放射能と理性 の商品レビュー
福島原発事故以前に書かれた原書を、事故後に訳したもの。 内容は豊富で説得的。低線量放射線の悪影響が過大に見積もられていることをよく示している。 反原発派には必読だと思う。
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放射線による影響を楽観視する人と悲観的に見る人を比べると、前者のほうが科学的根拠に基づいている場合が多い。
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※このレビューにはネタバレを含みます
・放射能による人体への影響は線型(LNT,閾値なし線形モデル)ではない ・ある程度の被曝なら人間の自然治癒能力により回復するため影響はない という主張があり,根拠は広島・長崎の被爆者データ,放射線治療からである. 急性被曝による被曝閾値は100mSV.慢性被曝は100mSV/month.生涯線量は5000mSV. →放射性物質を体内に吸収した時の慢性被曝がどうなるのかをもう少し知りたかった. 経済,コスト,環境を両立するためには原子力は不可欠. →火力発電の進歩や天然ガスについての議論も合わせて必要だと思う. 最終的には,原子力に対する正しい知識とリスクに対する考え方を含めた質の高い教育を行うことが長期的には最も重要である.
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瓦礫処理の問題から、放射線について知りたくてこの本を読んだ。 原発問題がなかった場合、放射線の被曝はどのくらいか? 本書によると自然環境における年間の平均被曝量2,7ミリシーベルト。 医療現場では、レントゲンのX線撮影1回0,02ミリシーベルト。CTスキャン1回1~2ミリシー...
瓦礫処理の問題から、放射線について知りたくてこの本を読んだ。 原発問題がなかった場合、放射線の被曝はどのくらいか? 本書によると自然環境における年間の平均被曝量2,7ミリシーベルト。 医療現場では、レントゲンのX線撮影1回0,02ミリシーベルト。CTスキャン1回1~2ミリシーベルト。 放射線治療では、2~3週間の間に3万ミリシーベルト。 太陽は、原子力エネルギーを燃料にしていて、ぽかぽかと暖かい日光も放射線であるという。 放射線は、全てが健康に悪であると思い込み、しかも事故がなければ0ミリシーベルトと思い込んでいたが、実際には医療で使い、自然界にもある。 喫煙やアルコールや不摂生の方が、放射線より数倍の発ガンリスクが高いという。 そのうえで「放射線について安全を求めた結果、ほかの領域でもっと大きなリスクが発生してもいいのか?」という本書のなかでもでてくる問いを、瓦礫処理の問題では考えるべきだと思う。
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福島第一原発の事故以来、人々は放射能や放射線に対して極めて敏感に反応する。 が、しかし放射能や放射線に対して我々は何を知っているのだろうか。 よく論じられるように、人はよくわからないリスクに対しては過剰に危険を抱く。冷静になれば、放射線障害によって死ぬリスクに比べ自動車事故で死ぬ...
福島第一原発の事故以来、人々は放射能や放射線に対して極めて敏感に反応する。 が、しかし放射能や放射線に対して我々は何を知っているのだろうか。 よく論じられるように、人はよくわからないリスクに対しては過剰に危険を抱く。冷静になれば、放射線障害によって死ぬリスクに比べ自動車事故で死ぬ確率の方がよっぽど高いのですが。 そうはいっても、福島第一原発の事故によって環境へ放射性物質が拡散し、通常よりも高い線量となっているのは確かである。そして、どこぞの県の野菜から基準値以上の放射線量が測定されたので出荷を自粛しなければいけないということ、およびその県への風評被害が報道されている。 しかしながら、人体への被曝量と食品の含有量の線量値はどのように決定されているのか、ご存知の方は一体どれくらいいるのであろうか。 本書の論点は正にそこである。つまり、 ①放射能に対するリスクの大きさをきちんと把握する必要があるということ ②被曝量の設定値には大きな保守性が含まれているということ である。 ①に対しては、筆者は実際の安全性と外見上の安全性はことなるということを指摘している。 実際の安全性がある程度担保されていれば、残りは外見上の安全性、つまり一般の人々にどのように説明していくかが問題となる。 福島第一原発の事故は想定の甘さにあったことが原因の一つであることは議論の余地はないが、事故時からの放射性物質の放出量で一般の人々がこれだけ恐怖することは正に、外見上の安全性について教育がなされていなかったということであろう。 ②については、少し専門的になってしまうのであるが、放射線による人体への影響はしきい値なしの線形モデルというモデルが使用される。 これはIAEAが設定している値であるが、これは1970年頃に十分に科学的な証拠がないときに数学的に扱いやすいということでしきい値なしの線形モデルが使用されたことが経緯となっている。 現在、科学的な証拠が揃いつつありしきい値なしの線形モデルは大幅に安全側であるということがわかっている(参考に、筆者は年間100mSvでも問題ないということを述べている)。 本書を読めば、放射線に対する理解が多少なりとも深まると思う。 福島第一原発の事故に鑑み、原子力発電を辞めるべきであるということが叫ばれているが、一度冷静になって科学的な論拠に依って議論して欲しいと願っている。
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著者は月100msvまで許容するべきだと説く。 その基準にすることは政治的には不可能だろうが 様々なデータを駆使して客観的に論じているので 科学的な根拠がある。 意味不明に放射能汚染の恐怖を煽っているような 本は読まずにこれを読むことをオススメする。
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放射能はかなり安全と言い切っていて,かなり刺戟的な本。なんと月間100mSvまでOKだとか。年間1mSvと三桁も違う!今の規制は厳しすぎる。 現状の規制が厳しいってのは確かにそう思うけど,毎月100mSv浴びても大丈夫ってすごいよな…。そんなに浴びられるところってそうないよね...
放射能はかなり安全と言い切っていて,かなり刺戟的な本。なんと月間100mSvまでOKだとか。年間1mSvと三桁も違う!今の規制は厳しすぎる。 現状の規制が厳しいってのは確かにそう思うけど,毎月100mSv浴びても大丈夫ってすごいよな…。そんなに浴びられるところってそうないよね。もし本当なら,避難しなくてもよかったみたいなことになっちゃう。 低線量被曝では,どんなに低線量でも発癌リスクは被曝量に比例すると仮定して,放射線防護を行なうことになっている。このLNTモデルが全然成り立たないと著者は主張する。100mSv以下の線量では,発癌リスクの増大が確認できないのに,安全側に考えて比例とするのはコスト高を招く。 著者は,冷戦期を通じて,一般市民には放射能の恐怖が意図的に植え付けられてきたと言う。長年の研究で放射線の危険がよくわかってきても,厳しい基準を変えることはなかった。その結果,原子力や放射線の利用が過度に抑制されている。 放射線の危険性より地球温暖化の方が深刻で,原子力発電をもっと推進する必要があると主張。それに,現在は沢山のエネルギーをつかって,食品を冷蔵保存しているが,放射線照射によって長期保存を可能にすることができる。人々の放射能アレルギーが,これを妨げている。 生物は,自然放射線のある環境で進化を遂げてきており,低線量の放射線による損傷は,時間がたてば回復する。そのため,被曝線量と発癌率は比例せず,発癌率が0となる閾値があるはず。また,累積では同じ線量でも,長い時間をかけて低い線量率で被曝する方が,修復が追いつくから安全。 本書では献血の例を挙げて説明している。人間一人の血の量は5ℓほど。一度に5ℓ血を抜けば死んでしまうが,長い時間をかけてであれば命に別条はない。集団線量(man-Sv)によるリスク評価を献血にあてはめれば,献血総量5ℓ毎に人が一人死ぬことになるが,これもおかしい。 このおかしな結果は,どれもLNT仮説に由来する。線形が成り立たなければ,リスクの勘定を足し上げることはできない。そもそも100mSvを超える被曝で癌が増えるという疫学的結果は,広島長崎の被曝者の追跡調査から得られたもの。これは単回被曝であって,長期にわたる被曝でない。 放射線治療では,癌細胞に対して大量の放射線を浴びせるが,その際正常な組織にも,かなり多くの被曝がある。線量-損傷曲線が線形であるならば,正常な組織も甚大なダメージを受けるはずだが,そうなってはいない。この非線形性をうまく利用して,放射線治療は行なわれている。 著者は,結論として,単回被曝は100mSv,慢性被曝は月間100mSv,生涯累積は5000mSvを新基準に推奨(p.256)。累積線量は,蛍光剤に使っていた放射性物質による時計職人の内部被曝のデータが参考になる。職人には筆先をなめる習慣があり,骨肉腫が発生していた。 …いや,でも月間100mSvはちょっと多すぎるよね。でも著者の出したこの結論を完全に否定できるエビデンスってあるんだろうか。あったら見たいな。本書は何年か前に書かれた本で,邦訳は最近。福島第一原発の事故についても巻末で触れられている。
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※このレビューにはネタバレを含みます
「放射線による障害は、あたる放射線の量がある一定量を超えないとでてこない(閾値説)」に基づいて書かれた本。これだけ読むとそれで納得させられますが、世の中にはこの本が取り上げない観察結果(低線量の被曝でも健康障害があったように見える)もあります。放射性廃棄物と二酸化炭素とどちらが環境に優しくないのかという議論は面白かったけど、根拠となるデータの信頼性が担保されないので判断できない。でも、この問題はむしろ、「放射性物質がばらまかれて、ヒトが少し早く癌になって死ぬようになった代わりに温暖化は避けられた世界と、原発をあきらめた結果、温暖化がとめられず、すべての生物が住めなくなるかもしれない世界のどちらを選ぶのか」と問うべきだったのではないかと思いました(難しい問題です)。
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オックスフォード大学名誉教授。専門は素粒子物理学で放射線医学やその他用途への応用に関する著書あり。 炭酸ガスの放出と原子力発電所の二者択一という枠組みに議論を限定していること、第1章のはしりで連合軍による長崎広島への原子力爆弾の投下は日本への地上侵攻を避けることで敵味方の双方での...
オックスフォード大学名誉教授。専門は素粒子物理学で放射線医学やその他用途への応用に関する著書あり。 炭酸ガスの放出と原子力発電所の二者択一という枠組みに議論を限定していること、第1章のはしりで連合軍による長崎広島への原子力爆弾の投下は日本への地上侵攻を避けることで敵味方の双方での膨大な人的損害を防ぐことができたと肯定的に評価している点が気に入らないが、本書の価値はそのマイナスポイントをカバーするに余りある。 核分裂反応と核の崩壊の違いについての説明はわかりやすい。自然界で自然に核分裂するのはウラン235とウラン238のみだが、崩壊はいろんな原子が起こす。人体からも常に崩壊による放射線が放出されている。イギリス人の物理学者に、「福島とチェルノブイリとのあいだには天と地ほどの差がある」と断言されると説得力がある。チェルノブイリでは原子炉が停止せず、核分裂反応が暴走したが、福島は地震を感知して原子炉は設計通りに自動停止し核分裂反応は完全に停止した。ただ、核分裂反応停止後も継続する多大な崩壊熱を冷却しきれずに炉心が溶融してしまった。 やっぱりそうだ。一般市民に理解不可能な「メルトダウン」などというオドロオドロシイ言葉でひとくくりにして不安をあおるマスコミは何だかおかしい。 東北では津波で1万人以上が犠牲になったのに、一人の犠牲者も出ていない放射線にこれほど騒ぐアンバランスも筆者は素直に批判している。皮肉を込めて学者らしく、「放射線に関する安全規制の失敗で死んだ人はいないのに対し、津波の影響に関する一般的な規制の失敗は1万人以上の人命を奪った。」と比較する。 LNT仮説の不適切さを説明するたとえ話として、献血5リットルごとに人間がひとりづつ死ぬという解説はわかりやすい。チェルノブイリや長崎広島の被爆者を対象とした研究結果の解説も丁寧である。
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低レベルの放射線被曝であれば、月に100ミリシーベルトであっても大丈夫だと主張して話題になった本を読んでみた。 アリソンの主張する基準は、急性の場合は100ミリシーベルト、低線量の被曝については、月100ミリシーベルト、生涯で5シーベルトである。論拠は放射線治療の経験、放射線生物...
低レベルの放射線被曝であれば、月に100ミリシーベルトであっても大丈夫だと主張して話題になった本を読んでみた。 アリソンの主張する基準は、急性の場合は100ミリシーベルト、低線量の被曝については、月100ミリシーベルト、生涯で5シーベルトである。論拠は放射線治療の経験、放射線生物学、急性被曝者と慢性被曝者の長期的な医療記録である。1シーベルト被曝すると5%癌で死ぬ人が増えるというデータは長崎、広島の被曝者の調査から得られているが、アリソンは人体の細胞レベルの損傷修復機能を評価して、このような基準を提唱している。 この本を読んでいるとアリソンにとっては、地球温暖化が大きな危機でそのためには原子力発電を化石燃料の代替として使うことを促進するべきだという理屈が背景にある。また、核燃料廃棄物は、量としてはそれほど多くなく、十分に廃棄可能だと主張している。 科学的な真理とはなにかと考えると、少なくとも専門家集団での合意が不可欠であるが、この基準が直ちに合意されることはないであろう。(たとえば、先日紹介した辛坊治郎「放射能の真実」)
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