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アーティスト症候群 の商品レビュー

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19件のお客様レビュー

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2021/11/20

本を読む前は、なんとなく「芸術に携わる人って、カッコいいな」と 良いイメージを抱いていました。 昔から絵を描くのが好きで、芸術分野の学校へ進もうか悩んだ時期もありました。 この頃から、芸術に身をおく人は特別、という先入観があったのかもしれません。 しかし、思春期の心に抱いた淡い憧...

本を読む前は、なんとなく「芸術に携わる人って、カッコいいな」と 良いイメージを抱いていました。 昔から絵を描くのが好きで、芸術分野の学校へ進もうか悩んだ時期もありました。 この頃から、芸術に身をおく人は特別、という先入観があったのかもしれません。 しかし、思春期の心に抱いた淡い憧れは 「有名になるのはほんのひと握りの世界なんだから、現実的になって。」という 親の一言で呆気なく散ってしまいます。 たまに、このことを思い出しては、 「あの時親の反対を押し切って芸術系に進んでいたら今頃は・・」と 空想に耽る時があるのですが、 この本を読んで、いかに自分が「アーティスト症候群」に陥っているか 思い知らされました。 私のように、「アート」「アーティスト」「クリエイター」という言葉に、 ”なんとなく”、”ぼんやり”憧れを抱いているような人は、 一度読んでみることをお勧めします。 筆者の歯に衣着せぬ批評のおかげで、 空想の世界から現実に一気に引き戻されました。 本書では、「アーティスト」という言葉が どのような時代的背景のもと生まれ、 現在に至るまでどのような存在として位置しているかを 絵画の歴史、資本主義社会におけるアートの扱い、欧米文化の流入など 様々な観点で説いています。 私にとって「現代アート」「アーティスト」という言葉は 当たり前のように存在していたもので、 それ自体に疑問を持つことはなかったのですが、 現代アートに触れた時の"居心地の悪さ"は気になっていました。 西洋絵画を見る際は、表現技法の変遷や派閥闘争など 様々な歴史的背景を併せて鑑賞し、 書き手の思いを汲み取ろうとする行為そのものに面白さを感じていたのですが、 現代アートの場合、いまいち楽しみ方がわからないことが多々ありました。 鑑賞する側の芸術に対する態度や知性を問う一方で、 作り手が何を考え、何を悩んで、一体私たちに何を訴えかけているのか 全くわからない、そんな感覚を覚えました。 だけど、本書内で、 現代アートは自己哲学に囚われた末の表現物であり、 表現の枠組みもかなり緩くなり、もうなんでもありな形になってしまっている、 という筆者の言葉が、そんな自分を救ってくれたように思います。 「なんでも鑑定団」と「誰でもピカソ」を対比させた章では、 番組の方向性や出される表現物の種類が大きく違えど、 アートや芸術が、いかに人の欲にまみれているものか皮肉を交えて解説。 審美眼を認められたい目利きとしての承認欲求、 優れた表現者としての承認欲求、 出演者それぞれには何かしらの認められたい欲求があるんだ、と鋭く指摘。 言葉には出てこない、人の深層心理を見抜く人なんだなぁ、と思いましたが、 筆者の真正面から受け取らない視点、意地悪な言葉選びも面白いです。 個人的に一番刺さったのは、「自分流症候群」の章でしょうか。 なぜ、「アーティストになりたい」若者で溢れかえっているかを 社会的な側面から考察している内容ですが、 誰とも違う自分という存在を世に知らしめたい、という承認欲求は、 今の社会からの「逃げ」の行き着いた結果なのだと思います。 生まれた時から格差は付いてまわり、 資本主義社会で競争せざるを得ない中で、 汗かいて働いても自分の老後は不安定、 会社もいつ潰れてもおかしくはない、 健康的な生活と家庭を持つという安定ルートを歩くのも一苦労。 目に見えて苦労するのがわかっている現代だからこそ、 今の人生悔いないように生きよう、 会社が守ってくれるという幻想は捨てて、 自分1人で立っていける食い扶持がなければ・・ そんな思考、人生を憂いた先に、 「自由」「自分らしさ」「とらわれない働き方」「手に職」という イメージで纏われた、アーティストやクリエイターという言葉に 惹かれる人が多いのではないのでしょうか。 当事者だからこそ、この非現実的な言葉に逃げる心は、 少しわかる気がします。 アーティストという言葉、職業は、もはや芸術分野の人たちだけの言葉ではなく、 現代社会の中で一般的になった言葉であり、 社会の閉塞感から逃れるために選ばれた言葉でもあると思います。 アーティスト、という言葉や存在が悪いというのではなく、 言葉を通して今の社会を見つめ、何が問題なのかを切り出す鋭い視点が とても面白いと感じる内容でした。 この筆者の作品を今後ももっと読みたいと思います。

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2021/01/02

元アーティストという稀な肩書を持つ著者による、現代のアートとアーティストを取り巻く状況についての平易な解説。 先ごろ読んだアトリエインカーブの著者とは「アート」に関する定義からかなり異なると思われるが、両者の対論など見てみたい。

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2020/03/02

技術を持ち世におもねず100%自分をかけているのがアーティスト。格差社会の中のオンリーワン幻想、アーティストというポジションは、膨れ上がる被承認欲と根拠ない万能感を抱えた若者の、夢の受け皿となっている。 日々の糧としての仕事vs余裕人のアートだったのが、いろいろなところに余裕が...

技術を持ち世におもねず100%自分をかけているのがアーティスト。格差社会の中のオンリーワン幻想、アーティストというポジションは、膨れ上がる被承認欲と根拠ない万能感を抱えた若者の、夢の受け皿となっている。 日々の糧としての仕事vs余裕人のアートだったのが、いろいろなところに余裕ができてきたから、アート需要ももアーティストも増えたのかな。

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2016/08/04

著者は東京藝大を卒業した元「アーティスト」。ミュージャンでも美容師でも何でもアーティストと呼ぶのは常々気持ち悪さを感じていたので、そこら辺は腑に落ちる感じだった。ただ、作品を発表したらいちいち言葉で説明(何故これを描いたのか?)が求められるという点は著者に同意出来かねる。「好きだ...

著者は東京藝大を卒業した元「アーティスト」。ミュージャンでも美容師でも何でもアーティストと呼ぶのは常々気持ち悪さを感じていたので、そこら辺は腑に落ちる感じだった。ただ、作品を発表したらいちいち言葉で説明(何故これを描いたのか?)が求められるという点は著者に同意出来かねる。「好きだから」と答えた生徒に呆れたという場面では逆に呆れた。言葉にできるなら最初から作品なぞ作らない。理屈の方を優先させたくてアーティスト活動をやめ文筆活動を始めたというのなら、著者にとっては幸せな選択だったと言えるのではないだろうか。

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2014/10/08

[ 内容 ] なぜ人はアーティストになりたがるのか。 なぜ誇らしげにそう名乗るのか。 その称号をもてはやすのは誰なのか。 「誰かに認められたい」欲求によって“一億総アーティスト化”した現在、自己実現とプロの差異とは一体どこにあるのか。 美術、芸能、美容…あらゆる業界で増殖する「ア...

[ 内容 ] なぜ人はアーティストになりたがるのか。 なぜ誇らしげにそう名乗るのか。 その称号をもてはやすのは誰なのか。 「誰かに認められたい」欲求によって“一億総アーティスト化”した現在、自己実現とプロの差異とは一体どこにあるのか。 美術、芸能、美容…あらゆる業界で増殖する「アーティスト」への違和感を探る。 東京都青少年健全育成条例問題、アート解説本の需要増加等、最新事情を記した論考を追加。 [ 目次 ] はじめに―一枚のチラシから 美術家からアーティストへ アーティストだらけの音楽シーン 芸能人アーティスト 『たけしの誰でもピカソ』と『開運!なんでも鑑定団』 職人とクリエイター 「美」の職人アーティスト達 私もアーティストだった 「アーティストになりたい」というココロ [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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2014/09/18

いかにしてアーティストを目指すのか、そして諦めるのか、芸大に入ってもやもやしていたその辺が鋭く突っ込まれていて勉強になりました。 でも実際アーティストを目指している人にとっては聞きたくない言葉かもしれない。 いくらなんでもそれはキツすぎるんじゃないかな、と思う場面が多かったです。...

いかにしてアーティストを目指すのか、そして諦めるのか、芸大に入ってもやもやしていたその辺が鋭く突っ込まれていて勉強になりました。 でも実際アーティストを目指している人にとっては聞きたくない言葉かもしれない。 いくらなんでもそれはキツすぎるんじゃないかな、と思う場面が多かったです。 後半の著者自身のエピソードはとても興味深く、その部分だけで一冊にして欲しいな、批判ではなく本人が語る話のほうが頭に入りやすいみたいです。

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2013/12/12

芸術-思想=趣味、ってことでファイナルアンサー。しかし必ずしも、趣味+思想=芸術 にはならない気がする。 #C326806

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2013/09/28

あるなぁ~と思う。 呼び方なんてどうでもいい、とも思うが、 違和感を感じることがあるのも事実。 呼び方(呼ばれ方)は、特に自称の場合、自意識の根幹のようなものだから、 たかが名称、されど名称だ。 僕の周りには、アーティストは少ないけれど、 クリエーターならたくさんいる。 ...

あるなぁ~と思う。 呼び方なんてどうでもいい、とも思うが、 違和感を感じることがあるのも事実。 呼び方(呼ばれ方)は、特に自称の場合、自意識の根幹のようなものだから、 たかが名称、されど名称だ。 僕の周りには、アーティストは少ないけれど、 クリエーターならたくさんいる。 Webデザイナーもクリエーターと呼ばれることもあるし、 エンジニアもディレクターもカメラマンもライターも、 大雑把にクリエーターとして括られる場合もある。 若手起業家とかITベンチャー経営者なども似たようなところがあると思うが、 そういうちょっとカッコいい名称って、自意識の衣なのだ。 だから冷静に見ると恥ずかしい。

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2013/10/08
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

あとがきが一番面白かった。かも。 結論 「セルフブランディング」のために「アート」という表現を手段として使っている人をアーティスト症候群というのかなと。 どういうことかと言うと。 極端なことを言えばただ好きなものを作りたい、もしくは作るのが好きなだけならば公の場に出す必要はない。 何か公の場で表現するということは、少なくとも伝えたい「事」があり、伝えたい「人」が存在するはずである。 にも関わらず、コンセプトを伝えきれない。何か言われればそれが「自分のこだわり」だとか「分かる人に分かればいい」とか開き直る。 「分かってもらう」ことがゴールでないにしろ、 公に発表するということは、表現のコンセプトは自分の中に絶対なくてはならないもので、聞かれたら答えられるものとして存在しなければ作品を発表することの意味はない。 なぜならばそれが「不快」を与えるものであった場合、相手を納得させられるだけのコンセプトがなければただの「暴力」になるのではないかと私は思いました。 「表現の自由」を盾に「やりたいこと」「こだわり」を発信するのなら、ブレないコンセプトは持っていなければならない。 いつでもそれを出せる状態にしておく責任は表現者にはある。 自戒を込めてそんなことを感じました。 芸術表現そのものを伝えたい、理解してもらいたいというよりは、そんな表現を手段として使っている「自分」を理解してほしい。なんとなくかっこいい「アートな自分」を認めてほしい。 そういう状況に陥っていることを著者は「アーティスト症候群」と名付けたのではないでしょうか。 ---------- どうやらこの本に、もう少し辛口を期待してたのだと思う。 そのためか穏やかな気持ちで読み終えてしまった。 あとがきには、嫌な気持ちになったと思うなんてことが書かれていたが、ほぼ共感できる内容で新鮮さもなく相づちを打ちながら読んでいる感覚でした。 この本には「アーティスト、クリエイター」という肩書きは魅力的なイメージを保持し続けていると書かれている。 そして、基本をスルーした人たちの逃げ道としての肩書きであるかのようにもかかれている。 自分流だとか自然体だとかでごまかして「オンリーワンの自分を認めて」なんて人が「アーティスト」を名乗り出したらその肩書きは魅力的なイメージどころか安っぽくなる一方だと思うのだけど。 不思議である。

Posted byブクログ

2013/05/14

 『文庫版のための長いあとがき』で、Chim↑Pomの手法(2008年広島の「ピカッ」)をバッサリ斬ってて割と分かりやすい。サブカル感覚の「面白主義」をアートに持ち込んで他者との軋轢を生んだ際に決定的な戦略の甘さを露呈する的な話。  あといわゆるガーリーフォトを「写真ポエム」とし...

 『文庫版のための長いあとがき』で、Chim↑Pomの手法(2008年広島の「ピカッ」)をバッサリ斬ってて割と分かりやすい。サブカル感覚の「面白主義」をアートに持ち込んで他者との軋轢を生んだ際に決定的な戦略の甘さを露呈する的な話。  あといわゆるガーリーフォトを「写真ポエム」としていたのが笑った。たしかに。

Posted byブクログ