生物学的文明論 の商品レビュー
技術、数字、物理学的な発想を離れて生物学的な発想で文明のあり方を見つめ直しましょう、という本。 面白い本ではある。直線ではなく円を描く時間の話し、計測可能な量ではなく質に豊かさを感じようという提案、事実がわかれば良しとするのではなく意味を問い続けようという誘い。うんうん、心の中で...
技術、数字、物理学的な発想を離れて生物学的な発想で文明のあり方を見つめ直しましょう、という本。 面白い本ではある。直線ではなく円を描く時間の話し、計測可能な量ではなく質に豊かさを感じようという提案、事実がわかれば良しとするのではなく意味を問い続けようという誘い。うんうん、心の中で小さな拍手をしながら読んだ。 ただし、『ゾウの時間 ネズミの時間』ほどの新鮮さはないし、この分野には福岡伸一というスーパースターが現れて風景を一変させてしまった。インパクトは弱い。ゆったり読むのがよろしいようです。
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ラジオでの11回の連続講演がベースになっており、各章それぞれのテーマがあり、大変面白い。 特に、食料生産装置としての変温動物、「時間環境」問題の時間をデザインするなど。 最後に「ナマコ天国」で笑わせてもらいました。 今後も、本川教授の著書を読みたい。
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環境問題・資源エネルギーの枯渇、超高齢化社会、赤字国債の山etc現代社会が抱える問題はきわめて深刻だ。本書は、こうした問題にどう向き合うべきか生物学的発想で考える。 科学や技術は18世紀産業革命以降目覚しい進歩を遂げている。そしてその絶大な力をもって社会を変革し便利に豊かな...
環境問題・資源エネルギーの枯渇、超高齢化社会、赤字国債の山etc現代社会が抱える問題はきわめて深刻だ。本書は、こうした問題にどう向き合うべきか生物学的発想で考える。 科学や技術は18世紀産業革命以降目覚しい進歩を遂げている。そしてその絶大な力をもって社会を変革し便利に豊かなものにした。と同時に多くの問題を生みだすことになった。前提として数学・物理学的発想のみに傾きすぎていた。それが20世紀という時代だったのだ。科学は基本的に質を問わず量で考える。だからこそ数式が使える。量的に測定できるものが中心になると量が多い方がより豊かで、より良いのだという発想になりやすい。そしてその量的な豊かさを求めた結果、地球資源、生物多様性を食いつぶすことになったというのが現実だ。こうした量的価値判断からの転換を計らなければ地球がもたなくなってしまう。さんご礁の共生と資源のリサイクルが貧しいものを豊かに変えたように、量を減らしても多様性が質を担保するというのが示唆的であると著者はいう。科学は構成要素を単純化し、主体と客体に分けて考える思考だ。この思考法だけになると対象を自分のことのように考えることはなく功利主義的になってしまう恐れがある。自然も私たちを見ているのだという発想で向き合うことが生物多様性を大事にする方向に導くのだ。 生物に関係する資源不足としての水も大きな問題になっている。今世界規模で水不足が起こっている。その原因は爆発的な人口の増加だ。人口が増えれば、養うための穀物が必要になる。そして農耕には多くの水を当然ながら必要とする。米1キログラム作るのに3・6トンの水が必要であるという。したがってその比率は1:3600だ。 日本は多くの穀物を輸入している。ということは同時に数千倍の水も同時に輸入しているということになるのだ。この視点に立てば、水の豊かな日本が、世界では不足しいている水を大げさに言えば収奪しているとも考えられる。(著者は日本の食料自給率が4割であることを問題にしているが、それはカロリーベースの話であって生産額ベースでは約70%であるこのあたりは誤解しているものと思われる) ビジネスとは時間の操作である。その為に莫大なエネルギーは消費すると同時に時間を高速化しているという指摘にはなるほどなと首肯した。体の時間は変わらないのに社会の時間は桁違いに早くなっている。これがストレスの原因になってるのは確かにその通りだと思う。こうした時間環境も環境問題として取り上げるべきだという。 ヒトの寿命は本来40歳であるといったら驚くだろうか。心臓が15億回打つとゾウだろうが、ネズミだろうがみんな死ぬという。ヒトの場合でいうと15億回心臓が鼓動したとき41歳。現代だとまだ人生半ばである。豊富な食物と高い医療技術が平均長寿の伸びを支えているのだ。40というと老いの兆候が見え始める年である。野生の生物で老いるとは即ち生殖活動に参加できなくなるということだ。生物学的には、生殖活動が終わったらすみやかに消え去るのが正しい生き方になるだろう。だからといって人間にそれを適用することはできない。であればこそ、老いてなお社会に貢献する方法を見出すことが必要になると著者はいう。
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サンゴ礁とクマノミらの共生の話から 生態系と化学反応を起こしやすい状態「液体」について、水の話と生物が円柱形な事の利便性。 途中からナマコの皮膚の有用性とエネルギーの消費は、時間の体感と関わっている!という話になり 現代社会のエネルギー消費過多を指摘して締め。 内容が多い割に...
サンゴ礁とクマノミらの共生の話から 生態系と化学反応を起こしやすい状態「液体」について、水の話と生物が円柱形な事の利便性。 途中からナマコの皮膚の有用性とエネルギーの消費は、時間の体感と関わっている!という話になり 現代社会のエネルギー消費過多を指摘して締め。 内容が多い割にわかりやすい。 話はころころ変わるものの、根幹に一貫してのテーマがあることが伝わってくる。 文章が丁寧な口調で、ユーモアもあって面白いので読みやすかった。 しかし想像以上にナマコが気持ち悪い生き物だった。感心はしたけれど。
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時間の概念や使い方を提案した本だが、それよりも間にでてくる生物学的雑学のほうが面白い。 例えばナマコは握ると硬くなり、さらに力を加えると皮が溶けるとか、が面白かった。
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高校時代に『ゾウの時間ネズミの時間』を読んで以来の本川先生の本。 ラジオ講義をまとめたものなので、口語的でわかりやすい。 現代の問題や生き方に関して本川先生らしい新しい観点で述べていて、興味深かった。 砂を噛むような人生は天国のようだ!
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物理的な時間ではなく生物学的時間という面白い視点からの論考です。生物の時間は連綿とした命の繰り返しという時間概念はすっと腑に落ちます。現代人はエネルギーを使って便利の名のもとにいたずらに時間を進めているのだという気づきは今までとは違った生き方のヒントになります。
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「ゾウの時間ネズミの時間」の著者によるもの。「ゾウの〜」が面白かったので期待していました。本書にもあらためてゾウとネズミの生物時間のことが触れられています。 全体的にスケールが大きいというか、「種」としての話で、自分も生物である、というリアリティが掴みきれません。まずまず楽しんで...
「ゾウの時間ネズミの時間」の著者によるもの。「ゾウの〜」が面白かったので期待していました。本書にもあらためてゾウとネズミの生物時間のことが触れられています。 全体的にスケールが大きいというか、「種」としての話で、自分も生物である、というリアリティが掴みきれません。まずまず楽しんで読んだけど、やや消化不良です。 生物時間と社会時間の違いが、昨今の不幸ともいえる問題を生んでいるように思えます。エネルギーは時間の短縮のために使われることが多いですが、ゆっくり時間でよければ、あまり多くのエネルギーもいらないわけです。スピードは豊かさではないよねえ、と気がつけるかも。
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これは必読。生物を通して文明を論じているが、とてもシンプルな言葉で書かれてるので、わかりやすい。生き物は丸く柔らかいが、人間の作ったものは固くて四角いものが多い、という考察にはハッとさせられた。今後の日本の向かう方向や未来のあるべき姿がよくわかる。
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うひょー、ラスト鳥肌。 映画のトレイラーっぽく表現すれば「あの名著が帰ってきた!」。 http://d.hatena.ne.jp/ymkjp/20110828/1314548365
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