照柿(上) の商品レビュー
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※このレビューにはネタバレを含みます
なかなか重苦しいというか、暑苦しい読書です。 電車で移動中、ホームから電車の入る線路へ飛び込む女性を目撃した合田雄一郎。 気温の高さと、多分連日の睡眠不足のため、最初から機嫌はよろしくない。 所轄に任せることなく部下と現場を検証している時、関係者と思しい女性をみつける。 それが、亡くなった女性の不倫相手だった佐野の妻、美保子。 場面が変わって、大企業の工場で熱処理を担当している野田達夫。 気温よりはるかに暑い環境で日々を過ごし、頭痛と無気力にさいなまれる日々。 しかしある日、通勤時に昔の女である美保子を見かけ、彼女の窮地を救ったことから、ふたりの運命がまた交差し始める。 合田雄一郎と野田達夫のパートが繰り返し語られるが、ふたりの時間が交差するまで200ページもかかった。 そしてその時、この作品はミステリではなく、純文学系の作品なんだとわかった。 大阪時代の幼馴染と17年ぶりに東京駅で出会う偶然。 同じ女性を挟んで、それぞれの過去が今度は語られる。 多分メインとなる事件はまだ起こっていないのだと思うけど、犯人も動機も目星がついてしまった。 合田雄一郎については、別れた妻とその双子の兄という三角関係もあり、どっちを向いても息苦しい。 捜査のために身銭(6桁の金額)を切って、暴力団の開く賭場で夜な夜なばくちに励むのも、真っ白いスニーカーのようだった合田刑事が薄汚れたなあという感じで、読んでいてもどんより。 髙村薫の筆は、野田達夫の業務の事細かな描写も、合田雄一郎の抱える屈託の重さも、余さず書いているのはさすがとしか言いようがないけれど、ページが進まないことこの上ない。 下巻もこんな感じなのかなあ。 多分そうだよね、だって髙村薫だもの。
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久しぶりの高村薫は、 やはり高村薫だな。 精緻な言葉の積み重ねに、 状況の描写、心理描写が、 まー、巧みなこと、巧みなこと。 『マークスの山』の合田雄一郎に、 こういう物語があったとは。 後編が楽しみ!
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『マークスの山』に続く合田雄一郎シリーズ2作目。 魅惑的な女(佐野美保子)を軸に向かい合うこととなった同郷の幼馴染み、合田雄一郎と野田達夫。 捜査中の雄一郎を襲う遠慮のない猛暑と、 達夫の働く熱処理工場の暑さ、炉内の色、 その臙脂色が象徴的に何度も描かれる。 じっとりと追い詰める...
『マークスの山』に続く合田雄一郎シリーズ2作目。 魅惑的な女(佐野美保子)を軸に向かい合うこととなった同郷の幼馴染み、合田雄一郎と野田達夫。 捜査中の雄一郎を襲う遠慮のない猛暑と、 達夫の働く熱処理工場の暑さ、炉内の色、 その臙脂色が象徴的に何度も描かれる。 じっとりと追い詰めるような夏の暑さと、美保子の言い知れぬ魅力が、これまで社会と折り合いをつけながらやってきた二人の男の日常の薄皮を剥がす。 その臙脂色と対極に使われる、美保子のワンピースや達夫の父が描いた、青色。 それらと交差するように、殺人事件の捜査は行われるが、こちらは一向に解決の兆しが見えない。 堀田は本当に犯人なのか? 「堀田はどうやら〈殺す気はなかった〉と言っているらしい。」 雄一郎が目を付けた土井は事件にどう関わっているのか? 「さあこれで、もしこいつがホシなら逃げるか、自首するか。こいつが逃げてくれたら、膠着状態の捜査が少し動く。」 また、もう1つの事件である線路への飛び込み。 美保子はこの件に関わっているのか? 「佐野美保子はあの拝島の駅で、手に血がつくような何かをやったのだ。亭主と連れの女をただ追いかけただけではない。何かをやったのだ。」 終始息苦しい読み心地。 真夏に読まなくて良かったな~。 雄一郎、達夫、美保子の関係性は一定の距離を保ったままぐるぐるとしていて、 事件の方もぼんやりと全容が見えてきた程度で、 下巻へと続く。 う~ん、女性で身を崩してゆく雄一郎は見たくないな…と思いながらも先が気になる。 警視庁捜査一課の主人公、合田雄一郎シリーズは、 『マークスの山』 『照柿』 『レディ・ジョーカー』 『太陽を曳く馬』 『冷血』 『我らが少女A』 の順だと思うが、私は順番を崩して読んでしまっている。 今更だけど順番通りに読めば良かったな~。
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特に引き込まれるわけでもなく淡々と読み進んだ。 先がすごい気になるわけでもないけどなんとなく読みたいみたいな。 下巻でどうなるんだろうと思った。
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読んだ本 照柿(上) 髙村薫 20230109 小説「海竜」を書いた時、読みやすい文章を心掛けたのですが、ある方からは、読み応えが足りないといったご指摘をいただきました。 ちょうどその時読んでいたのが、「レディ・ジョーカー」で、みっちりと描きこまれた情景や心理描写に、こういっ...
読んだ本 照柿(上) 髙村薫 20230109 小説「海竜」を書いた時、読みやすい文章を心掛けたのですが、ある方からは、読み応えが足りないといったご指摘をいただきました。 ちょうどその時読んでいたのが、「レディ・ジョーカー」で、みっちりと描きこまれた情景や心理描写に、こういったものが必要なのかなとも思ったのですが、情景のリアルさはともかく、ひとつの事象や行動の動機について、ここまで考え込むものかと、逆に僕が書く上でのリアルとは違うなというのが結論でした。行為が思考の結論って言うよりは、衝動の後に感情が付いて来るって方が日常の中ではリアルなんだと。 とは言え、「レディ・ジョーカー」に描かれる警察内部や新聞・雑誌の編集現場の濃密な描写は、写生的な文章であるにも拘わらず、本当に読ませますね。そして、小説のリアル感が際立っていきます。そこに複数の登場人物のひつこいまでの心理描写が相俟って、息苦しいほどの密度を感じます。 その後、「マークスの山」を読みましたが、物語としてはこちらの方が好きかなと思いつつ、「照柿」を読んだら、上巻だけなのに、これ面白いってなっちゃう。結局、どれが面白いってことじゃなくて、読む度に魅力に囚われるってことですかね。 この息苦しいほどの濃密な描写はハード・バップが合うと思って、アート・ブレイキーのクラブ・サンジェルマンなんかを音量上げて聞きながら読みました。息が詰まる感じがたまらなかったです。
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非常に重く、心に引っかかるものを残す作品。 ストーリーはさておき、解説でも“スーパー・リアリズム”と表現されていたように描写の緻密さに脱帽すると同時に読むたびに疲れを覚える感もあり。 野田達夫の勤める工場の描写以外にも普段目にしている空の色、登場人物の目の動きが自分の目の前に...
非常に重く、心に引っかかるものを残す作品。 ストーリーはさておき、解説でも“スーパー・リアリズム”と表現されていたように描写の緻密さに脱帽すると同時に読むたびに疲れを覚える感もあり。 野田達夫の勤める工場の描写以外にも普段目にしている空の色、登場人物の目の動きが自分の目の前にあるかのように浮かんでくる。 野田達夫、合田雄一郎の心の動きも同じ。 あまりにもリアルで、感想も浮かばないままぐいぐいと引き込まれていく強さが感じられる。
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読んでいて息苦しくなるような内容です。達夫の世界は、私のような凡人には見えない色でいっぱいなんだろうな… 美しくもあり、苦しくもあり、先が気になります。 下巻に続きます。
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購入済み。 →10年前の作品。題名に記憶あり。既読か? →読み始める。やはりところどころに記憶に触る感じあり。しかし内容、結末を覚えてないので、このまま読んでみることとする(2021.09.17.) 人間の心の中はなんと複雑極まりない感情で満たされてることだろう。 人はその全て...
購入済み。 →10年前の作品。題名に記憶あり。既読か? →読み始める。やはりところどころに記憶に触る感じあり。しかし内容、結末を覚えてないので、このまま読んでみることとする(2021.09.17.) 人間の心の中はなんと複雑極まりない感情で満たされてることだろう。 人はその全てに意識することなく相対し、もがき、苦しみ、無理やりにでも折り合いをつけて納得し先へと進む 高村薫は感情に妥協しない。掘って掘って掘り下げて着地点を探っていく。 普通に取り組むと、あれ?今のどういう意味?ちょっと待って!と読んでは戻り読んでは戻りを繰り返さざるを得ない。 で、結果、時間をかけて読むことになるこの感じが堪らない。(笑) 確かにめんどくさい。読みにくい。サクサク行かない。でも、どうしようもなくハマってしまう私。 本作でも人間の複雑極まりない感情が複雑極まりなく表現されていて、よくわからないまま読了。 好きじゃないと途中で投げ出したくなる作品(笑)
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言わずもがなですの、高村文学。 もう何度読んでもおもしろい。 また「マークスの山」から読み返すのもいいかもしれない。 上下巻のレビューとさせてもらいます。
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これでもかというくらい重厚な文体。息苦しいまでの熱気。最近の小説には見かけない登場人物の圧倒的な存在感。熱処理の工程の緻密な描写。日常に違和感を抱いた暮らしから、本来の自分に戻るものの、最後には崩壊していく人たち。ミステリ小説とは呼べない、読者を選ぶ作品。レディジョーカー以降の髙...
これでもかというくらい重厚な文体。息苦しいまでの熱気。最近の小説には見かけない登場人物の圧倒的な存在感。熱処理の工程の緻密な描写。日常に違和感を抱いた暮らしから、本来の自分に戻るものの、最後には崩壊していく人たち。ミステリ小説とは呼べない、読者を選ぶ作品。レディジョーカー以降の髙村薫の作品を読みたくなった。
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