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紙の民 の商品レビュー

3.9

28件のお客様レビュー

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2024/11/07

冒頭を読み進めている時点では宗教についてあまりにも無知だから面白さを理解できるだろうかと不安だったのだけれど、紙面の世界が広がった瞬間、まさしく紙面上に世界が展開した瞬間に、私の無知などなんの影響もないくらいこの本はすばらしさに満ちているという確信を得た。全ての糸が絡み合うように...

冒頭を読み進めている時点では宗教についてあまりにも無知だから面白さを理解できるだろうかと不安だったのだけれど、紙面の世界が広がった瞬間、まさしく紙面上に世界が展開した瞬間に、私の無知などなんの影響もないくらいこの本はすばらしさに満ちているという確信を得た。全ての糸が絡み合うように、個々の世界が重なり合っていく様子、登場人物たちの痛みや戦いと、身勝手な作者、それを見つめる読者の罪、没頭するほどに読むことへの罪悪感が募っていくが折々で描かれるユーモラスな描写やシーンによって思わず笑ってしまう部分も多く、これほどまでに心が騒がしい読書は初めてだったかもしれない。 出会えて良かった。

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2024/07/22

スペイン語圏、それも中南米で書かれた小説らしい匂いが全編に漂っている。 ロシア小説な匂い、フランス小説な匂い、イタリア小説な匂いがそれぞれあるように、中南米な匂い。各言語固有の文体がそうさせるのか、訳者が異なったぐらいでは地域柄は変わらない。どんな匂いなんだと問われたら窮するなぁ...

スペイン語圏、それも中南米で書かれた小説らしい匂いが全編に漂っている。 ロシア小説な匂い、フランス小説な匂い、イタリア小説な匂いがそれぞれあるように、中南米な匂い。各言語固有の文体がそうさせるのか、訳者が異なったぐらいでは地域柄は変わらない。どんな匂いなんだと問われたら窮するなぁと考えて、本作を読み通しながら鼻をひくつかせ言葉を探したが、とどのつまりわからない。遠く白熱する太陽のもと、砂埃と冷えた汗でうっすら覆われた肌のような…? なんて、言ったそばからあやしい。じゃロシアは? イタリアは? フランスって? 矢継ぎ早に問いただされたらアーアーと喚いて話をご破産にするか、えへえへ笑って誤魔化すかしてしまう。でも、たしかにあると思うんです、匂い。冷酷な審判をくだした会場を振り返りながら「それでも…」と言ったとされるガリレオと同じ気持ち。 ところで、日本の小説の匂いって。

Posted byブクログ

2023/08/25

ズバリ、比較的に意味が分からないでしょう。と言わざるを得ないのではないか。 いやしかしここまで意味不明だと頑張って読もうと思うのが読書に身を捧げた男の末路ではないか。 そんなわけだから意味が分からないなりにも読み進んでいって分かったのは大体において意味不明な文学を著す男とは結局女...

ズバリ、比較的に意味が分からないでしょう。と言わざるを得ないのではないか。 いやしかしここまで意味不明だと頑張って読もうと思うのが読書に身を捧げた男の末路ではないか。 そんなわけだから意味が分からないなりにも読み進んでいって分かったのは大体において意味不明な文学を著す男とは結局女の子のことばっか考えててしょうもないけど3次元は大変だから二次元ていうか紙ていうかエロ本とか読んで痛い目にあっているよということではないか。だって紙でできた女の子って言われたら。ねぇ。 そしてオッサンは夜尿に悩むという。切ねぇ。

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2023/05/09

悲しくて胸がぎゅっと詰まるような物語でした。 愛する人を失って葛藤し、忘れるために痛みを伴う方法を選ぶ人達は見ていて正直辛かった……。 けれど、巧みな心理描写や、詩的なレトリック、奇抜なレイアウトにより、著者の独特な世界観に没入させられました。 また物語の結末も色々考察ができて面...

悲しくて胸がぎゅっと詰まるような物語でした。 愛する人を失って葛藤し、忘れるために痛みを伴う方法を選ぶ人達は見ていて正直辛かった……。 けれど、巧みな心理描写や、詩的なレトリック、奇抜なレイアウトにより、著者の独特な世界観に没入させられました。 また物語の結末も色々考察ができて面白かったです。 半年前に読んだけど、何年経っても記憶に残る本だと思います。 この本が好きな人は、紙葉の家もオススメします。

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2020/05/03

悲しみに続編は存在しないのである。 土星=作者 から独立すべく立ち上がる登場人物たち。メタフィクション。実験的な技巧が凝らされていてわくわくする。 全編通して物悲しい。 ラテンアメリカの文化に明るければもう少し面白さが分かっただろうか。 訳するの大変だっただろうなと思...

悲しみに続編は存在しないのである。 土星=作者 から独立すべく立ち上がる登場人物たち。メタフィクション。実験的な技巧が凝らされていてわくわくする。 全編通して物悲しい。 ラテンアメリカの文化に明るければもう少し面白さが分かっただろうか。 訳するの大変だっただろうなと思いながら読む。

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2019/03/24

妻に見捨てられた男は新しい職と生活を求め、 小学生の娘を連れてカリフォルニアへ。 カーネーションを収穫する仕事に就き、 地元の荒くれ――と呼ぶには随分おとなしい、 若者のグループとも親しくなったが、 常に何ものかに監視されている気がして落ち着かない。 ある日「敵」の存在に気づいた...

妻に見捨てられた男は新しい職と生活を求め、 小学生の娘を連れてカリフォルニアへ。 カーネーションを収穫する仕事に就き、 地元の荒くれ――と呼ぶには随分おとなしい、 若者のグループとも親しくなったが、 常に何ものかに監視されている気がして落ち着かない。 ある日「敵」の存在に気づいた彼は、 娘や若い仲間たちと共に戦闘を開始した。 敵の名は「土星」……。 という、荒唐無稽な「戦争」と「紙製人間」を巡る奇譚 ――かと思いきや、 実は登場人物 vs 作者という一層珍妙な物語だった…… ……のだけれども。 期待値が高過ぎたかなぁ。 途中まではドキドキしながら読めて、とても楽しかったが、 お父っつぁんの「敵」の正体が判明して以降、しょんぼり。 女にフラれ続けてクサクサした男の八つ当たりみたいで(笑)。 創作者が神の視座を有するのは当然だし、 それ自体をテーマに長編を物する試みも面白いとは思うが、 一編の小説として深みは感じられなかった。 多分、肝心な「土星」こと「創造主サル」の人物造形が 好みではなかったせいで、白けてしまったのだろう。 時間を置いて読み返したら印象が変わるのかな……。

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2017/09/17

なんの情報も持たず読み始めて20~30ページも読んだころ、作者を確認。ガルシア=マルケスじゃないよね? 作者はメキシコの人で、三年間にわたって『百年の孤独』を読みふけったのだそうだ。 なるほど。 紙でできた人間。 人と同じように行動するが、水に濡れれば柔かくぼろぼろになり、イン...

なんの情報も持たず読み始めて20~30ページも読んだころ、作者を確認。ガルシア=マルケスじゃないよね? 作者はメキシコの人で、三年間にわたって『百年の孤独』を読みふけったのだそうだ。 なるほど。 紙でできた人間。 人と同じように行動するが、水に濡れれば柔かくぼろぼろになり、インクは溶けて滲み、端はひとの体を傷つける。 妻に逃げられた男はある日、自分の生活や思考が何者かに上からのぞかれていることに気づく。 のぞかれ監視されているだけではなく、運命まで握られていることに反発した男は、上空にある存在、「土星」に戦いを挑む。 登場人物の多くが「痛み」や「悲しみ」を抱え、それに耽溺している。 ライム。火傷。蜜蜂。 決して自分を幸せにしないものにすがり、それを断ち切ることができない。 執着し、捉われることによって身動きができない、諦念。 ああ、何をどのように書いてもそれは本質ではない。 本を読むということは作品世界を傍観者のように眺めるだけではなく、自分自身を作品の中に晒し、己の「痛み」や「悲しみ」そして「執着」に己が傷つけられることもある。 紙の民は読者の私を包み込みあまやかになぐさめてくれることもあるが、鋭く見えない傷をつけることもある。 アメリカ国内で書かれた作品なのに、ねっとりと濃密な空気感が中南米を思わせる。 時間も空間もシャッフルされた中で、キリスト教やタイガーマスクことサヤマサトルまでも同じ重さで物語に関わり、同化していく。 “悲しみに続編は存在しないのである。”

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2015/04/20

登場人物が作者に戦いを挑む。作者は土星として登場する。土星vsメキシコ系移民。男たちはみな女に振られた過去を持つ。みな後悔をこじらせている。切なさと情けなさで溢れる物語。

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2014/12/17

奇妙奇天烈摩訶不思議出前迅速落書無用! でもホンワカパッパはしない。 『百年の孤独』を読み、マジックリアリズムが解った気がしている方にオススメ。ガルシア・マルケスは全然正当派だったんだなーとしみじみ思いました。 電子書籍が普及している今こそ、こちらの紙媒体の【遊び】を手にとっ...

奇妙奇天烈摩訶不思議出前迅速落書無用! でもホンワカパッパはしない。 『百年の孤独』を読み、マジックリアリズムが解った気がしている方にオススメ。ガルシア・マルケスは全然正当派だったんだなーとしみじみ思いました。 電子書籍が普及している今こそ、こちらの紙媒体の【遊び】を手にとって、ページをめくり、目で愉しんでいただきたいです。 星の評価なんて私なぞに出来るもんか!です。訳わかんねーもんw 二次元時代の現代アートですね。

Posted byブクログ

2014/11/01
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] 上空から見下ろす作者“土星”の存在に気づき、自由意志を求めて立ち上がった登場人物たち。 ページの上で繰り広げられる奇想天外な「対土星戦争」の行方は? メキシコ出身の鬼才による鮮烈な処女小説。 [ 目次 ] [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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