太宰治の愛と文学をたずねて の商品レビュー
松本侑子さんの作品、先日読んだ「恋の蛍 山崎富栄と太宰治」の主人公は冨栄でした。太宰については晩年と情死の時期です。本書「太宰治の愛と文学をたずねて」(2011.6.19)は、太宰の幼い頃から晩年まで、太宰治の生涯をめぐる旅がエッセイ風にまとめられています。太宰は、老い以外のすべ...
松本侑子さんの作品、先日読んだ「恋の蛍 山崎富栄と太宰治」の主人公は冨栄でした。太宰については晩年と情死の時期です。本書「太宰治の愛と文学をたずねて」(2011.6.19)は、太宰の幼い頃から晩年まで、太宰治の生涯をめぐる旅がエッセイ風にまとめられています。太宰は、老い以外のすべてを書いた愛と青春の作家。日本の一都八県の旅です。まずは、津軽から。「東京八景」「富嶽百景」「津軽」「斜陽」などを経て、最後は「人間失格」(熱海、大宮、三鷹)。
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太宰の足跡をたどった伝記が著されているが、願わくば松本侑子さんの旅日記としての作品に仕上げて欲しかった。現地で取材され、撮影された写真により、現風景から感じたものを深く描写されていると魅力的だ。
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文学紀行の定義はよく知らないが、本書は太宰の自伝的小説をベースに生涯の土地を訪ねるというもので、太宰の人生や性格等々がよくわかり、大変面白く、非常に良くできている。掲載されている写真も著者自身で撮影しているようだが、プロカメラマンのように上手い。 足跡を辿るにあたって、太宰が訪れ...
文学紀行の定義はよく知らないが、本書は太宰の自伝的小説をベースに生涯の土地を訪ねるというもので、太宰の人生や性格等々がよくわかり、大変面白く、非常に良くできている。掲載されている写真も著者自身で撮影しているようだが、プロカメラマンのように上手い。 足跡を辿るにあたって、太宰が訪れたのと同じ季節に同じ宿に泊まり、同じモノを食べ、同じ温泉に浸かるという執念とも思える程の念の入れようで、もちろん作家なので文章力も素晴らしく、著者の太宰への想いがとてもよく伝わってくる。特にp188の人間失格の解説は素晴らしい。
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松本さんといえば「恋の蛍」が素晴らしかった。 こちらは小説ではなく、エッセイです。 著者のデビュー作は「人間失格」を下敷きとしているらしい。読んでみよ。
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太宰の人生を総括的に知ることができる本。各作品を引用していて、どのような状況を背景に彼の作品が誕生したかがよくわかった。もう少し深みがあってもよかったかな。
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(2011.06.27読了)(2011.06.16借入) 2009年は、太宰治の生誕100年ということで、何冊か太宰関連の本を読みました。 太宰の作品を読めばいいのにとか思いながらも周りをうろうろしてばかりです。 今回も、「恋の蛍」を書いた著者が、太宰のことを書いた本ということで...
(2011.06.27読了)(2011.06.16借入) 2009年は、太宰治の生誕100年ということで、何冊か太宰関連の本を読みました。 太宰の作品を読めばいいのにとか思いながらも周りをうろうろしてばかりです。 今回も、「恋の蛍」を書いた著者が、太宰のことを書いた本ということで、借りてきました。 「この本では、太宰の自伝的小説を、幼いころから順に読んで、人生の足跡、心の軌跡をたどり、日本の一都八県を旅しよう。それは、力強く生きていく太宰の旅である。」(21頁) 「彼は孤独ではなかった。いつも誰かを愛し、愛され、気づかってくれる人々がいた。その境遇が、どれだけありがたく、恵まれているか、本当のところはわかっていなかったのだろう。周囲の恩愛に甘えるように、死を選んでしまった。」(205頁) 太宰治の作品を上手に引用して、太宰の生涯をたどって見せてくれていますが、「太宰が行った土地に立って、初めてわかったことが、やはり多かった。その風景に身をおくことで、太宰の心境を、より深く理解できた。」(205頁)というあたりのことが、この作品には、十分盛り込み切れていないように思います。 とはいえ、太宰の作品で読むべきものがまだまだ残されていることはわかりました。気が重いけど、楽しみでもあります。 ●高校時代(61頁) 人の言動には、だれしも矛盾があるものだが、左翼運動をしながら、兄からの多額の仕送りで花柳界に遊んでいた不合理を、頭のいい太宰はどう考えていたのか・・・。あるいは、そうした支離滅裂な自分をどうしてよいのかわからないもどかしさから、若い彼は自分に絶望して、睡眠薬を飲んだのかもしれない。 ●紀行文「津軽」(114頁) 太宰は、故郷に暮らす懐かしい人々との交歓に的をしぼった。それによって、「津軽」はありきたりの紀行文とならず、小説風の味わいもたたえ、読者に感動をのこす名作となった。 ●津軽の誇り(123頁) 『津軽』では、佐藤弘という理学士の文章から、「米を作って林檎を売り、鬱蒼たる美林につづく緑の大平原には毛並輝く見事な若駒を走らせ、出漁の船は躍る銀鱗を満載して港にはいるのである。」と引用して、田畑の恵み、森と海の豊かさ、津軽人の情けを、生き生きと、誇らしく描くのだ。 ●文士徴用(134頁) 昭和16年11月、太宰は、文士徴用の身体検査をうけている。 身体検査の結果、太宰は、肺浸潤と診断された。そのため徴用は免除され、兵役につくこともなかった。 ●魯迅を描いた「惜別」(142頁) 満州をはじめとする中国大陸に日本人と軍が進出していた時代に、この小説は、太宰が政府に気をつかい、神経をすり減らして書いたのだろう。平明な言葉づかいでありながら心を深くゆさぶる文章を書く太宰が、この小説にかぎっては、もってまわった言いまわしで、読みにくい表現がめだつ。 ●「冬の花火」(156頁) 気の合った友達ばかりで田畑を耕し、桃や梨や林檎の木を植えて、ラジオも聞かず、新聞も読まず、手紙も来ないし、選挙もないし、演説もないし、みんなが自分の過去の罪を自覚して気が弱くて、それこそ、おのれを愛する如く隣人を愛して、そうして疲れたら眠って、そんな部落を作れないものかしら。 ☆太宰治の本(既読) 「晩年」太宰治著、新潮文庫、1947.12.10 「斜陽」太宰治著、新潮文庫、1950.11.20 「ヴィヨンの妻」太宰治著、新潮文庫、1950.12.20 「津軽」太宰治著、新潮文庫、1951.08.31 「人間失格」太宰治著、新潮文庫、1952.10.30 「走れメロス」太宰治著、新潮文庫、1967.07.10 「地図-初期作品集-」太宰治著、新潮文庫、2009.05.01 ☆関連図書(既読) 「空色のアルバム」太田治子著、構想社、1979.05.31 「回想の太宰治」津島美知子著、人文書院、1978.05.20 「太宰治との愛と死のノート」山崎富栄著、女性文庫、1995.12.20 「太宰治への旅」長部日出雄著、日本放送出版協会、1998.01.01 「回想太宰治」野原一夫著、新潮社、1998.05.25 「斜陽日記」太田静子著、小学館文庫、1998.06.01 「津軽・斜陽の家」鎌田慧著、祥伝社、2000.06.10 「明るい方へ」太田治子著、朝日新聞出版、2009.09.30 「恋の蛍」松本侑子著、光文社、2009.10.25 (2011年6月28日・記)
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