花石物語 新装版 の商品レビュー
出てくる方言が難しくて最初の方はそれこそ骨をおりましたが20頁も読み進む頃にはそれにもすっかり慣れて、この時代の明け透けな花石のまちにほいっと降り立った気になりました。鷹や桜の学帽とはどこぞいな?と思いながら読み耽りました。井上さんは鷹の上智、自伝的な小説だそうです。 女郎が...
出てくる方言が難しくて最初の方はそれこそ骨をおりましたが20頁も読み進む頃にはそれにもすっかり慣れて、この時代の明け透けな花石のまちにほいっと降り立った気になりました。鷹や桜の学帽とはどこぞいな?と思いながら読み耽りました。井上さんは鷹の上智、自伝的な小説だそうです。 女郎がまだ明るく街に溶け込んでいた頃のようすがいきいきと描かれています。いくつかの創作?エロ話も抜群でした。ワタシも話すのが大の苦手で、今でも人前ではどもってしまう稲穂の学帽です。
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もうすぐ4月9日で、井上さんが亡くなって4年が経つ。もうそんな時が過ぎたのか、と唖然とする事がある。 1871年3月18日、パリの民衆がティエール臨時政府に対し武器をとり蜂起した。28日に革命政府「パリ・コミューン」樹立している。 その数年後にマルクスは「フランスの内乱」を書き...
もうすぐ4月9日で、井上さんが亡くなって4年が経つ。もうそんな時が過ぎたのか、と唖然とする事がある。 1871年3月18日、パリの民衆がティエール臨時政府に対し武器をとり蜂起した。28日に革命政府「パリ・コミューン」樹立している。 その数年後にマルクスは「フランスの内乱」を書き、そのちょっきり10年後の1881年3月18日、パリコミューンに居合わせた西園寺公望がその一年後に渡仏して来た中江兆民を主筆として『東洋自由新聞』を創刊した。10年という月日は、それだけ人間と時代を変えるのである。 然るに、私はどうか。「再出発日記」というブログを始めて、はや9年目の春を迎えようとしている。なんにも変わっていない。 いや、この本の感想でした。 小松青年は、上智大学に入学したものの、東大コンプレックスと都会生活の疲れで強度の吃音症に陥る。休学して母親のいる花石(釜石)に帰る。そしてゆっくりゆっくり、ぶざまに、正しく「再出発」してゆく。創作だけど、自伝的要素も色濃く残っている。 ただ、井上作品が読みたいというだけで手に取った本書なのであるが、不思議とその時々の自分にあった本が向こうからやって来るのが、私の読書生活です。 夏夫は不意に、この鶴先生も、自分やマドロス先生と同類なのではないか、と思いついた。自分は、吃音という鎧を着ないと他人に正対出来ない。自信がないから裸で世界と向きあえないのだ。マドロス先生は変装しない限り、女性と話せない。同じように、裸で女性と付き合う勇気がないのである。そして鶴先生は「花石文化人」という鎧なしでは世界に立ち向かえない。だからしょっちゅう、なにか文化的な仕事をしようと画策している。 「民話さ成ってはいねえべか」 自分とマドロス先生と鶴先生は三つ子だ。すると鶴先生が世界に対して自信を持つことができれば自分もまたすこしは救われるのではないか。通る理屈か、通らない理屈か、よくわからないが、夏夫はそう考えた。 「さささっきの馬喰の話のように、もももっと、ぐたぐたぐた‥‥具体的に書いたらどうかなあ」(227p) 付箋紙を付けた処である。なんらかのヒントを貰ったかもしれない。 東北の港町の昭和30年代の人々の街と田舎の生活がイキイキと描かれていた。それが50年後には津波に呑まれてしまう(と、いうのはもちろん描かれてはいない)。けれどもしたたかな人ばかりだったので、みんなきっと大丈夫だっただろう。 2014年3月22日読了
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井上ひさしの半ば自伝的な小説。そして、かつては新日鉄の高炉をシンボルとし、また日本有数の漁港を有して賑わっていた釜石の町への井上のオマージュ。この小説が書かれた1980年は新日鉄釜石ラグビー部の全盛時代(日本選手権7連覇の3年目)なのだが、その一方では重厚長大型産業に影がさしてき...
井上ひさしの半ば自伝的な小説。そして、かつては新日鉄の高炉をシンボルとし、また日本有数の漁港を有して賑わっていた釜石の町への井上のオマージュ。この小説が書かれた1980年は新日鉄釜石ラグビー部の全盛時代(日本選手権7連覇の3年目)なのだが、その一方では重厚長大型産業に影がさしてきた頃でもあった。そして、2011年の大震災では、死者(888名)・行方不明者(153名)を出した釜石市。井上ひさしは、その前年に亡くなっているが、彼が生きていれば再び釜石に、そして東北全土に熱いオマージュを捧げたことだろう。
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東北出身の私の耳に残っている、やわらかくあたたかい方言にたっぷりと癒された! 輝きにあふれた時代の、輝きにあふれる街の人々のことばひとつひとつに元気をもらうのです。 最後の一文に胸がふるえる。頑張れ、夏夫くん!
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「昭和」や「戦後」を読むつもりで…というか、そんな感じの作品なんだろうな、と思い読み始めました。 この前読んだ『ボクが医者になるなんて』に共通点を感じる。 社会に挫折し、やがて生きる道を探し出す話。読了感がとてもいい。 会話がほとんど東北弁なのがのどかで、途中までは主人公の悲劇...
「昭和」や「戦後」を読むつもりで…というか、そんな感じの作品なんだろうな、と思い読み始めました。 この前読んだ『ボクが医者になるなんて』に共通点を感じる。 社会に挫折し、やがて生きる道を探し出す話。読了感がとてもいい。 会話がほとんど東北弁なのがのどかで、途中までは主人公の悲劇が喜劇的。 そのへんにたくましさも感じる。 人生、悲劇だけではないし、喜劇だけでもない…ということを押し付けがましく無く、感じさせてくれる作品でした。
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井上ひさ作品らしい、 優しさとユーモアにとんだ作品。 ちょっと後半うまくいきすぎだろって気もしなくはないけど。 ルビの方を追って読んでたら、 まったく意味が分からないのには参りました(苦笑)。
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東北地方出身者、それも三八上北地方とそのから南部・盛岡から釜石あたりの出身者の皆さん、ぜひ読んでみてください。 この方言の独特の抑揚、注意深く耳を傾けなければ聞き逃してしまうような、言葉を飲み込むような喋りを、耳で覚えている皆さん、ぜひ読んでみてください。 わたしは爆笑の連続...
東北地方出身者、それも三八上北地方とそのから南部・盛岡から釜石あたりの出身者の皆さん、ぜひ読んでみてください。 この方言の独特の抑揚、注意深く耳を傾けなければ聞き逃してしまうような、言葉を飲み込むような喋りを、耳で覚えている皆さん、ぜひ読んでみてください。 わたしは爆笑の連続でした。 浅田次郎の「壬生義士伝」ではずっと泣きっぱなし。 「花石物語」では笑いっぱなし。
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