国力とは何か の商品レビュー
ほんとうに地に足のついた理路整然とした論理で国力というものを分析した著作だ。 はじめに国家ありきで、民度の高い市民社会も国家というものがあればこそ共存できるという考え方。 新自由主義の弊害を乗り越えて経済ナショナリズムが今後日本で如何に発展していくか注意ぶかく政治を見守ってい...
ほんとうに地に足のついた理路整然とした論理で国力というものを分析した著作だ。 はじめに国家ありきで、民度の高い市民社会も国家というものがあればこそ共存できるという考え方。 新自由主義の弊害を乗り越えて経済ナショナリズムが今後日本で如何に発展していくか注意ぶかく政治を見守っていかねばならない。
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リーマン・ショック以降はグローバル化や新自由主義(市場原理主義)はもはや有効ではなく、国民国家の国力を重要視する経済ナショナリズムの有効性を説いている。ナショナリズムという言葉の毒抜きを含め、経済素人の私は面白く読んでしまった。
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この本の著者である中野氏は、昨年11月頃にTPPによる日本の影響を、テレビやネットで分り易く解説してくれていた人ですが、この本の内容は私にとっては難しい内容の部分が多かったです。 大震災や経済危機を乗り越えるためには、強い「国力」が必要だと述べていています。 また、内国債の債...
この本の著者である中野氏は、昨年11月頃にTPPによる日本の影響を、テレビやネットで分り易く解説してくれていた人ですが、この本の内容は私にとっては難しい内容の部分が多かったです。 大震災や経済危機を乗り越えるためには、強い「国力」が必要だと述べていています。 また、内国債の債権・債務関係は問題ないとしている点は中野氏以外の人も述べている点ですが、経済自由主義者たちが、「国民」という概念がなく、内国債と外国債の区別がないという点を指摘しているのは新しい観点(p190)だと思いました。 以下は気になったポイントです。 ・投資家は、国家が労働市場の規制を緩和しなければ、国内から海外へと投資するようになる、それを恐れる国家は、労働市場の規制を緩和する。国家がグローバル企業のために構造改革を実施する(p34) ・財界による公共投資批判は、実は、企業がデフレで得をするという事実を関係している(p39) ・需要は国民が全体として消費をすることで拡大するものなので、貧富の格差が大きく、国民の一部のみが豊かな国では、需要は拡大せずに経済成長も不可能(p44) ・サブプライム危機に対してアメリカは金融緩和を行ったが、その結果、新興国市場や商品市場にドルが流れ込んで、原油・食糧価格が上昇した(p53) ・アメリカ輸出の30%はサービス業で、ほとんどが銀行、保険、コンサル、ソフトウェア関連などの高学歴者によって担われる、15%の農業も集約的で雇用吸収力が弱いので、アメリカ輸出により恩恵を受ける人は一部の人間のみ(p58) ・オバマ改革の医療保険制度は、20の州政府から裁判所に訴えられている、フロリダでは違憲判決(p59) ・実は絶対王政は、近代民主政体よりも弱体であった、ルイ14世でさえ教会、都市、ギルドの特権に反して、既成の法律等を修正する権力を持っていなかった(p99) ・国債は、国内で消化される(自国民が購入する)内国債である場合は、その金利は国民の負担にならない、国債の償還金の支払先は国民だから(p187) ・政府の負債と私企業の負債の違いは、政府には通貨を発行することで債権者に支払いができる(p188) ・外国債は、国民から徴収された税金が国債の償還金として海外に流れるので、企業や個人の債務に近い(p189) ・ドルは基軸通貨の地位を失っても、依然として主要な国際通貨として流通する(p206) 2012年2月18日作成
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TPP亡国論の著者の本 小さい政府を志向しているものの危機に際した国家の役割はやはり重要であると震災でも実感させられた中で(ふがきなさは目立つが…)新自由主義の方向に突っ走るのはどうなんだ?と考えさせる一冊。 はっきり言えば普段「頼りない!」「関わらんといて!」とオカンに言っ...
TPP亡国論の著者の本 小さい政府を志向しているものの危機に際した国家の役割はやはり重要であると震災でも実感させられた中で(ふがきなさは目立つが…)新自由主義の方向に突っ走るのはどうなんだ?と考えさせる一冊。 はっきり言えば普段「頼りない!」「関わらんといて!」とオカンに言ってる割には「朝起こして朝飯作って!」と言ってる反抗期の子供みたいな状態が今の日本国民では? 上記の本よりも難解で何度か読まないと完全理解には至りそうもないのは自分のキャパの問題か… ただ、他の論者より「伝えようとしている」のでわかりやすいのは確か。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
とても為になりました。知識のない私でもわかりやすかったです。 グローバリゼーションといって、国境なき市場、自由市場がよしとされている現在において、国の介入は自由主義をおびやかすをいわれているが、それは間違い。国家という力をもって市場を開拓し、時には国の中の企業を守り・・・とグローバルの中の国力というのは大切だ、というのがこの本の内容です。とても納得できました。
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反TPPの旗手として注目を集めた中野剛志氏の既刊書の加筆・改訂版を読む。グローバル化によりネイションの能力が弱体化した世界中の国民国家はステイトの支配力を強め他国から富を収奪しようとする国家資本主義へと走ると。分かり易い納得の解説。
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TPP亡国論(http://booklog.jp/asin/4087205843)が面白かったので読むことを決めました。 日本の国益のためには経済学教育は海外のやり方の直輸入&翻訳的なやり方だけでは誤った意思決定を促しかねないな、という問題意識に応える議論だったのではないかと思...
TPP亡国論(http://booklog.jp/asin/4087205843)が面白かったので読むことを決めました。 日本の国益のためには経済学教育は海外のやり方の直輸入&翻訳的なやり方だけでは誤った意思決定を促しかねないな、という問題意識に応える議論だったのではないかと思います。 個人的には、自分がナショナリストと言われる所以に納得しました。。
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ナショナルとネイションとの違い。国力とは。国とは何か、何をすれば国家の力は上がるのかを考えさせる良書である。
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ネイションとステイトの違いを定義し、経済ナショナリズムについてわかりやすく解説。なぜ筆者が経済ナショナリズムを擁護しているのかがわかりやすく書かれている。 グローバル化と日本の発展を考えてどこかに矛盾があるのではないかと考えていた私には、こういう見方があったのかと納得されられると...
ネイションとステイトの違いを定義し、経済ナショナリズムについてわかりやすく解説。なぜ筆者が経済ナショナリズムを擁護しているのかがわかりやすく書かれている。 グローバル化と日本の発展を考えてどこかに矛盾があるのではないかと考えていた私には、こういう見方があったのかと納得されられるところがあった。 日本が長期的なビジョンを持って戦略を描いていけるか、誠に考えさせられる。
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本書を読み終わって、これは経済書でもあるのだろうが、世界経済の現状を鋭く分析し、日本が今後進むべき道を指し示した政治的イデオロギーの書でもあると驚嘆した。すごい本である。 本書はまず「危機に直面する世界」で、グローバル経済と経済危機について考察している。経済がグローバル化した...
本書を読み終わって、これは経済書でもあるのだろうが、世界経済の現状を鋭く分析し、日本が今後進むべき道を指し示した政治的イデオロギーの書でもあると驚嘆した。すごい本である。 本書はまず「危機に直面する世界」で、グローバル経済と経済危機について考察している。経済がグローバル化した世界では「国家が労働市場の規制を緩和しなければ、国内ではなく海外へと投資するようになってしまう。それを恐れる国家は・・・労働市場の規制を緩和し・・・賃金を引き下げたりできるように・・・構造改革を実施するようになる」と語る。そしてその構造改革は、必然的に労働賃金の低下を招き、デフレへとつながる。本書は、「グローバル経済」と「構造改革」とそれを裏打ちする「新自由主義思想」、その結果の「労働賃金の低下」と必然的に「デフレ」を招く等の諸関係を整合的かつ論理的に主張しており、それは説得力がある。 経済危機の背景である世界経済の「グローバルインバランス」についてもわかりやすく主張している。アメリカが過剰な消費で経常収支の赤字を積み上げ、東アジアの新興国と中東諸国が経常黒字を抱える世界レベルの経常収支不均衡の構造は、持続可能性がない構造だったというのだ。そうであるならば2008年のリーマンショックから現在に至る世界経済の危機は、必然だったというわけか。本書では、その根本的解決策として「リバランス」すなわち世界レベルの経常収支不均衡構造の是正しかないとしているが、現在の世界はそれに失敗しているとしている。どの国も自国での経済危機と失業率の増大を抱えて輸出増を目指しているが、今までのアメリカのように巨大な貿易赤字を積み上げてきた国が新たに出現でもしない限り、実現不可能だ。本書では、詳細な考察のもとに、「現在の世界的な危機は、かつての世界恐慌時より深刻」と結論する。この一見出口がない危機に対して、本書ではその解決策として「経済ナショナリズム」を提唱している。 「経済ナショナリズム」とは、あまり聞いたことがない言葉だと思った。本書は「国家」と「国民」「国力」等について、歴史を含めて精緻な論理を展開するが、その内容は決して退屈ではない。これは、過去の「右」と「左」の概念を超えていると感じた。経済ナショナリズムの内容では「国家(ステイト)」と「国民(ネイション)」を区別することが重要だと主張する。「国家(ステイト)」は法の支配や権威によって人民を統合する。国民は「国民(ネイション)」共同体の一種だという。ここまで根源的に思考しなければ、世界経済の現状と危機は理解できないというのだ。これはイデオロギーだと思ったが、斬新にも感じた。 そして「経済ナショナリストはネイション内における資本家階級と労働者階級の対立を招くような経済政策を採用しない」「経済ナショナリストが選択するのは、同じ国の資本家と労働者が相互に協力し、利益を分かち合うような政策理念なのである」と語る。著者が動画の中で、PTT賛成論者に対し攻撃的に「売国奴!」と罵る姿があったが、このような理論的基礎が背景にあったのかと思わず頷いてしまった。 本書では「我々に残された選択肢は、国民国家をより良いものに改善し、国民国家の力をもって、グローバルな諸課題を解決する」「資本主義をグローバル化するのではなく、その反対にナショナル化していく、つまり国民のものとする」と主張する。じつに説得力のある素晴らしい主張ではないかと思った。 まだまだ多くの議論を経る必要はあるだろうが、堅牢な論理と激しい攻撃性、冷徹な知性と、人間に対する深い愛情やロマンに満ちた本を久しぶりに読んだ。思わず読後にもう一度読み直してしまった。本書を絶賛したい。
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