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ジェイコブズ対モーゼス の商品レビュー

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13件のお客様レビュー

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2011/07/07
  • ネタバレ

※このレビューにはネタバレを含みます

以前住んでいたNYC。そして今の仕事の関係上、興味深く読んでみました。 内容は、というと、1950年代から60年代にかけて「マスタービルダー」と称されるモーゼスが推進したニューヨークの再開発を、高卒のフリージャーナリスト?、ジェイコブズが阻止した事件を主題にした本。モーゼスが推進したのは、計画やコンセプト抜きで多様なものが混在する都市を、商業区や住宅区に分け、それらを高速道路網でつなぐ現代都市のプランニング。 それに対して、住民が住んでこその「都市」なのだから、自然発生的な街並みがベストであり、住民の意向を尊重した町並みを維持しなければその都市の発展はないとするジェイコブズ。 常日頃「Sence of Place(その場所独特の雰囲気)」を念頭に於いて仕事をしてる立場からは、ジェイコブズに賛同できることも多かったのですが、でもだからといって、自然発生的な街並みがベストだという主張は別問題だと思ってもいて・・・。よりよい街並みを構築するためには、行政が大胆な都市再生をしなければならない場合が多々あるのも実情ですし。 「都市の再生は行政が計画することで可能になるというモーゼスと、都市は自己再生力を持っていて有機的な自己発展が可能だと信じているジェイコブズとがいて、二人とも決して譲歩しないのだ。振り返れば、都市再生にはどちらの考えも重要な視点であり、バランスがとられるべきだったのに、譲歩なき闘いだったから、ふたつの考えの対立は拡大していくばかりで、決して交わることはなかった。」という訳者渡邉泰彦氏の指摘には全面的に賛同しつつ、読了。 東北の復興は日本でこれからどのように展開されていくのか・・・。

Posted byブクログ

2011/06/22

ジェーンジェイコブスが、再度見直されている。24年前、アーク都市塾を始めた時、伊藤滋さんが参考図書として挙げていた「アメリカ大都市の死と生」が再度蘇ってきた。生活者視点でまちを見ようとするジェイコブスに対するモーゼスは、開発志向型のリーダーであり、両者の確執は現在までも残っている...

ジェーンジェイコブスが、再度見直されている。24年前、アーク都市塾を始めた時、伊藤滋さんが参考図書として挙げていた「アメリカ大都市の死と生」が再度蘇ってきた。生活者視点でまちを見ようとするジェイコブスに対するモーゼスは、開発志向型のリーダーであり、両者の確執は現在までも残っている。モーゼス型の企業に長きに亘り、務めてきた私としては考えさせらる本である。この対極的な見方が対立しないようにしていくこともまちづくりの大事な一歩になるように思う。

Posted byブクログ

2011/06/06

1950年代半ばのニューヨーク、一人の男が大胆な都市計画を実行しようとしていた。男の名前は、ロバート・モーゼス。ニューヨークにおける都市再生の推進者で、マスタービルダーの異名を取る人物。狡猾さと専門的知識を武器に官僚的な駆け引きを繰り返し、五代のニューヨーク市長、六代の州知事に使...

1950年代半ばのニューヨーク、一人の男が大胆な都市計画を実行しようとしていた。男の名前は、ロバート・モーゼス。ニューヨークにおける都市再生の推進者で、マスタービルダーの異名を取る人物。狡猾さと専門的知識を武器に官僚的な駆け引きを繰り返し、五代のニューヨーク市長、六代の州知事に使え上げたという。 モーゼスの構想は、ワシントンスクウェアの公園を半分に割って、中央に車道を通すというものであった。五番街を延伸することによって、近代的な道路網と巨大住宅再開発事業が組み合わせることが可能になるのであった。ここに立ちはだかったのが、地元に住む住民代表でフリージャーナリストでもあったジェイン・ジェイコブズ。本書は、その開発と保全を巡る壮絶な闘いの記録である。 ◆本書の目次 序章  混乱と秩序 第1章 スクラントン出身の田舎娘 第2章 マスター・ビルダー 第3章 ワシントンスクウェアパークの闘い 第4章 グリニッジビレッジの都市再生 第5章 ローワーマンハッタン・エクスプレスウェイ 終章  それぞれの道 主婦でもあるジェイコブズは、「ダウンタウンは人びとのものである」という言葉を核に運動を拡大し、結果的にワシントンスクウェアパークの計画は頓挫する。しかしこの事実に内包されているのは、地元を思う熱い気持ちが、巨大なものを退けたという単純な勧善懲悪のストーリーだけではない。彼女を勝利たらしめたものは一体何であったのか?それが、本書の大きなテーマの一つである。 ジェイコブズは、都市を呼吸する生命体として捉えており、一見無秩序に見える多様性にこそ価値があると考えている。この目線は、地元住民でありながら客観性を帯びており、その観察眼は鋭い。彼女はその当事者性を、報道関係への注目惹起のために狡猾に利用しているようにも思える。そして、トップダウンの大きな決定に順応することを潔しとしないその胆力には、敬服するよりほかはない。 本書の論調は、全編を通してジェイコブズ寄りに書かれており、モーゼスは完全なヒールとして描かれているが、近年では再評価の声もあがっているという。しかし、開発か保全かというその是非はともかく、トップダウンの計画を市民が退けたという事実は、後世に大きな影響を与えたことだろう。また、彼女がその後に執筆した『アメリカ大都市の死と生』という書物は、今でも都市計画におけるバイブル的な存在になっているという。 今後の震災復興にあたり、日本をどのように再生していくべきなのか、ヒントになるところの多い一冊ではないだろうか。

Posted byブクログ