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宗教を生みだす本能 の商品レビュー

4.2

20件のお客様レビュー

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2013/07/20

宗教行動や信仰心は本能的なもので、進化の過程で生存上有利に働いたそうな。 人類の祖先の最大の外敵は他の獣ではなく同じ人間で、人間同士の戦闘が絶えなかった。ほかの人間への防衛策として集団生活を行うようになり、ここでまず道徳(善悪の感覚)が生まれた。道徳の存在理由は他の人間集団との...

宗教行動や信仰心は本能的なもので、進化の過程で生存上有利に働いたそうな。 人類の祖先の最大の外敵は他の獣ではなく同じ人間で、人間同士の戦闘が絶えなかった。ほかの人間への防衛策として集団生活を行うようになり、ここでまず道徳(善悪の感覚)が生まれた。道徳の存在理由は他の人間集団との争いに勝つために必要な結束を作り出すこと。戦闘が道徳を生み、利他主義と攻撃性は共進化した。 500万年前、チンパンジーとの共通祖先から分かれる前まではボスによって支配される階層社会だったが、そこから脳の発達した後の狩猟採集社会では完全な平等主義。この移行期に宗教が生まれた。知性の高まりは寄食者を生み、内部(寄食者)と外部(戦闘)の脅威に対する防衛策として道徳システム(殺人、虚言、窃盗の禁止、集団全体のためになる利他主義の奨励等)を発達させたが、道徳だけでは不十分だった。ここで宗教登場。神や祖先の霊等の超自然的監督者・懲罰者への信仰によってより強い社会的結束が実現され、平等主義が徹底された。 超自然的存在を信じた人々は信じない人々より結束力があり、より多くの子孫を残すことができ、我々の祖先となった。 宗教には個人的側面もあるが、進化にとって重要なのはより多くの子孫を残せるかどうかの一点のみ。信仰の満足は人を宗教の実践に向かわせるが、宗教の進化論的機能はあくまで人を結束させ集団の利益を個人の利益に優先させること。進化論的観点からの宗教の定義は 『感情に働きかけ、人々を結束させる信念と実践のシステム』。 初期の宗教では舞踏や音楽を通して共同体が一体となり、トランスの恍惚を求める性質と超自然的存在への強い関心が引継がれていった。 1万5千年前に定住社会が出現すると原始宗教は徐々に抑圧され、聖職者のみが儀礼を司り、超自然界との交流を独占したが、神との直接の交流と恍惚を求める人々の性質を如何に抑えこむかという問題が常につきまとい、抑圧に失敗するたび、新たな宗派が生まれていった。 宗教は社会が変わるたびに生じる新しい要求に応えるために何度も作り変えられてきた。宗教が今も廃れずにいるのは人が何かを信じたいと思っているからであって、宗教に歴史的合理性があるからではない(聖書がツギハギだらけで科学的にも間違っていることは既に暴かれた)。宗教行動が進化したただひとつの理由『人間社会がより長く生き残れるようにするため』に、現代社会に合う形で変わっていくべき。 宗教行動を適応とみなすには自然淘汰が個体レベルではなく集団レベルに働くことを認める必要があるが、本当に集団選択が起こるのかわからない。 面白かったけどあまり論理的ではない。

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2012/10/10

宗教は本能的なのであり、社会活動の結果である事はわかったが、ビジネスとしてや紛争の原因と成っている今、必要悪であると感じた。先進国である現代の日本のように、無宗教の人が増えている現実を踏まえると、本能とは言わずとも、合理的行動という言葉の方が腑に落ちる。

Posted byブクログ

2012/07/23

「神は死んでない」 (『宗教を生みだす本能 ―進化論からみたヒトと信仰』読み終わり) 久々のブックレビューは読書会で扱ったこの本。 宗教の起源や三大宗教の成り立ち、これからの宗教の在り方について書いてある、とても面白い本でした。 宗教は、人間集団が生き延びるために本能が開発し...

「神は死んでない」 (『宗教を生みだす本能 ―進化論からみたヒトと信仰』読み終わり) 久々のブックレビューは読書会で扱ったこの本。 宗教の起源や三大宗教の成り立ち、これからの宗教の在り方について書いてある、とても面白い本でした。 宗教は、人間集団が生き延びるために本能が開発したシステムなのだそう。 個人が集団の中で生き延びるために培ってきた本能として、「友好関係」「共感」「社会ルールの学習」「互恵の観念」がある。それらを集団で共有すれば、集団は結束しますし、そうすれば生存競争にもより強くなります。その過程で、宗教が作りだされてきたというわけです。 宗教というシステムで一番興味深いのは"神"(抽象的な言い方だと、超自然的存在)の存在。これにより、集団の構成員は心のよりどころを得、未曾有の出来事に対しても立ち向かえるようになると同時に、"罰"を恐れ、ルールに外れたことはしなくなります。"神"の存在は感情に直接訴えてきます。理屈ではないので従わざるを得ない。 現代になり、宗教の力は昔に比べ弱まってきました。理由の一つは、歴史の検証が高度になり、宗教の前提となる「神による啓示」のフィクション性が高まったからです。また、地域によってですが、法律や社会保障制度などが整備されてきたのも理由の一つかもしれません。宗教を信じなくてはならないほど生存競争が激しくないからでしょうか。 それでは、宗教はもう"時代遅れ"なのでしょうか。その役目は道徳の教科書や、SNSにとって代わられるのでしょうか。 私はそうは思いません。人生で起きる様々なことの全てが予測可能でない限り、そして、この世の過去と未来の全てが解き明かされない限り、"神"は生き続け、宗教はなくならないでしょう。今の宗教の問題点は無理をして伝統的正当性を主張したからだと思います。神は概念である以上伝統的なものではなく、カリスマ的なものです。 神秘的な存在があり、それに人々が心を寄せ、自らの生き方を省みる限り、そこに宗教は存在し続けるのです。

Posted byブクログ

2012/06/13

宗教の本質 道徳的本能 宗教行動の進化 音楽、舞踏、トランス 太古の宗教 宗教の変容 宗教の樹 道徳、信頼、取引 宗教の生態学 宗教と戦闘 宗教と国家 宗教の未来

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2012/07/27

進化論に着目した点は面白かったが、いまいち刺さらなかった。 こんなもんか、という印象。 序盤のつかみはとても良い。

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2012/02/13

 池田信夫さんのブログでしった本。  連続して宗教の本。ただし、著者はイギリスの科学ジャーナリストだそうで、日本の宗教への記述はほとんどない。 (1)宗教は、恐ろしい超自然的な存在を信じさせることによって、共同体の団結心を強め、平時、戦時での生き残り、困難な目標達成に役だった...

 池田信夫さんのブログでしった本。  連続して宗教の本。ただし、著者はイギリスの科学ジャーナリストだそうで、日本の宗教への記述はほとんどない。 (1)宗教は、恐ろしい超自然的な存在を信じさせることによって、共同体の団結心を強め、平時、戦時での生き残り、困難な目標達成に役だった。こいうことを信じる集団は生き残りの確率が高く、この団体がもつ遺伝子が生き残っていった。(p50)  こういうと、もともこもない感じもするが、説得力はある。 (2)ボウルズは利他主義と戦闘は共進化したという。(p83)  たゆみない戦争の継続と同時に、他人を思いやる利他主義が併存する現在からみると、そのとおりかと思う。もしかしたら、利他主義は、最初は自分の共同体の中の利他主義が拡大していったのかもしれない。これは自分の意見だが、そうすれば、共同体の外へは戦闘をし、内部では利他主義がはびこるという合理的な行動になるような気がする。 (3)宗教は、道徳と信頼、さらには通商制度、生殖活動に大きな影響を与える。(p214)  この手の文化人類学、社会学の視点から宗教を分析すると、もともこもない感じがする。  あと、日本の宗教観は、神道、仏教、そして大陸からはなれた国家でつちかわれたもので、かなりかわったもののような感じがする。  日本の宗教も科学的に文化人類学的に分析した本を勉強してみたいな。

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2012/02/06

文化に進化論的視点を持ち込む(≒普遍性を見出す)ことを思考停止して放棄していた身としてはなかなか衝撃的な本。

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2011/11/30

原題「The faith instinct: How religion evolved and why it endures?」 邦題の「宗教を生み出す本能~進化論からみたヒトと信仰~」の題名からも分かる通り、普通、科学とはどのようにその現象が起こるのかについてが中心的な課題であ...

原題「The faith instinct: How religion evolved and why it endures?」 邦題の「宗教を生み出す本能~進化論からみたヒトと信仰~」の題名からも分かる通り、普通、科学とはどのようにその現象が起こるのかについてが中心的な課題である。その現象が、どうして起こるのかについては科学の範疇では無い。それは哲学の問題となる。 本書は、まさに、「なぜ」宗教が生まれ、それが「いかに」発展してきたか理路整然と説明している。 このような問題を論じる上で、宗教は遺伝的な要素によるものなのか、それとも後天的つまり、親が神を信じ、祈りを捧げているために子もそのように信仰するようになるのかが問題となる。 宗教にあまり馴染みがないと後者によるものだと簡単に考えてしまうが(私だけか笑)、筆者の主張は前者である。厳密に言うと、先天的な要素(筆者はそれは道徳性と呼んでいるが)があり、それが親から子に受け継がれることで生存上優位に立つことができるということ。正にCharles Robert Darwinの生物学的進化論の宗教版といったところである。

Posted byブクログ

2011/10/03
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

宗教は古代のソーシャルメディアだ、そしてつながりなしにヒトは生きていけないが結論なのかな? 考古学の研究結果からいってもエクソダスなかったんじゃ、とかそういう身もふたもない話がいっぱいでほっとします。

Posted byブクログ

2011/05/03

今、宗教に注目する理由はいくつかある。思い返せば、地下鉄サリン事件が起きたのは、阪神淡路大震災が起きた二ヵ月後だったわけだし、ビン・ラディン殺害の余波だって油断はできない。人は自分の想定を超えるような出来事が起こると、超自然的なものへと導かれやすい傾向にあるのだ。 本書の著者は...

今、宗教に注目する理由はいくつかある。思い返せば、地下鉄サリン事件が起きたのは、阪神淡路大震災が起きた二ヵ月後だったわけだし、ビン・ラディン殺害の余波だって油断はできない。人は自分の想定を超えるような出来事が起こると、超自然的なものへと導かれやすい傾向にあるのだ。 本書の著者はイギリスのサイエンス・ジャーナリスト。科学を生業とする人には、宗教に批判的な人も多い。有名なところで言うと、本書にも登場するスティーブン・ピンカーやリチャード・ドーキンスなど。リチャード・ドーキンスに至っては『神は妄想である』という著者まで出しているくらいだ。仮に公言していないにしても、科学と宗教の間には埋めがたい溝がある。 ところが、本書のスタンスは一風変わっている。宗教の必然性を、人間の進化学的な見地から解明しようという野心的なものである。 ◆本書の目次 第1章 宗教の本質 第2章 道徳的本能 第3章 宗教行動の進化 第4章 音楽、舞踏、トランス 第5章 太古の宗教 第6章 宗教の変容 第7章 宗教の樹 第8章 道徳、信頼、取引 第9章 宗教の生態学 第10章 宗教と戦闘 第11章 宗教と国家 第12章 宗教の未来 人間には本来、道徳的判断にかかわる脳内神経回路が存在しているという。この先天的に保持する道徳的直観の存在ゆえに、宗教は普遍性を生み出しており、世界中に存在する宗教には共通点も多い。誕生、成長、結婚、葬送などの通過儀礼や、そこに伴う音楽などもその一例である。 これらの道徳規範は、集団の淘汰と直結した。個体より集団全体に利益を与える遺伝子の方が一般化するという説は、ダーウィンのあまり知られていない主張である。これらの道徳的規範を守るためのソリューションとして宗教は生まれてきたというのである。 このように宗教と人間との関連性を、生物学、社会科学、宗教史的な観点から分析している点こそが、本書の最もユニークな点である。その他にも、三大一神教や太古の宗教の検証、宗教と経済活動、社会形成、戦争との関連にも丹念に触れており、全編を通して理路整然としている印象を受ける。 しかし著者も、諸手をあげて宗教を容認している訳ではない。現在の宗教は、複雑さを増す人間社会の変化に遅れをとっていると指摘し、第二の転換期を迎えるべきと主張する。 宗教が司ってきた道徳的規範の構成要素は、「友好関係」、「共感」、「社会ルールの学習」、「互恵の観念」であるそうだ。この四つのキーワードを見て、いささかの衝撃を受けた。ひょっとすると、宗教の役割は、ソーシャルメディアに取って変わられつつあるのではないだろうか。

Posted byブクログ