暗い鏡の中に の商品レビュー
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精神科医ウィリング8作目。 今回は、前にも登場したウィリングの恋人ギゼラが勤める女子寄宿学校に、 他の先生のドッペルゲンガーが現れるお話。 その先生が前に勤めていた学校の生徒が、 今は同僚になっていると判った時点で、 心霊現象ではないと見切るべきだった。 殺されてしまったその同僚の元恋人が、 「貴族的」な柳腰のほっそりとした体形だと書いてあることに 気がついていたのに。 ウィリングがどさくさまぎれに、プロポーズして、 イエスという返事がもらえて良かった。 印象的だったのは、来客に煩わされないために、 朝の6時から7時の間だけ、 来るものを拒まず面会する弁護士。 共同経営者や秘書がいるからできる技ではあるが、 なかなかユニークで面白かった。
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理由も告げられず、突然女子校の教師をクビになってしまったフォスティーナ。彼女の友人ギゼラから相談を受けた心理学者のベイジル・ウィリングが校長に解雇の理由を問いただすと、フォスティーナは不可解な怪奇現象の元凶として気味悪く思われているとわかる。そんな折、学校で開かれたパーティーでフォスティーナたちの同僚であるアリスが転落死してしまう。だが、アリスを突き落としたのはそこにいないはずのフォスティーナだと証言する目撃者がいて……。 怪奇現象VS現代科学。怪奇小説と呼ぶには伏線が見事に回収されるし、推理小説と呼ぶにはホラー色の強い両義的な作品。ドッペルゲンガーの扱いと読後にモヤモヤが残る感触に遠藤周作の『スキャンダル』を思い出したり。いや、あっちとは比べものにならないくらいちゃんとトリックでミステリー的な回収もしてくれるけど。(でもゴム底靴の消音効果に期待しすぎじゃない?) この小説が幻想怪奇方面で評価されている理由はよくわかった。開幕のフォスティーナ視点の解雇シーンから秘密が隠された不穏な空気に満ち満ちており、庭で絵を描くフォスティーナを見て女生徒が失神する一連のシーンで幻想味が頂点に達する。しかし学校を追い出されたフォスティーナはその後存在感を失ってしまい、次に実体がでてきたときには死んでいる。ベイジルが調査を進めるうち、フォスティーナに代わって主役の顔を見せはじめるのは、大昔に亡くなった彼女の母ローザ・ダイヤモンドである。 人生の主役は自分だ、と思えたことがない女性の心理が現実世界に影響を及ぼす。そこに特権的な傍観者として心理学者が関わる。この構図はシャーリィ・ジャクスン『丘の屋敷』と同じであり、自身の介入が暴力であることに気づかぬベイジルの視点で幕を閉じる分、本書のほうがより残酷と言える。マクロイはその点に気づいていて、科学では届かない場所を示唆して物語を終えたのかもしれない。
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幻想小説かつミステリを絶妙に混ぜ合わせた作品。不気味な怪現象と、論理的な推理、しかししこりの残る終幕…とてもおもしろかった。
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美術の先生のフォスティーナの分身が現れる噂がたち、明確な理由を告げられず解雇される。彼女は前の学校でも同じようなドッペルゲンガー現象が原因で解雇されている。そして、フォスティーナがアリスを殺害する現場が目撃されるが、同じ時間帯に彼女と長距離電話をしているギゼラの証言があり、ドッペルゲンガーは本物ではないかと騒ぎになる。そして、当のフォスティーナも死亡する。 一連の事件の犯人は、とても意外な人物だ(そうじゃないと面白くないんだけどね)。探偵役のベイジル・ウィリング博士(ギゼラの恋人でもある)がドッペルゲンガーのからくりを見抜いたのは見事だが、残念ながら物証がない。犯人と対峙し、おどおどしい雰囲気のままラストを迎える。ウィリング博士がすべての謎を合理的に説明できたのが見事。いろんな伏線はあったのだが見事に騙された。スッキリしつつモヤモヤも残るが、それが読後感の良さにつながっている。
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じわじわとした、美しいけれど嫌な雰囲気が全編に漂う幻想ミステリ。あまり予備知識を持たずに読み始めたので。あれ、これってミステリだと思ったけど幻想小説だったの?→いやいや、やっぱりミステリじゃん→え、やっぱり幻想? 解決するのしないのどっち? という心境。どちらに取るかはその人次第...
じわじわとした、美しいけれど嫌な雰囲気が全編に漂う幻想ミステリ。あまり予備知識を持たずに読み始めたので。あれ、これってミステリだと思ったけど幻想小説だったの?→いやいや、やっぱりミステリじゃん→え、やっぱり幻想? 解決するのしないのどっち? という心境。どちらに取るかはその人次第ですが、私はこれはきちんと真相を暴かれたミステリではないかと思いました。でないとあまりに怖いし、哀しい物語になってしまうのでやりきれない心地がします。 フォスティーナの感じる恐怖と孤独感がどうしようもなく淋しくて。こんな状況に置かれたら、たしかに精神的におかしくなっても不思議ではありません。実害はないといえばないんだけど……やっぱり嫌だよねえこんなの。そしてタイトルが表す、ラストで彼女が見たもの……これはたしかにとてつもなくショッキングかも。
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なぜか男だと思っていたヘレン・マクロイ。読めば一発で女性だと分かる文章だった。推理のためもあるだろうが、容姿の描写が凄く細かい。そこまで書かなくてもいいんじゃないの、と思うくらい。ややくどかった。 内容は、フォスティーナ・クレイルに起こったこと、ほぼそれだけである。それだけを描...
なぜか男だと思っていたヘレン・マクロイ。読めば一発で女性だと分かる文章だった。推理のためもあるだろうが、容姿の描写が凄く細かい。そこまで書かなくてもいいんじゃないの、と思うくらい。ややくどかった。 内容は、フォスティーナ・クレイルに起こったこと、ほぼそれだけである。それだけを描写して十分一冊の本になる、ということに感心した。あとがきを読んで、もとは短編だったと知り、なるほどな、と思った。 ミステリー?幻想?と惑わせたいのだろうが、どう考えても○○だろう……と思ってしまったので、ラストは「往生際悪いな~」という感想。 伏線も文章に書かれたことをそのまま回収するので、現代の小説に慣れているとやや古い感じがして物足りないかもしれない。 ベイジル・ウィリングがある人物を追い詰めるシーンはカッコよかった。プロポーズの言葉遊びも面白い。 凄く面白いってわけではないが、他の作品も読んでみたいと思わされた。
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ヘレン・マクロイのベイジル・ウィリング博士シリーズで、1950年に書かれた作品らしい。しかしあまり古さを感じずに読めた。一人の女性教師が、赴任先の学校で、ドッペルゲンガーの現象を生じさせる人物という理由で解雇される。探偵の役割をするウィリング博士がその謎を解明していく話。話の流れ...
ヘレン・マクロイのベイジル・ウィリング博士シリーズで、1950年に書かれた作品らしい。しかしあまり古さを感じずに読めた。一人の女性教師が、赴任先の学校で、ドッペルゲンガーの現象を生じさせる人物という理由で解雇される。探偵の役割をするウィリング博士がその謎を解明していく話。話の流れもスムーズに進み読みやすい。博士自身は、超常現象を信じているのか信じていないのかあいまいなまま調査をつづける過程は、読者の心理を代弁しているようだった。まさかのほわっとした結末に驚いたが、こういうのもありなのかなと思った。
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サスペンスフルな展開の連続で最後まで飽きることなく読めました。 解雇された理由が徐々に明らかになるにつれ、その不可解性、怪奇性が高まってくる構図は良く出来ています。やがてその不可思議は人を殺すまでに形を為すのですが、ここに来ても事件の構図が一向に見えてこないのが凄い。 そしてラス...
サスペンスフルな展開の連続で最後まで飽きることなく読めました。 解雇された理由が徐々に明らかになるにつれ、その不可解性、怪奇性が高まってくる構図は良く出来ています。やがてその不可思議は人を殺すまでに形を為すのですが、ここに来ても事件の構図が一向に見えてこないのが凄い。 そしてラスト数ページで明かされる真相は、謎の吸引力が凄まじかった分、明かされてみると脱力ものかもしれませんが、落とし所としてはここしかないでしょう。匂いに関するロジックなども見逃せません。 サスペンス×本格の良作です。
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皆川博子先生が推しているというのが一番テンション上がりました。幻想的なミステリー。 「こ、こんな超常現象にちゃんとオチが付くの?」と思わせるところが島田荘司作品ぽく、で、ちゃんと付いていたところに感心。 しかも、それでもなお、人知を超えた何かがあるのではないかと思わせるところが上...
皆川博子先生が推しているというのが一番テンション上がりました。幻想的なミステリー。 「こ、こんな超常現象にちゃんとオチが付くの?」と思わせるところが島田荘司作品ぽく、で、ちゃんと付いていたところに感心。 しかも、それでもなお、人知を超えた何かがあるのではないかと思わせるところが上手い。
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少し昔のアメリカが舞台です。 心霊現象とも思われる現象のドッペルゲンガーをもとにして、話が展開します。 最後の最後まで本当はどうなのかが分からなくて面白かったです。 ひとりで歩く女が好きで、他の作品も読んでみました。 好きな女流ミステリー作家です。
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