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アイデンティティと暴力 の商品レビュー

4.4

21件のお客様レビュー

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2024/08/16

NDC分類 361.6 自分では手にとらないし読んでもちゃんと理解できるかどうか・・であるが、津村記久子さんの『枕元の本棚』でのこの本の紹介がよかったので、メモ。 「自分のアイデンティティとは何か。実際のところは多様な人間自身を、「たった一つの要素に集約される何者か」と決めて...

NDC分類 361.6 自分では手にとらないし読んでもちゃんと理解できるかどうか・・であるが、津村記久子さんの『枕元の本棚』でのこの本の紹介がよかったので、メモ。 「自分のアイデンティティとは何か。実際のところは多様な人間自身を、「たった一つの要素に集約される何者か」と決めてしまうところが、暴力を行使したい側に利用されてしまうという状況を懸念しているのが本書である。」 「ある日突然、自分たちはルワンダ人であるだけでなく、厳密にはフツ族なのだ(だから「ツチ族を憎んでいる」)と教えられたり・・という出来事について、著茶は、「暴力は、テロの達人たちが掲げる高専的な単一基準のアイデンティティを、だまされやすい人々におしつけることによって助長される」と読み解く。どうしてこの世界において、人間同士の衝突が一向に収まる気配がないのか?著者はその原因を、多様な人間のアイデンティティの矮小化に鍵があるとする。」 「他人を的にして自分が何者かを決めるのではない。また、自分がどう生まれたかによって自分を決めるのでもない。自分が何者であるかは自分で選ぶのだ。論調は終始穏やかながら、「運命は幻想である」というサブタイトルは力強い。 ( 『枕元の本棚』津村記久子  より)

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2024/07/18

 アイデンティティは「単一のものではなく」、「選ぶことが出来る」し、「変えられる」、というのが、本書の一番のメッセージだ。アイデンティティを単一視し、人種、民族、宗教、国籍、文化、文明など、特定の枠組みに人びとを還元する見方(センは、還元主義、矮小化などと言っている)は、人びとを...

 アイデンティティは「単一のものではなく」、「選ぶことが出来る」し、「変えられる」、というのが、本書の一番のメッセージだ。アイデンティティを単一視し、人種、民族、宗教、国籍、文化、文明など、特定の枠組みに人びとを還元する見方(センは、還元主義、矮小化などと言っている)は、人びとをたやすく分断し、いとも簡単に争いへと駆り立てる。  センの議論が面白いのは、この矮小化の問題を社会科学的な議論にまで掘り下げていることだ。「文明の衝突」論や共同体主義(コミュニタリアニズム)もまた、人間を矮小化した見方である点で共通すると指摘している。原風景ともいえるカデル・ミアという男性の悲劇に始まり、単一のアイデンティティに対する疑念を問い続けたセンの議論は、学術的な議論としては「文明の衝突」論や共同体主義への認識など再批判されるところもあるのかもしれないけれど、そのメッセージ自体は一般読者たる私たちも受け止めるべきものだろうと、私は確信する。

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2021/02/13

アイデンティティは選べる。 選べる状態が「人間開発」である。 潜在能力を発揮させるために教育はある。 複数単一文化主義ではなく、 ひとりの中にある多様性を見つけること。

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2020/05/29

アマルティア・センがどういう人でどういう考えを提唱してきたか知らない人や、全体を通して何を言っているのか先に知りたい人は最後の監訳者解説から読むことをおすすめ。 本書は全体を通じてアイデンティティは多面的・複層的な概念であり、複数のアイデンティティの中から個人が理性により選びぬく...

アマルティア・センがどういう人でどういう考えを提唱してきたか知らない人や、全体を通して何を言っているのか先に知りたい人は最後の監訳者解説から読むことをおすすめ。 本書は全体を通じてアイデンティティは多面的・複層的な概念であり、複数のアイデンティティの中から個人が理性により選びぬくものであることを主張している。 読み終わってから、本書を読む前に「自由と経済開発」、「貧困と飢餓」、「不平等の再検討」を読んだほうが理解がおそらく増すのだと思うが、読んでない私はこのあと読もうと考えている。私は自分の研究テーマとの関連から2,6,7,8章が特に内容的に刺さった。特に7章では開発の授業でやった分配や相互依存の話が出てきて、授業をやった先生の思考の道筋が道筋が見えたような気がした。

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2020/01/05
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

年明け早々難しい本を読んでしまった。津村記久子のエッセーで紹介されていたこの本。布団に寝転んで読むには少々ハードだったが、それでも非常に興味深い本だった。 我々は複数のアイデンテティを持ち、その中のプライオリティ度合いを順位づけるのは、独立した社会人であるなら個人の自由であらねばならないこと。 他人あるいは他の勢力が、誰かのアイデンテティを「こうであるべき」と強制する事はあってはならないこと。 同時に他人あるいは他の勢力のアイデンテティを「あいつらはこうである」と一つにカテゴライズしてはならないこと。 国家論、文明論において語られる本書だが、俺個人としても大いに考えさせられることがあった。人の個性の中から一つを抜き出して、その人の人格を決めつけてはいないか?勿論好悪はあるにしても、その評価だけをもってその個人を格付けしてしまってはいないか? 「山好きに悪い奴はいない」「ゴルフは紳士のするスポーツ」これらの戯言に対する違和感も、この本に化kれている事に由来するのではないか、と思っている。 白黒はっきりなんてつけなくていい。色んな色のまじりあったグラデーションで世の中は出来ている。それをゼロサム的に区分けしようとするから、境界線が出来て争いが起こる元になるわけだ。 単一アイデンテティをもって、誰か(何か)を評価することは止めようと思ったし、それを勧めてくる存在からは距離を置くことを推せてくれた良作。

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2019/02/07

アマルティア・センといえば、という作品をお求めの方にはちょっと期待はずれかもしれませんがイスラム関係に仕事で関連のある私にとってはとても意義深い一冊でした。 内容はタイトル通りにセンの考えるアイデンティティ論が展開されている。 わかりやすいトピックとしてはアイデンティティは与...

アマルティア・センといえば、という作品をお求めの方にはちょっと期待はずれかもしれませんがイスラム関係に仕事で関連のある私にとってはとても意義深い一冊でした。 内容はタイトル通りにセンの考えるアイデンティティ論が展開されている。 わかりやすいトピックとしてはアイデンティティは与えられるものか、もしくは自分で選択するものかという問いを立て、センは選択するものだと答えている。 これも新しい何かを獲得するわけではなく、連続的な移動の中で獲得されるもので、それもまた変わりゆくものである。 またイスラムに対する視座について、一般的に「イスラム文化圏の人々の文化は好戦的である」という問いに対して「いや平和な文化である」という回答を耳にするがこれは暗に「宗教が同じであれば似た者同士である」という仮定を受け入れていることが問題である、と指摘する。 これ以上の細かい点については本編を読んでいただきたいが、彼の主張の色として他の著作と重複するところもあるのでセンを初めて読む人もすんなり読めると思いますが、今までの本でケイパビリティアプローチなどに興味を持っていた方には違ったセンの主張も垣間見えて面白い一冊だと思います。

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2018/10/15

 西洋文明がまるで最新であるようにされ、他と比べる唯一の物差しのように扱われているように、アイデンティティが狭義の意味になっていることが問題である。   正確なアイデンティティを理解するには、まるで西洋文明が作り出したように信じられている民主主義的な考えが、紀元前よりあちこちの場...

 西洋文明がまるで最新であるようにされ、他と比べる唯一の物差しのように扱われているように、アイデンティティが狭義の意味になっていることが問題である。   正確なアイデンティティを理解するには、まるで西洋文明が作り出したように信じられている民主主義的な考えが、紀元前よりあちこちの場所で発生していること、政治や権力に都合の良いようなアイデンティティが作られていることを知る必要がある。  

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2018/10/09

アイデンティティを単一のものと見なす状況がもたらす弊害。 あまり読みやすい文章とはいえない。話もなかなかくどい。が、指摘されている点は確かにその通りだと思う。 私たちのアイデンティティは複数性を持っている。が、それがあたかも単一であるかのように認識され(あるいはそれが促され)...

アイデンティティを単一のものと見なす状況がもたらす弊害。 あまり読みやすい文章とはいえない。話もなかなかくどい。が、指摘されている点は確かにその通りだと思う。 私たちのアイデンティティは複数性を持っている。が、それがあたかも単一であるかのように認識され(あるいはそれが促され)、本来生まれるべき共感が損なわれてしまうということはあるだろう。 問題は、それをどうやって回避するかということだ。理性的であれ、というのは簡単だが、実際人は100%理性的でなどあり得ない。じっくりと考える人が一人ずつでも増えていけば、多少かわるのかもしれないが、それには気の遠くなるような時間が必要だろう。 その辺を、もう少し追求したい。

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2015/04/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

アマルティア・センは「アジア人であると同時に、インド国民でもあり、バングラデシュの祖先を持つベンガル人でもあり、アメリカもしくはイギリスの居住者でもあり、経済学者でもあれば、哲学もかじっているし、物書きで、サンスクリット研究者で、世俗主義と民主主義の熱心な信奉者であり、男であり、フェミニストでもあり、異性愛者だが同性愛者の権利は擁護しており、非宗教的な生活を送っているがヒンドゥーの家系出身で、バラモンではなく、来世は信じていない(質問された場合に備えて言えば、「前世」も信じていない)。 これらは著者の属するカテゴリーの一部分でしかない。その中のどれに帰属意識を感じるかは選択の問題だ。  一人の人間を一つのアイデンティティに押し込めようとする還元主義を批判する。インドにおけるヒンドゥー教徒とイスラム教徒の対立やルワンダの虐殺は一人の人間の多様な側面を切り捨て、一面的な属性を押しつけた結果だ。 「一つの集団への強い―そして排他的な―帰属意識は往々にして、その他の集団は隔たりのある異なった存在だという感覚をともなう。仲間内の団結心は、集団相互の不和をあおりやすい」 ヒトラーがユダヤ人を過度に単純化してののしったように、昨今日本でもよく見られるヘイトスピーチも特定の集団を均一化し、さまざまなアイデンティティを無視して憎悪をあおる。 それらに対抗するために、「お互いが持つ多くの共通したアイデンティティを確かめられる世界」を心に持ち続けたい。

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2017/08/21

厚生経済学の分野でノーベル賞を受賞した経済学者であると同時に、哲学の教授。 今時、経済学者でありながら哲学者という立ち位置が珍しい。まるで、アダム・スミスの時代みたい。 インドで貧困と、ヒンドゥー教徒とムスリムの間の殺し合いを見て育ち、宗教にウンザリして無宗教に。 妻はロス...

厚生経済学の分野でノーベル賞を受賞した経済学者であると同時に、哲学の教授。 今時、経済学者でありながら哲学者という立ち位置が珍しい。まるで、アダム・スミスの時代みたい。 インドで貧困と、ヒンドゥー教徒とムスリムの間の殺し合いを見て育ち、宗教にウンザリして無宗教に。 妻はロスチャイルド家の出身で、経済学史の研究者で専門は、アダム・スミス。 妻がロスチャイルド家の出身だったから、彼は、ノーベル経済学賞がとれたんじゃない?って思うのは、ノーベル経済学賞って、平和賞みたいな、かなり政治的な力が作用する、恣意的な、ようするに胡散臭い賞だからね。 インド出身なので、ハンチントンのトンチンカンな『文明の衝突』論を、インド人の立場から笑う。 彼の話はハンチントンよりずっと現実に即している。 インド文明を「ヒンドゥー文明」などと単純に分類するのは明らかに間違いで、インドには145,000,000人のムスリムがいる。世界3位?のムスリムの国らしい。

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