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現代文明論講義 の商品レビュー

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2025/04/26

京大で行ったと京大生と佐伯啓思さんの対話形式の授業を書籍化した本。 ニヒリズムという、自分たちがこれまで当たり前だと考えていたものが実は下賤なものであったと分かったときにその考えは無に帰してしまうという考えを基に様々なトピックについて議論していた。 倫理的な問題に限らず、政治...

京大で行ったと京大生と佐伯啓思さんの対話形式の授業を書籍化した本。 ニヒリズムという、自分たちがこれまで当たり前だと考えていたものが実は下賤なものであったと分かったときにその考えは無に帰してしまうという考えを基に様々なトピックについて議論していた。 倫理的な問題に限らず、政治や社会問題についても取り上げており、それらのトピックに対して臆せず取り組む京大生に驚いた。しかし、最も驚いたことは京大生の言語化能力の高さ。京大生の大学1年生を対象とした講義であるということだが、学生全員が根拠を持って自分の意見を述べる姿勢、何について理解できていないかを踏まえたうえで自分の意見を述べる姿勢。同じ大学生として彼らの知性の高さ、教養の深さに対して尊敬すら覚えた。 しかし、最もすごいのは場を取りまとめる佐伯啓思先生。生徒の意見を簡潔にまとめるだけでなく哲学的に抽象化しさらに議論を活発にさせる手腕。 そもそもの知識、教養の深さ。すべてが圧巻であった。 対話形式の授業は、教室を治める教師の力量が最も問われる授業形態であるが、佐伯啓思さんレベルの人間が教壇に立つことでここまで活発な議論が起こるのかと驚かされた。 特に第6講は自分の中でかなり印象に残った章であった。 <印象に残った言葉> ・守るという行為と守るべき対象の創造の主体は同じでなければならない。 →守る主体はアメリカに移った。日本は守られる対象となり主体が分離してしまった。 →我々の中に生きている文化を守ることが文化であり、文化遺産を守ることが文化ではない。 ・日本を守るというが日本の「何を」守るのか? 守るべきものを認識しているか? 守るべき日本の環境や人に対して自分は大事にしている? ・あまりに簡単に生命尊重主義、自由や人権、平和主義、平等主義を高く掲げてしまうと人間の”生”の衰弱というニヒリズムが生じる。 ・生という基盤の上に乗せられる正義や善に対して意識を持つべし ・意識をもつということは自分で動くことであり、順序付けることである。そして、順序付けることである程度一貫した方針を作るのが価値である。価値を持たない人間はバラバラで人格が見えない。

Posted byブクログ

2015/08/07

現在、世界はニヒリズムの危機に瀕している。そしてその最たるは日本である。ニヒリズムとは従来当たり前であった絶対的な価値の崩落、それによる人間の生き方の頽落、そんなところを意味するらしい。例えば絶対的な価値、「人間の命」に対してなぜ人間の命を奪ってはいけないのか、それに対する明確な...

現在、世界はニヒリズムの危機に瀕している。そしてその最たるは日本である。ニヒリズムとは従来当たり前であった絶対的な価値の崩落、それによる人間の生き方の頽落、そんなところを意味するらしい。例えば絶対的な価値、「人間の命」に対してなぜ人間の命を奪ってはいけないのか、それに対する明確な答えが出せない。そんなニヒリズム状態を脱すべく佐伯先生と京大の学生たちとのディスカッションという形を交えながら話が展開していく。政治などが苦手な僕にとってもわかりやすい説明で読書が捗ったが最後の哲学思想のところでわからなくなった。

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2015/07/29

京大の佐伯啓思教授が、ハーバード大学のサンデル教授の白熱教室に着想を得た行った京大生との対話型の講義をまとめている。テーマは、著者が現代文明、特に現代日本社会の最大の課題だと認識する「ニヒリズム(=最高の諸価値の崩落)」である。ニヒリズムが現出しているさまざまな現代社会の問題につ...

京大の佐伯啓思教授が、ハーバード大学のサンデル教授の白熱教室に着想を得た行った京大生との対話型の講義をまとめている。テーマは、著者が現代文明、特に現代日本社会の最大の課題だと認識する「ニヒリズム(=最高の諸価値の崩落)」である。ニヒリズムが現出しているさまざまな現代社会の問題について考えるとともに、ニヒリズムをいかに乗り越えていくかについて考察している。 「なぜ人を殺してはいけないのか」「沈みゆくボートで誰が犠牲になるべきか」という根源的な問いから始まり、民主党政権の問題や尖閣諸島の問題、日本国憲法の問題など時事的な話題に触れ、最後にニヒリズム克服にあたっての日本思想の可能性に言及している。自分の立ち位置について考えさせてくれ、良い刺激となった。また、対話をベースとする講義録なので読みやすく、佐伯氏の主張のよき入門書にもなっている。ただ、京大生との対話が白熱しているかというと、やや予定調和的で少し物足りないという印象も受けた。 佐伯氏の主張自体については、ニヒリズムが根源的な問題ということや、民主主義をうまく機能するには、民主政治の中に民主主義的でないような要素をうまく取り入れることが必要という指摘など、共感するところもあったが、総体としては違和感を覚えた。それは、自分が、価値相対主義にシンパシーを感じているということが影響している。佐伯氏は、価値相対主義は救いようのない矛盾を生むと主張しているが、そもそも命を賭けてもいいと思えるような至高の価値を前提とするから矛盾と感じるのであって、それぞれの人がそれぞれ大切と思うような価値をそれなりに持って共存するということのどこがいけないのだろうか。一種の刹那主義かもしれないが、自分としてはそれでいいのではないかと思う。 また、西田哲学を代表とする日本の「無の思想」の持つニヒリズム克服の可能性については、言わんとすることはわかるような気がするが、もう一つ十分に理解ができなかった。 あと、本筋の議論ではないが、第七講での、天皇理解(天皇の非政治性)は少し皮相的かなと感じた。

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2014/11/05

サンデル教授の本がヒットして、その後、何匹ものドジョウを捕まえようと、似たような本が出版されていますが、本書もその1冊・・・とは、私は思いません。サンデル教授の本自体は売れ過ぎたので読んでいませんが、テレビは何度か拝見しました。確かに話の持って行きようはうまいと思います。本書では...

サンデル教授の本がヒットして、その後、何匹ものドジョウを捕まえようと、似たような本が出版されていますが、本書もその1冊・・・とは、私は思いません。サンデル教授の本自体は売れ過ぎたので読んでいませんが、テレビは何度か拝見しました。確かに話の持って行きようはうまいと思います。本書では、そこまで学生の考えを引き出せていないような気もします。それでも、本書からの気付きはたくさんあります。現代の日本文明を「ニヒリズム」で特徴づけ、そこからいかに抜け出すかのヒントがあります。皆の生命を尊重するあまり、結局全員が死んでしまう救命ボートの話。(10人乗りの救命ボートに11人が乗り込もうとする。だれが犠牲になるのか。年寄りか、犯罪者か、全員の命が同等に大切であるとすると、全員が死なざるを得ない。)ここでも、三島由紀夫に出会いました。晩年(1970年ころ)のことば。「私はこれからの日本に希望をつなぐことができない。このまま行ったら日本はなくなってしまうのではないか・・・その代わりに、無機的な、からっぽな、ニュートラルな、中間色の、富裕な、抜き目がない、ある経済大国が極東の一角に残るのであろう。それでもいいと思っている人たちと、私は口をきく気にもなれなくなっているのである。」西田幾多郎は結局50ページほどで挫折したままですが、本書で少し、ほんの少し分かった気がします。

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2014/11/01
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※このレビューにはネタバレを含みます

[ 内容 ] 「なぜ人を殺してはいけないのか」「なぜ民主主義はうまくいかないのか」―現代の社会の抱えるさまざまな難問について、京大生に問いかけ、語り合う。 若い学生たちの意外な本音から、戦後日本、さらには現代文明の混迷が浮かび上がってくる。 旧来の思想―戦後民主主義や功利主義、リベラリズム、リバタリアニズムでは解決しきれない問題をいかに考えるべきか。 アポリアの深層にあるニヒリズムという病を見据え、それを乗り越えるべく、日本思想のもつ可能性を再考する。 [ 目次 ] 第1講 現代文明の病―ニヒリズムとは何か 第2講 なぜ人を殺してはいけないのか―自由と規範をめぐる討議1 第3講 沈みゆくボートで誰が犠牲になるべきか―自由と規範をめぐる討議2 第4講 民主党政権はなぜ失敗したのか―民主主義をめぐる討議1 第5講 政治家の嘘は許されるか―民主主義をめぐる討議2 第6講 尖閣諸島は自衛できるか―「国を守ること」をめぐる討議 第7講 主権者とは誰か―憲法をめぐる討議 第8講 ニヒリズムを乗り越える―日本思想のもつ可能性 [ 問題提起 ] [ 結論 ] [ コメント ] [ 読了した日 ]

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2014/01/24

現代はニーチェのニヒリズムに陥っている。 生命をかけるほど大切なものはない。反面、平和な時代では生命の大切さは省みられない。 憲法とは 国防とは こんな事を考える材料を与えてくれる本。

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2014/01/22

これは面白かった。サンデル教授の方は一度テレビで見て「つまらん」と思ってそれっきりだったけど、こんな授業なら受けてみたい。 とはいうものの、読んでいるときはすごく面白かったけど、読み終わってみると、なにか空虚さがある。 それは、本ではなくて私だ。 西洋哲学が、どうしても分からない...

これは面白かった。サンデル教授の方は一度テレビで見て「つまらん」と思ってそれっきりだったけど、こんな授業なら受けてみたい。 とはいうものの、読んでいるときはすごく面白かったけど、読み終わってみると、なにか空虚さがある。 それは、本ではなくて私だ。 西洋哲学が、どうしても分からない。端的にいうと、「神」がわからないからだ。神がいるとかいないとか、それにどうしてそこまでこだわるのかが、理屈で分かっても、ほんとうのところで分かっていない。 だから、「どうでもいいことにすごく熱心になっている話」にしか思えなくなっている。 具体的で分かりやすい状況に照らして、ニヒリズムや功利主義やリベラリズムを説明してくれるのはありがたい。私も、いちいち自分だったらどうこたえるだろうかと自問しながら読んだ。優秀な読者ではあるだろう。 しかし、神はどうでもいい私には役に立たない、という気持ちしか残らなかった。

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2013/04/12

サンダル先生の発熱教室(笑)学生とのディスカッションを交えた生き生きとした講義録。現代社会の病理については浮き彫りになったが、最後の西田哲学によるニヒリズムの克服可能性についてもっと緻密に議論を展開してほしかった。

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2012/06/07

あえて自身の主張はしない. しかしながら,根をはった思想家,哲学者たちの主張を紹介しながら,あくまで「己で考えること」を大事にさせる. そんな姿勢で書かれた本. 文体は小気味良く,非常に読みやすい. しかしながら内容は,現代人が一度は考えたこと,感じたことのある,もやもやとした...

あえて自身の主張はしない. しかしながら,根をはった思想家,哲学者たちの主張を紹介しながら,あくまで「己で考えること」を大事にさせる. そんな姿勢で書かれた本. 文体は小気味良く,非常に読みやすい. しかしながら内容は,現代人が一度は考えたこと,感じたことのある,もやもやとした部分を照らし,「お前はどう思うのか」を問うてくる. 最後は加速度的にのめり込んで一気に読んでしまった. これをきっかけにより哲学を学んで,何より自分の考えとその根を探り,再構築していきたいと思う.

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2012/05/14

ニヒリズムを乗り越える鍵は身近にあるのでは《赤松正雄の読書録ブログ》  自分の頭で考えることの大事さ―これって、分かってるようで分かっていない。次々押し寄せる課題に様々な議論やコメントをあまり考えずに、あてがって分かったような気になっていることは多くないか。佐伯啓思『現代文明論...

ニヒリズムを乗り越える鍵は身近にあるのでは《赤松正雄の読書録ブログ》  自分の頭で考えることの大事さ―これって、分かってるようで分かっていない。次々押し寄せる課題に様々な議論やコメントをあまり考えずに、あてがって分かったような気になっていることは多くないか。佐伯啓思『現代文明論講義』は、現代日本では自分の頭で考えるということを回避するといったことが最も進んでいる国だと断言する。  ハーバード大学のマイケル・サンデル教授の「白熱教室」の向こうを張って、「サンダル教授の発熱教室」ってタイトルを考えたというから笑ってしまう。サブタイトルにあるように「ニヒリズムをめぐる京大生との対話」の形式をとっている。何人かがサンデル教授の真似をして、この手の対話教室を試みているが、あまり成功していない。恐らく、「誌上対話」としては、佐伯さんの右に出る人はいないものと確信する。  ニヒリズムとは、「最高の諸価値の崩壊」だ、と。ヨーロッパが生み出してきた道徳や知識、理想といったものが行き詰まっていることをさす。つまりは、「思想的な問いかけそのものが意味をなさない時代」が今であり、「刹那主義的快楽主義がこの世を覆っている」というのが西欧近代の行き着いた到着点だという。確かに現代日本の状況は残念ながらそうした指摘が的を射ていると言わざるをえない。  佐伯さんは、この本の中で、「なぜ人を殺してはいけないか」「沈みゆくボートで誰が犠牲になるべきか」といったサンデル教室でおなじみの自由と規範をめぐる討議を京大生たちとかわし、さらには「民主党政権はなぜ失敗したのか」「政治家の嘘は許されるか」といった民主主義をめぐる討議を展開している。これらもそれぞれ興味深いが、私としては「尖閣諸島は自衛できるか」との国を守ることをめぐる討議が面白かった。「戦争がないという意味では日本は平和ですが、それであるがゆえに逆に命の尊さが実感できない」との逆説には考えさせられる。戦後日本のあらゆる意味での沈滞と荒廃は実はここに尽きているのではないかと思う。  「生命尊重主義、自由や人権や平和主義、平等主義といった近代的な理念を高く掲げると、人間の生の衰弱というニヒリズムに陥ってしまう」とのニーチェの指摘はなかなかに覆しがたい。佐伯さんは、「自分で考えるということを回避した結果、状況追従が最も著しく進んでいる国が日本だ」として、「ある意味でニヒリズムに非常に親和的な国だ」とまで言い切っている。  最終章で佐伯さんは、「ニヒリズムを乗り越える鍵を握るのが西田哲学であり、広い意味での日本思想にひかれる」としている。この結論にはいささか物足りなさを禁じ得ない。確かに西田哲学、京都学派は西欧哲学への対抗を試みた唯一のものかもしれない。だがもっと根本のところで、東洋の哲理を忘れてはいないかとの思いが私には強い。西欧哲学の否定とそれに代わりうる東洋の哲理を宣揚する作業は待望されて久しいが、残念ながら体系だったものは眼前に未だ登場していないように思われる。

Posted byブクログ