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畦と銃 の商品レビュー

3.9

19件のお客様レビュー

  1. 5つ

    3

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  3. 3つ

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2019/07/27
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「宝島」の前哨戦的作品。ある山間の村の歴史を個人の立場から描いた、らしいけど、少し手法が粗削りな感がある。 問わず語りな語り口が読みやすく躍動感も溢れるのだが、ウッドマンたちの会話が延々と続くところは閉口した。でも、これも宝島が出来上がるまでの試金石だと思うと許せます。

Posted byブクログ

2020/09/15

「日本の根幹を支える農業・林業・畜産を描く絆と再生の物語」 などという帯文から堅苦しい内容を想像してたらとんでもない! 中身はエンターテイメントに徹した、ロック魂炸裂のクライムノベル。 離農を考える二十代後半の農夫・林野省の役人の若い女性・牧場の手伝いにくる小学生の視点でそれぞれ...

「日本の根幹を支える農業・林業・畜産を描く絆と再生の物語」 などという帯文から堅苦しい内容を想像してたらとんでもない! 中身はエンターテイメントに徹した、ロック魂炸裂のクライムノベル。 離農を考える二十代後半の農夫・林野省の役人の若い女性・牧場の手伝いにくる小学生の視点でそれぞれ語られているのだが、一人称視点の文体が全く違い、引き出しの多さに驚かされる。私は特に「第二次間伐闘争」の女性支点の、ニュートラルでポエティックな文体が好みだった。 キャラクターも立ちまくり!村中から頼りにされる最強の農夫(70目前)をはじめに、後家や古女房にモテまくりの色香匂い立たせる美青年、補聴器の上からヘッドホンを装備するその親友など、畔の区切りにおさまりきらない通称「あぜやぶり」と呼ばれる暴れん坊たちの活躍が痛快極まる。 就農・離農など、田舎の農村が抱える問題を取り上げながら、けっして堅苦しくならずエンターテイメントに落とし込んだ手腕は見事。 「(前略)百姓には百の業がある。その一つめが一揆だ」の演説はかっこよすぎる。 それでいてミステリーというにはささやかな成り代わりの仕掛けも憎い演出。 全編の共通項として「ミスリードによる人違い」が挙げられるのだが、ある人が帰還するエピローグでもそれは健在。餞別を見て初めて気付いた、自分は完全にだまされてしまった……。 登場人物も一部共通しており、「拳銃と農夫」のキャラクターが後の話に思いがけぬ形で登場する演出もスマート。同じ村を舞台にしながら時間が進んでいくので、あの人がまさかこうなるとは!と驚く。西部劇のカウボーイを例に引くまでもなく、農業とハードボイルドは相性がいいのかもしれない。 二話目の林業と共感覚を絡めた発想も面白いし、三話目は悪たれ牧童たちのジュブナイルな青春・成長小説で、皆テイストが違い飽きることなく一気読みできる。一番好きなキャラクターは惣。 惚れたら一直線の血筋を感じさせる、親子の会話に痺れた。

Posted byブクログ

2015/02/15

 方言丸出しの力強い言葉と、農業、林業、畜産という3つの第一次産業をテーマにした、ミナギという村を舞台にしたハードボイルド小説。  最強の農夫を巡る争いが、一揆に発展する。離農と就農という問題をガツンと一発入れるような衝撃を与える、「拳銃と農夫」。  「第二次間伐戦争」ではロック...

 方言丸出しの力強い言葉と、農業、林業、畜産という3つの第一次産業をテーマにした、ミナギという村を舞台にしたハードボイルド小説。  最強の農夫を巡る争いが、一揆に発展する。離農と就農という問題をガツンと一発入れるような衝撃を与える、「拳銃と農夫」。  「第二次間伐戦争」ではロックフェス会場を作るためにn伐採を進める中で起こる林業の縄張り問題。山を守るロマンと、伐採作業の緊迫感、山に対する感覚である「感取り」という概念が面白い。  「ガウチョ防衛線」は、子供達が酪農場を襲撃してくる大人から守るという話。  3つのストーリーが少しずつ繋がっていて、ミナギという村への輪郭を徐々に決めていく。さくさくと進む力強くも軽快な文体で読み易い。

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2014/07/13

農業、林業、畜産業を舞台にしたバイオレンスアクション小説。 破天荒な話だけど、あまりやりすぎると興ざめな感じになるところを、自分の中の許容範囲内に収まっていたので非常に楽しく読めました。

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2012/04/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

ミナギという農村(おそらく北海道のどこか)を舞台に、農業、林業、畜産業という、人が生きていくうえで欠かせない3つをテーマにした3つの短編が語られる。それぞれの短編に共通して登場するのはミナギという土地と、都会の広告代理店から来ているチャラい若者だけ。しかし、この若者がヨソ者であり、かつ話の要点で出てくるものの登場する頻度がそれほど多くないことによって、却ってミナギの中に住む人の間に生じる軋轢や葛藤、対立などといったものがくっきりと浮かび上がり、鄙びた農村であるミナギの特異性と普遍性をより鮮明にしている。 最後にほんの10ページちょっとながら、それまでの3つの短編を一つにまとめあげる最終章が語られている。そこには、これまでの全ての短編を通じて登場してきた広告代理店の若者を楔として、3つの短編の登場人物たちがごく自然に、かつ気づかないぐらいさりげなく再登場する。まるで、著者に「これはあの人のことだけど、あなたには分かるかな?」と挑戦されているような印象。 小説ではあるものの、生存に必須のものを生み出している場が、途轍もない生命力と愛と暴力に満ち溢れているのだということを、ビシビシと感じさせてくれる小説です。著者は、まだあまり多くの作品を世に送り出してはいないようですが、追いかけていきたくなる作家にまた一人出会えたと感じています。

Posted byブクログ

2012/03/20
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

「ハードボイルド第一次産業」 農業、林業、畜産、われわれは第一次産業にどこか牧歌的なイメージを持っていなかっただろうか。この小説の舞台「ミナギ」は毎日が戦いだ。強欲な有力者、自然、豊かさを求める開発。皆、それぞれの戦場で信念を持って戦っている。戦場に生きる彼らは、言葉に重みがある。行動に無駄がない。この本では百姓の持つ秘めた狂暴性、ウッドマンのそれぞれ違う感性などにスポットがあてられていて、その捉え方が独創的で、おもしろかった。この小説のもう1つの魅力は、つながりだ。都会から来た広告マンの立花をとおして、三部構成の話の舞台が同じ場所だと認識するのはもちろん、一部で農村を守るために戦った惣の息子が、三部で牧場を守るために戦う。そのつながりは、人間の生命の歴史をも彷彿とさせる。食物連鎖という言葉は、生命のつながりを表す言葉だけれど、われわれ人間同士も、血がつながり、闘争の歴史がつながり、続いていくんだと。

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2012/02/11

どんなストーリーかと気になった作品でしたが、なかなかどうしてエンタメとして読むのなら上出来ですね。 特に、牧童たちの章はすっかり嵌まり込みました。 全く名すらも知らぬ作家さんで、表紙にも惹かれず、「第一次産業」の再生というコメントが気になって読んだ一冊でしたが損はありませ...

どんなストーリーかと気になった作品でしたが、なかなかどうしてエンタメとして読むのなら上出来ですね。 特に、牧童たちの章はすっかり嵌まり込みました。 全く名すらも知らぬ作家さんで、表紙にも惹かれず、「第一次産業」の再生というコメントが気になって読んだ一冊でしたが損はありませんでした。

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2012/01/14

この作家、作品ごとに題材が全く違う。 どれも意外なものばかり。 それでも、終わりがいい、だから読後感がいい。

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2022/02/21

ある暴力と事件に溢れた農村の話です。 農村が舞台なのでほのぼのとした中でのギャップが独特の雰囲気を作り出し面白かったです。 群像劇の形をとっていたが、登場人物一人ひとりが徐々に成長していく様が見えかなり楽しめました。

Posted byブクログ

2011/11/24

農業、林業、酪農の荒くれ者が現代版一揆をやったり、戦ったりするパワフルな連作集。 『地図男』を読んだときは好みの作家ではないと思いましたが、なかなか面白かったです。文体はややクセがありますが、有川浩ファンは好きそうな書き方です。 三浦しをんの『神去なあなあ日常』と合わせて読むと...

農業、林業、酪農の荒くれ者が現代版一揆をやったり、戦ったりするパワフルな連作集。 『地図男』を読んだときは好みの作家ではないと思いましたが、なかなか面白かったです。文体はややクセがありますが、有川浩ファンは好きそうな書き方です。 三浦しをんの『神去なあなあ日常』と合わせて読むといいかも。

Posted byブクログ