国力とは何か の商品レビュー
良い意味でヤバイ本である。 下手な経済学の教科書より経済のことが把握できる。 自分より10歳年上だが、10年後に自分がこれだけキレのある論理と文章を書けるか・・・かなり自信ない。 中野剛志氏の著書は3冊読了しているが、この本こそが彼の本領であろう。 経済ナショナリズムという立場か...
良い意味でヤバイ本である。 下手な経済学の教科書より経済のことが把握できる。 自分より10歳年上だが、10年後に自分がこれだけキレのある論理と文章を書けるか・・・かなり自信ない。 中野剛志氏の著書は3冊読了しているが、この本こそが彼の本領であろう。 経済ナショナリズムという立場からの現状分析は新鮮で、クルーグマンらの新自由主義と比較すると一層価値あるものだと感じられる。 前財務相の与謝野さんがクルーグマンとの対談で「日本の政策担当者は皆が先生の本を読んでいます」とかなんとか持ち上げていたが、中野氏の本も読んで頂きたいものだ。 本書ではデータや数学的な分析が割愛されているため、かえって理路整然と見解が述べられ、読み進めやすくなっている。 テクニカルタームもほとんど使用されていないので、経済学を学んでいない人にもオススメできる。 むしろ是非ススメて欲しい一冊である。
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今(2011/11)、話題の人の著書。メディアに露出されているのを目にしたとき、この人が何を考えているのか知りたくなり、期待を持って本書を手にした。本書は経済ナショナリズムとはなにか、についての本である。ナショナリズム、愛国心、これらの言葉にアレルギーを示す人は多い。しかしながら...
今(2011/11)、話題の人の著書。メディアに露出されているのを目にしたとき、この人が何を考えているのか知りたくなり、期待を持って本書を手にした。本書は経済ナショナリズムとはなにか、についての本である。ナショナリズム、愛国心、これらの言葉にアレルギーを示す人は多い。しかしながら、本書で言う経済ナショナリズムとは、決して過度、過激なものでなく、我々の生活から生まれる力、国力であることが示されている。デフレ、TPPなど、経済に関する様々な現代の問題を見るうえで、国力という切り口は非常に強力な視点であると思った。
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モノと情報が、国境を超えて移動を続ける事象であるグローバル化が顕在化している現代において、国家とはもはやただの枠組みにすぎないという議論が活発である。それを示す具体的な例として、多国籍企業は国家の意思とは関係なく、自らの利益最大化のために市場を求める主体であるし、NGOもまた自ら...
モノと情報が、国境を超えて移動を続ける事象であるグローバル化が顕在化している現代において、国家とはもはやただの枠組みにすぎないという議論が活発である。それを示す具体的な例として、多国籍企業は国家の意思とは関係なく、自らの利益最大化のために市場を求める主体であるし、NGOもまた自らの理念によって、国家の思惑に左右されずに活動するのである。従来は国際政治における最高位の主体として考えられてきた国家というアクターは、このような動きが活発になっている現代では、もはやただの枠組みでしかないように考えることはごく自然である。 一方で、グローバル化が様々な問題を引き起こしてきたのは紛れもない事実である。2008年のリーマンショックのように、グローバル化が進み、国家同市の境界線がなくなった現代世界では、ある一カ国における限界突破は、瞬く間にあらゆる国に波及するのである。このような問題点が指摘される中で、私たちは問題の解決方法をこれまで通り、グローバルな分野に求めるべきなのだろうか。この点において、筆者はナショナリズムを主張する。 筆者の主張するナショナリズムは、「ネイション」を理念化したものである。ネイションとは、「歴史、制度、文化、生活様式や行動様式を共有する政治共同体」(p228)であり、ナショナリズムは人々を統合し、ネイション全体の長期的発展のためにそれを動員するのである。ネイションは経済発展によって自らを強化することができ、この過程で生み出される政治力と経済力が「国力」となる。この国力の強化を目指すことが「経済ナショナリズム」であると筆者は定義する。 この経済ナショナリズムを高めるのは、「ネイションの能力」を目的とする。ネイションの能力とはネイション自身が何かを行う能力である。この点、グローバル化の特徴の一つと言えるような、他国市場の搾取とは異なる。筆者によって、後者は「ステイトの支配力」として、ネイションの能力=国力と分けて分類される。 グローバル化の中では、国家は自らが資本主義化し(国家資本主義)、富の獲得競争を行う。これは前述の議論でいう「ステイトの支配力」であり、筆者がいうナショナリズムとは異なる。この点において、筆者が主張する経済ナショナリズムは、従来のナショナリズムとは異なり、他国を侵略する際のイデオロギーではないため、協調の可能性は十分あり得るのである。 筆者はこのように定義した上で、国力を高めるための政策として、日本はまず外に対する防衛線をはることや、ケインズ主義的政策によってデフレから脱却することを主張している。
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新書サイズでとても読み易い。理想の『国力』とはどのようなものか、分かり易く解説してくれている。 現在EUが陥っている危機や、東日本大震災からの復興に対してこれから日本はどのようにして立ち向かっていくべきなのか等、現実の事情と照らし合わせてくれているので飽きずに読むことが出来た...
新書サイズでとても読み易い。理想の『国力』とはどのようなものか、分かり易く解説してくれている。 現在EUが陥っている危機や、東日本大震災からの復興に対してこれから日本はどのようにして立ち向かっていくべきなのか等、現実の事情と照らし合わせてくれているので飽きずに読むことが出来た。また、今までいかに言葉のイメージだけで物事を捉えていたかを思い知らされた気がする。当たり前ではあるが、構造改革とかグローバル化とかが必ずしもその国の国民にとって良いことではない。グローバル化した企業と国民の利益は、既に大きく乖離し始めているという構造や、貿易における保護主義の実態(単に既得利益を守るだけでなく、デフレ時や世界不況時には国内産業や国民経済を守る有効な措置になる)、また日本における財政破綻の懸念は杞憂であることなどを知ることができ、大変勉強になった。「世界の流れだから」という安易な気持ちでグローバル化を看過する前に、これからは自分の中で一呼吸おけそうである。 国の経済を成長させるのは孤独な個人の利益追求ではなく、社会に属し共同体にアイデンティティを持つ動物としての人間の活動によるものである。自らも、微力ながらこの国における『国力』の一部として、まずは東日本大震災で損なった様々なものを復興する力の一端になれることをこれからは望みたい。
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(111107) 国が積極的に動くことも重要であるというお話。「経済ナショナリズム」ってのは、若干社会主義のようなイデオロギーかとも思われるが、そういうわけではないらしく、ネイション(国民)の利益或いはネイションの能力向上を第一に考えたものであるようで。。。かなり抽象的なものな気...
(111107) 国が積極的に動くことも重要であるというお話。「経済ナショナリズム」ってのは、若干社会主義のようなイデオロギーかとも思われるが、そういうわけではないらしく、ネイション(国民)の利益或いはネイションの能力向上を第一に考えたものであるようで。。。かなり抽象的なものな気がする。
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なんのきっかけで購入したか失念。 中野さんは、経済産業省を経て、現在、京都大学の先生。 読み終わって、ちょっと悩む。 国民の利益や国家の必要性を正面から説明し、東日本大震災にももっと国家が前面にでるべきだという主張は、魅力的。 経済自由主義、グローバリズ...
なんのきっかけで購入したか失念。 中野さんは、経済産業省を経て、現在、京都大学の先生。 読み終わって、ちょっと悩む。 国民の利益や国家の必要性を正面から説明し、東日本大震災にももっと国家が前面にでるべきだという主張は、魅力的。 経済自由主義、グローバリズムもそれがこれまで国民の富の増加と幸福の実現に比較的つながってきた、ましな制度だと思うから、自分はいままでも賛成してきた。 中野さんのいう「経済ナショナリズム」は、究極的に国民の利益を考えるべきという主張には同感できるが、その手法でうまく経済運営できるのか、という実践論について、不安が残る。 中野さんは国家の政策として、経済自由主義が軽視してきた、「産業政策」「技術政策」「国土政策」「環境政策」「農業政策」にもっと国が国力をかけて資源を配置すべきという。(p147から) そのとおりだと思うが、経済自由主義者からみると、「産業政策でも技術政策でも、国が関与したものは何もうまくいっていない、むしろ、民間が国に反旗をひるがえした自動車産業などでうまくいっているじゃないか」と、実態論で批判している。 このあたりの議論をもう少し、自分でも詰めてみたい。中野氏の本ももう少し読んでみたい。 もしかしたら、国家政策として大化けするかも。
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頭がよすぎるんですかね、この方。私には難しかった。もっとわかりやすく書いてもらえたらなぁ・・・ ネイションンとステイツの違いは、とか言われても(笑
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まったく納得いかないことがあった。 答えは簡単だ。 ステイツとネーションの違いだ。 これを混同すると、国の理解が複雑になるというほどこの二つは違う。 日本、アメリカ、中国、EUそれぞれに、ステイツとネーションがいる。 日本はやれる。 やらなければならない。 それを強く意識すること...
まったく納得いかないことがあった。 答えは簡単だ。 ステイツとネーションの違いだ。 これを混同すると、国の理解が複雑になるというほどこの二つは違う。 日本、アメリカ、中国、EUそれぞれに、ステイツとネーションがいる。 日本はやれる。 やらなければならない。 それを強く意識することができる本だ。
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ややアカデミックな経済思想の本ですが、述べていることは決して難解ではありません。国民の団結が巨大な力を生み出す経済ナショナリズムの重要性について書かれているだけです。 ではなぜ本書は書かれたか?というと、新自由主義やそこから生み出されたグローバリズム・自由貿易至上主義などの国家...
ややアカデミックな経済思想の本ですが、述べていることは決して難解ではありません。国民の団結が巨大な力を生み出す経済ナショナリズムの重要性について書かれているだけです。 ではなぜ本書は書かれたか?というと、新自由主義やそこから生み出されたグローバリズム・自由貿易至上主義などの国家の枠組を解体する方向のイデオロギーがいまだ一定の支持を得ているからで、特に日本では「グローバル化の時代だから」「今どき国益でもない」という言葉がかっこよく聞こえてしまう土壌がいまだ根強くあります。 要するに本書は「グローバル化の時代だから」という典型的な国家軽視の主張に対する全力の反論であると言えます。 個人的には、国際機関などの国家の枠組を超えて活動する機関が実は国家による信認を背景に成り立っているという指摘などは非常に面白かったです。 東日本大震災を経て国民の団結力が必要とされる現在、グローバリズムに代表されるイデオロギーに騙されないために教養として読んでおいて損はないと思います。
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アメリカの輸出の30%はサービス業。そのほとんどが金融、保険、ソフトなど。 オバマは財政改革に失敗した。次の選挙ではどうなるのだろうか。 日本は大震災で投資も減少した、これからどうなるのだろうか。 Nationという共同体を維持し、あるいは発展させるために、Nationの中で働い...
アメリカの輸出の30%はサービス業。そのほとんどが金融、保険、ソフトなど。 オバマは財政改革に失敗した。次の選挙ではどうなるのだろうか。 日本は大震災で投資も減少した、これからどうなるのだろうか。 Nationという共同体を維持し、あるいは発展させるために、Nationの中で働いている力が、国力の本質である。 国際連合は、子国際的組織であって、決してグローバルなものであはない。
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