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きつねのつき の商品レビュー

3.6

28件のお客様レビュー

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2023/06/15

うおおこれは…SFだったのか…!? すべてを描き切らず、ほんわかした父娘の日常のなかにほんのり不穏がある。 全容が掴みきれない、想像を掻き立てる不気味さがあって面白かった。

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2019/11/05

北野 勇作さんの本は初めてですが 西島大介さんが表紙だったので買いました。 河出文庫なのですがノリは角川ホラー。 生首が飛び交う、日本の下町に似た、仄暗い世界。 擬音が多くて一文が長くて癖になる文章です。 SFかというと、想像していたSFではないのですが、 周りがうるさい場所で読...

北野 勇作さんの本は初めてですが 西島大介さんが表紙だったので買いました。 河出文庫なのですがノリは角川ホラー。 生首が飛び交う、日本の下町に似た、仄暗い世界。 擬音が多くて一文が長くて癖になる文章です。 SFかというと、想像していたSFではないのですが、 周りがうるさい場所で読んでも没頭できるほどのしっかりした世界観が好きです。

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2019/09/28

2019.8.31市立図書館 哲学的に深いながらも一見ほんわかとしたかめシリーズで入門して、ひととおりよみおえて進んだこの作品はやさしげなタイトル&装丁とは裏腹に意外とハードというかおそろしげな内容になってきておどろきつつもひきこまれ、深刻ななにかが逸らかされごまかされ隠蔽された...

2019.8.31市立図書館 哲学的に深いながらも一見ほんわかとしたかめシリーズで入門して、ひととおりよみおえて進んだこの作品はやさしげなタイトル&装丁とは裏腹に意外とハードというかおそろしげな内容になってきておどろきつつもひきこまれ、深刻ななにかが逸らかされごまかされ隠蔽された夢と現実が入り混じったような世界で、変わり果てた姿になってしまったらしい妻(かあ)と忘れ形見の幼い娘・春子というささやかな家庭を守りつつ、日々成長するかわいらしい娘の姿と言動に慰め励まされながら生き延びる主人公(とお)に気持ちを重ね、最後は切ないようなやるせないような複雑な気持ちで読み終えた。読み終えてまた冒頭に戻って、「後ろめたい幸せを抱えて、私はここに立っている」の意味を考えてしまう。

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2019/06/14

文章としてはっきりと書かれてはいませんでしたが色々な象徴されているものを私の少ない知識をフル動員してなんとなく世界をつかみ始めてみると、3.11以降のいろいろなことを考えずにはいられませんでした。どのような状況でも普通に子供を育てたい。父親の愛情が痛いほど伝わってきます。母親の瞳...

文章としてはっきりと書かれてはいませんでしたが色々な象徴されているものを私の少ない知識をフル動員してなんとなく世界をつかみ始めてみると、3.11以降のいろいろなことを考えずにはいられませんでした。どのような状況でも普通に子供を育てたい。父親の愛情が痛いほど伝わってきます。母親の瞳が見えるラストシーンでは家族それぞれの愛情に衝撃を受けました。3人の行く澄んだ水と花びらの先に希望の光があることを信じたいと思います。

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2018/06/11
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どうしてSFとされるものの一部にはグロが付随するんだろうか? 半分ちょっと読んだところで、本書の書評の「震災後のナンタラカンタラ・・・」っていうのを見てしまって、もうその目でしか読めなくなってしまった。 実際は、震災後に作られた作品でなくてそれ以前にできていた作品のようですが(あとがきより)、そういうの無理やり関連付けるのやめようよ。

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2015/10/26
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ほんわー、な表紙 冒頭ヨモツヒラサカ的叙述 なのに、娘との日常が始まったので これから妻死ぬのかと思いきや、 妻、天井にひっついてたり、と、冒頭の後の話なのか、と。 なんか肉のかたまりっぽい、とか、 うわーな、世界。 こりゃすごい、小説ならでは。 以後、子ども館での夜の生首ケマリやら、 子どもロボット作成やら、よく考えると結構グロイエピソードと娘とのほのぼの会話があいまって なかなか不思議な世界観。 そのうちこれがどういう状況なのかが分かっていく。 最後はちょっとふろしきがたたみ切れてない感もあるものの、かといって、きっちりした仕舞いもなにかあわない気もするし、これはこれでいいんだろう、と思える。 いやあ、おもしろいもの読ませて頂きました。 北野さん、他のも是非読んでみたいものです。

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2015/09/07

 ジャンルとしては「ホラーSF」。ハートフルな育児もののような体裁だが、何も知らずに読み進めると痛い目に遭う。刊行日が2011年夏なので「3・11」にインスパイアされて一気呵成に書き下ろしたと思われる。世界観や物語展開はよくできているが、細部に滲み出る著者の小市民的保守主義的な思...

 ジャンルとしては「ホラーSF」。ハートフルな育児もののような体裁だが、何も知らずに読み進めると痛い目に遭う。刊行日が2011年夏なので「3・11」にインスパイアされて一気呵成に書き下ろしたと思われる。世界観や物語展開はよくできているが、細部に滲み出る著者の小市民的保守主義的な思想・趣向がどうも気に入らない。特に女性=母性というジェンダーバイアスを積極的に肯定しているのは問題(幼児の娘にまでバイアスを押し付けている)。

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2015/05/26

生物学的に汚染されている世界で維持されている日常を生きる父と幼い娘の物語。この世界の成り立ちと背景は明示されず、親子を取り巻く出来事から、少しずつ状況がわかるようになっていますが、最後まで全体像は明らかにはされません。と書くと本書の雰囲気は伝わりません。北野版、バイオ風味のジブリ...

生物学的に汚染されている世界で維持されている日常を生きる父と幼い娘の物語。この世界の成り立ちと背景は明示されず、親子を取り巻く出来事から、少しずつ状況がわかるようになっていますが、最後まで全体像は明らかにはされません。と書くと本書の雰囲気は伝わりません。北野版、バイオ風味のジブリ。女の子の可愛さと親の愛情がしんみりと伝わってきます。子供教室や保育園の描写は作者の実体験が活かされているように感じられ、これに不条理な被災を結びつける構想が素晴らしい。傑作です。

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2014/12/21

p.9「どうやら女の子というのは、子供のうちから自分より小さな子供の面倒をみたがるものらしい。じつに助かる。」 そんなわけねーだろ?!

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2013/10/22

3つになってよく話すようになった娘と手をつないで公園に行く。愛おしい日常の中の一日。 しかし保育園の先生たちは夜な夜な怖い遊びをしているし、妻は家の天井に張り付いて一体化しているし、この御近所は政府によって立ち入りが禁止されるエリアに指定されている。3年前のあの日、ここで試作中の...

3つになってよく話すようになった娘と手をつないで公園に行く。愛おしい日常の中の一日。 しかし保育園の先生たちは夜な夜な怖い遊びをしているし、妻は家の天井に張り付いて一体化しているし、この御近所は政府によって立ち入りが禁止されるエリアに指定されている。3年前のあの日、ここで試作中の兵器、いや環境にやさしいある種の自律エンジンが暴走、いや境界反転反応の過剰連鎖を起こして、肉の津波がすべてをのみこんだ――。 残酷な現実を膜につつんで見る、優しくて怖い夢の世界。あたかも、この世界にあんなひどい事が起こったことなどなく、日常がそのまま続いているかのように。 どちらが現実でどちらが夢なのか、判別がつかなくなるのが北野作品の昔からの特徴だった。でも今、2年半前のあの出来事を経て読むこのフィクションは、いっそう現実と見分けがつかなくなるようだ。だって、現実を見るのをやめたのは私たちの方なのだから。流れ出す毒が今も世界を侵し続けていることの方が終わりのあるフィクションであり、実際にはこれからも安全で安心で経済が成長しつづけてみんながハッピーな世の中が続いていくかのように。 幻のディズニーランドに退行することにした私たちが見る、死のように幸せな映像が、この本の世界であるのかもしれないのだった。

Posted byブクログ