに真摯に向き合っていると感じるのは英語圏の文学が多い。そしてこの小説はそんな問いにとても真摯に向き合っている。だからとても心に響く。これはやっぱり、絶対的なものに対する希求がありつつポストモダンで生きざるを得ない人間の哀しみは、伝統的にキリスト教信仰をベースに持つ国の人々の方が切実なのだということもかもしれない。でも、わたしは日本に生まれて日本に育った人間だけれどもこういう文学に非常に惹かれるし、こういうのは日本人含め様々な人に必要な文学なのだと思う。「わたしを裏切らないでほしい」という主人公の切迫した、しかし諦観を滲ませた望みが、ほんとうに痛いくらいにわかる。
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