笛吹川 の商品レビュー
分かりづらく凄いものを読んでしまった感。 表題の笛吹川に沿って、武将と農民の六代に渡る盛衰を淡々と見せられてしまう。 町田康氏の「どうにもならない」というあとがき題が印象的。読後は呆然。
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戦国武田氏の支配する甲州が舞台である。この作品はいわゆる戦国物と違い、農民が主人公で、戦乱の中で虫けらのごとく殺されて行ったある一族六代の物語だ。兵農分離が進んでいない甲州では農民が戦に出ており、主家との確執もあって、半蔵の一家では殺された者も多い。しかし、物語の終焉には武田家の...
戦国武田氏の支配する甲州が舞台である。この作品はいわゆる戦国物と違い、農民が主人公で、戦乱の中で虫けらのごとく殺されて行ったある一族六代の物語だ。兵農分離が進んでいない甲州では農民が戦に出ており、主家との確執もあって、半蔵の一家では殺された者も多い。しかし、物語の終焉には武田家の滅亡とともに取り立てられた惣蔵、安蔵、平吉をはじめウメ、おけいまで死ぬ。その残酷さにはただただ戦慄を覚えた。
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楢山節考の深沢さん、小説を読むのは7年ぶりくらいか。甲州武田家の盛衰に合わせ、無惨に殺される農民一家。次々に生まれては、次々に殺される。武士の機嫌やなんでもない病気、ちょっとした不注意や勘違いなどで呆気なく死ぬ。知恵も金もツテもない。実際にこんなふうだったんだろうなと思わせるリア...
楢山節考の深沢さん、小説を読むのは7年ぶりくらいか。甲州武田家の盛衰に合わせ、無惨に殺される農民一家。次々に生まれては、次々に殺される。武士の機嫌やなんでもない病気、ちょっとした不注意や勘違いなどで呆気なく死ぬ。知恵も金もツテもない。実際にこんなふうだったんだろうなと思わせるリアリティを感じる。リアルすぎて、救いがなく、嫌な感じ、残念な感じが残る。みてきたかのように描く筆力がすごい。
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同郷の出身であること、楢山節考の作者であることは知っていたが、それ以上の知識はなかった深沢七郎の作を初めて読んだ。生のままの甲州弁で紡がれる武田三代の時代に生きた農民一族の物語は、荒々しくあり、リアルであり、熱っぽく、と同時に一歩俯瞰した冷徹さも感じ、密度濃く迫ってくる作品だった...
同郷の出身であること、楢山節考の作者であることは知っていたが、それ以上の知識はなかった深沢七郎の作を初めて読んだ。生のままの甲州弁で紡がれる武田三代の時代に生きた農民一族の物語は、荒々しくあり、リアルであり、熱っぽく、と同時に一歩俯瞰した冷徹さも感じ、密度濃く迫ってくる作品だった。面白いとは言いがたく、読みやすいとも言いがたく、いや、地元の方言だから読み易いのか、しかし一気に読ませる魅力があり、なんとも評価し難い。モヤモヤが残るが、それが決して嫌ではなく、手に余るこの圧倒された感は逆に清々しい。
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最後の数十ページの怒涛のような、しかし妙に静かな一族の死に様に圧倒される。 作品全体を通して誰も彼も死んでいき、特にその悲哀も語られないままなので、このまま終わるのかしらと思っていたら、息子たちの「先祖代々お屋形様にお世話になったのに」発言である。ゾッとした。なんと人間は矛盾した生き物であることか。 その淡々とした筆致に全く作為的なものが感じられないのにも関わらず、最後まで読むと恐ろしいほどの完成度に舌を巻いた。これが著者の初長編とは、やはり深沢七郎は怪物作家である……。
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このころの農民の命の重さが悲しい。親方様に従うのが悲しい。はらはらしながらよんだ。 お爺が粗相をして殺されたシーンが辛かった。足を怪我して手当じゃなく。汚したとして殺された。 最後まで褒美なんて貰えるはずもないものをきたいしてて。辛い。 すきなのはおけい。おけいがこどもが生まれない理由を責められて暇をいただきやす。とあっさりでていつたとこはかっこよかった。素直で働き者でマッぐな正確がとても羨ましい。 ボコ。戦。農民。 巻き込まれてしまうのは弱者。生まれ変わりの考え方が興味深かった。たくさんの人が死んでしまった。死には意味はないかもしれないけど、平和だったら生はまっとうできたのになとおもう。
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戦国時代、農村の、片目がつぶれてもうひとつの目も視力が悪いおけいが結婚して夫にいたわられたりしながら家族を思って生きていくのがたんたんと書かれてる。農民を、美人でもなければ特別いじめられるのでもない人を主人公にしてるのが良い。
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何かの書評で読んで興味を持って購入したのですが、想像以上にのめり込んで一気に読めました。 ただし、文庫で1,400円は高い・・・
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戦国時代を舞台にした小説といえば、通常は戦国大名やその家臣の活躍を描いた歴史小説が挙げられるであろう。本作もまた武田信玄軍の一員を主人公にしているのだが、しかしその身分は武士ではなく、みずから軍に加わった農民である。これだけでもめずらしい設定であるといえるが、しかし本作の特異な点...
戦国時代を舞台にした小説といえば、通常は戦国大名やその家臣の活躍を描いた歴史小説が挙げられるであろう。本作もまた武田信玄軍の一員を主人公にしているのだが、しかしその身分は武士ではなく、みずから軍に加わった農民である。これだけでもめずらしい設定であるといえるが、しかし本作の特異な点を挙げるとすれば、そのようなことではないであろう。とにかく、人が死ぬのである。中上健次の「紀州サーガ」にも似たような、田舎の前時代的な社会を描いているため、系図がないと容易に把握できないぐらい多くの人物が登場するのであるが、その大半がつぎつぎに亡くなってしまう。当時の平均寿命などを考えれば、それはとくにおかしいわけでもないのかもしれないが、とにかくぞっとしない。しかしほんとうに恐ろしいのは、それがあまりにも淡淡としすぎている点である。死に特有のあの饐えた臭いはいっさい放たれることがなく、きわめて事務的につぎつぎと人が亡くなってゆく。猟奇的趣味から人を殺しているわけではないことはあきらかであるが、しかしこれははたしてほんとうに小説と呼べるのか。そう思ってしまうくらい、とにかく無機質で無味無臭な小説である。死というものを小説に登場させる場合、どうしたって多少は感傷的になってしまいがちであり、そういう意味では間違いなく小説としての技術は高い。だけど、いち読者としてこういった描写と向き合った場合、どうしてもその意義を疑問に思わざるをえない。解説によれば「『笛吹川』論争」が評論家のあいだで勃発したらしいが、なるほどそれも納得である。おもしろいかおもしろくないかでいえば、けっしてつまらないわけではないのであるが、読後の感想としては、なによりも「こういう小説もあるのか」という感じが強い。
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戦国時代、山梨県甲府の近くに流れる笛吹川の川沿いに住み、武田家に仕えた百姓の話。時代小説は町民やお役人、武士を描いてるモノばかり読んできた中で、この小説は昔の貧しい百姓の暮らしぶり、人の生き死にが淡々と描かれていると思う。死生観も大きく変わったような気がする。昔々人の死は自然の一...
戦国時代、山梨県甲府の近くに流れる笛吹川の川沿いに住み、武田家に仕えた百姓の話。時代小説は町民やお役人、武士を描いてるモノばかり読んできた中で、この小説は昔の貧しい百姓の暮らしぶり、人の生き死にが淡々と描かれていると思う。死生観も大きく変わったような気がする。昔々人の死は自然の一部であった頃のお話し。これを読むと数々読んだ養老猛司の著書にシンパシィを感じる。
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