消えゆく同潤会アパートメント の商品レビュー
日本の集合住宅史に名を残す同潤会アパートメント。 『世界一美しい団地図鑑』(https://booklog.jp/item/1/4767813956)で知り、和洋折衷でレトロな内外装に惹かれた。 本書巻頭のカラー写真、夕映えの外観の清砂通りアパートメント、同じく清砂の台所。木目...
日本の集合住宅史に名を残す同潤会アパートメント。 『世界一美しい団地図鑑』(https://booklog.jp/item/1/4767813956)で知り、和洋折衷でレトロな内外装に惹かれた。 本書巻頭のカラー写真、夕映えの外観の清砂通りアパートメント、同じく清砂の台所。木目シートの扉の他、天井から吊るされた裸電球やアルミ鍋、ガス釜など小物類もたまらなくノスタルジック。 同潤会及び集合住宅史の解説にはじまり、同潤会アパートメントの集大成ともいえる江戸川アパートメントの室内、共用部、電話機やエレベーターなどの設備など、今ではもう目にすることが叶わない内外部を多くの写真と図面で紹介されている。 時代的にも写真はセピアやモノクロのものが多くはあるが、オリジナルデザインの独身部屋の六角窓、欄間や襖の引手部分、壁紙の柄、色褪せない魅力を感じる。 江戸川以外の同潤会アパートメント…鉄筋コンクリート造の集合住宅全16棟の物件概要も平面図、立体模型が掲載されており、比べてみるのも面白い。 どのアパートも倍率が非常に高く、人気物件だったことが伺える。 コスパの良さを追い求めた現代の集合住宅は住み心地もよく量産が可能だが、画一的でどの新築も同じような表情をしている。 もし自分が建築やリノベーションに関わる機会があれば、同潤会アパートメントを思わせるようなテーマで部屋を作ってみたい。 編者の一人である橋本文隆氏の綴るあとがきに思わず涙ぐんでしまった。 誕生から三十数年、そして自らが再建に関わる理事となってからの再びの十年を過ごした江戸川アパートメント。法の枷、バブル崩壊の経済事情、住民同士の意見の相違、誹謗中傷、一つ一つ消えていく窓の灯、光熱水路の停止する日、叶わなかった保存、取壊しの瞬間はどんなに胸のつぶれる思いだったろう。 本書が発行された2003年当時は、三ノ輪・上野下の2棟が残っていたそうだが、2009年に三ノ輪が、そして2013年には最後の同潤会アパートメント、上野下が取り壊しとなった。 様々な事情があったとはいえ、一部は保管されているとはいえ、近代化遺産ともいえる貴重な建物が一棟も現存していないことは誠にさみしく残念に思う。
Posted by
- 1
