ダールグレン(1) の商品レビュー
1970年代、SF作家でカッコいいのといえば、ゼラズニイとディレーニイ、2人のニイだった。いやいや後者はその後、ディレーニになったり、本書ではディレイニーだけれど。当時、『バベル−17』『アインシュタイン交点』『ノヴァ』で鮮烈な印象を与えていた(『アインシュタイン交点』の翻訳は...
1970年代、SF作家でカッコいいのといえば、ゼラズニイとディレーニイ、2人のニイだった。いやいや後者はその後、ディレーニになったり、本書ではディレイニーだけれど。当時、『バベル−17』『アインシュタイン交点』『ノヴァ』で鮮烈な印象を与えていた(『アインシュタイン交点』の翻訳はずっと遅れるが)彼の大作『ダールグレン』(原書1975年刊)が大いに話題になっていた。しかしいつまでたっても訳されない。30年以上をへて、翻訳が出るとは目を疑った。しかしネットで読める山形浩生の評はケチョケチョで、「長ったらしくてみんな読んでないから、問題作とか話題作とか野心的なナントカとか言うだけで逃げる」などなど。 とんでもない長さのように言われていたけれど、長いことが取り柄の現在の英米SF界ではこの程度ふつう。で、実験的だの言われるが、読みにくいものではない。 舞台はアメリカの都市ベローナ、何か事件があって住民たちが逃げ出して半ば廃墟になっている。一方、この町を魅力的と思い、流入してくる人もいる。主人公の青年はベローナへと歩み入る。彼は自分の名前が思い出せない。しかし完全な記憶喪失というわけではなく、ここに来る前はメキシコにいたし、日本にいたこともある、20歳そこそこで精神病院に入院していたことがあるなどといった記憶がある。1948年生まれで、現在27歳、つまり今は1975年と示しておいて、すぐさま別の登場人物にそれを否定させる。どうも主人公の認識能力には怪しいところがあるのだ。 27歳なのにそれより10歳も若く見えるので、みなに子ども扱いされ、坊や=キッドと呼ばれ、Kidが固有名詞のKiddになったり、またdを外してみたり。 ベローナにはいるや、ホモの男のもとに身を寄せ、関係を持つ。それから公園のヒッピーのコミューンみたいなところに転がり込んで、彼女を作る。誰かの書いたノートを見つけて、半分白紙の部分に詩を書く。崩壊した町の中にあって従来の生活を維持している振りをしている家族の引っ越しを手伝う。毎度、日付がインチキな新聞を出している男に詩を出版してもらうことになる。数日記憶を失って、愚連隊スコーピオンズに加わっている。 1巻はまあそんな話。月が2つあったり、ときどきどうにも不可解なことが起こる。名前のないキッドは主体性もどこか希薄で状況に流されていく感が強い。かといって華麗で夢幻的になるわけでもない。ただ、ガラス、レンズ、プリズムなどディレイニーらしいイメージは多少なりともちりばめられてはいる。
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や、やっぱり英文で読むべきだった。ノヴァとかアインシュタイン交点に比べれば冗漫な感じは否めないが、75年刊行という背景を考えたら納得。しかし2をこのまま読むのは苦痛な気がする。
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