黄金の腕 の商品レビュー
やっと手に入れた40年前の古書をゆっくり味わうべく 読み含めるようにして読了。 シカゴ、冬、場末のバー....好みの情景設定に心躍る。 読み始めてハッピーエンドで終わる類で無いことが即座に分かるが それが逆に大いに興味をそそる。 私に本書を推薦してくれた藤井氏の言葉を借りれば 「...
やっと手に入れた40年前の古書をゆっくり味わうべく 読み含めるようにして読了。 シカゴ、冬、場末のバー....好みの情景設定に心躍る。 読み始めてハッピーエンドで終わる類で無いことが即座に分かるが それが逆に大いに興味をそそる。 私に本書を推薦してくれた藤井氏の言葉を借りれば 「あのヘミングウェイが「これ以上の小説は書けない」と絶賛し、ドン・ウィンズロウはこの小説の主人公の名前を取って「フランキー・マシーンの冬」を書いた。かの寺山修司が「最も影響を受けた小説」といい、阿佐田哲也(色川武大)には同じ「黄金の腕」という短編小説がある。レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」と表裏をなす傑作だ。マッチョなヘミングウェイ、スタイリッシュなチャンドラーには絶対に書けない小説だろう。」。 まだ余韻に浸っていたい脳内が次なる読書を躊躇させる一冊。
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あのヘミングウェイが「これ以上の小説は書けない」と絶賛し、ドン・ウィンズロウはこの小説の主人公の名前を取って「フランキー・マシーンの冬」を書いた。かの寺山修司が「最も影響を受けた小説」といい、阿佐田哲也(色川武大)には同じ「黄金の腕」という短編小説がある。本書は紛れもないハードボ...
あのヘミングウェイが「これ以上の小説は書けない」と絶賛し、ドン・ウィンズロウはこの小説の主人公の名前を取って「フランキー・マシーンの冬」を書いた。かの寺山修司が「最も影響を受けた小説」といい、阿佐田哲也(色川武大)には同じ「黄金の腕」という短編小説がある。本書は紛れもないハードボイルドの金字塔であり、レイモンド・チャンドラーの「長いお別れ」と表裏をなす傑作だ。チャンドラーは「卑しき街を誇り高く行く騎士」をその格調の高さで書き上げた。オルグレンは「卑しき街に埋もれる敗者」を詩的に描いて、これがまことに秀逸なのである。這い上がろうとして這い上がれず、やり直そうとして挫けてしまう。希望と失望が交互に訪れ、希望の絶対値がじわじわと切り下がり、最後に絶望に至る。そんな敗者に対する優しい視線はアウトローならではのもので、マッチョなヘミングウェイ、スタイリッシュなチャンドラーには絶対に書けない小説だろう。何度読んでも新しい発見があり、飽きることがない。ネルソン・オルグレンの価値はもっと見直されてもいいのではないかと思う。
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