V.(上) の商品レビュー
帯に池澤夏樹さんの「今さら「V.」について何か言うことがるだろうか。」との言葉がある。僕が「V.」について知ったのは、30年真に読んだ池澤さんの「小説の羅針盤」での書評と思う。いつかは読もうと思ってから随分時間がかかった。最近では松岡正剛さんの「方法文学」での紹介もあり、いい加減...
帯に池澤夏樹さんの「今さら「V.」について何か言うことがるだろうか。」との言葉がある。僕が「V.」について知ったのは、30年真に読んだ池澤さんの「小説の羅針盤」での書評と思う。いつかは読もうと思ってから随分時間がかかった。最近では松岡正剛さんの「方法文学」での紹介もあり、いい加減に手を出さないとと思い、本屋に注文した次第。 「V.」を探し求める話ということは耳にしたし、何が何だか判らないということも聞いた。兎も角、心して読み始める。 主人公の一人、プロフェインが聖夜に軍港に登場する。海軍仲間との莫迦騒ぎは、猥雑でパンクとしか言いようがない。彼は、何の感情もなく仲間たちの中に流されていく。やがて、地下道でワニ退治を務める。語られるのはネズミ達を改宗しようと励んでいた神父の話。神父はV.こと、ベロニカというネズミと魂を通わせたという。 (引用)V.は修道女になりたいと云う。その気持ちが伝えられたとき、私は、現時点で彼女が所属できるような公式の女子修道女がないと云った。 一体、僕は何を読まされているんだ、という気も嘘じゃない。しかし、ごちゃごちゃしてるのに、変に引き付けられる文章で、そこそこの文章量が苦にはならない。 判りづらいのは第三章である。 唐突にもう一人の主人公、ステンシルの父親の物語が始まり、その語り手が第三者であり、それが色事師のウェイター、レストランの下働きに駆り出されたアナキスト、落ちぶれた芸人、列車の車掌、馬車の御者、軽業師の泥棒、ビアホールの女給、とコロコロ変わる。しかも彼らが登場人物をしっかり把握しているわけじゃないから、何が何だかということになる。 以下は自分が読み返すときのための忘備録 サー・アラスター・レン:英国貴族 ビクトリア・レン :その娘 ミルドレッド :ビクトリアの妹、11歳ぐらい シドニー・ステンシル :主人公の父、デブ、金髪、 ポーペンタイン :父の同僚、ツイードを着ている。段々顔の日焼けが酷く。 グッドフェロー :ポーペンタインの相棒。ビクトリアと恋仲。白髪 ボンゴ・シャフツベリー:ドイツ人 レプシウス :ドイツ人 でも、これは間違っているかもしれない。 最後の殺人シーンは誰が誰を殺したんだ。読み返したら、かえって判らなくなった。 父ステンシルの話は、探検家ゴドルフィン、その息子エヴァンへと続く。ボッティチェリの「ビーナスの誕生」の盗みと革命騒ぎが交錯し、ゴルドフィンの口から南極大陸のヴィーシューの氷の下の七色クモザルの死体が語られる。思わず、なんじゃそりゃ、と思う。 確かに面白いが、どう説明していいんだか判らない小説だった。その意味では予想通りなのかな。
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トマス・ピンチョンの書物を読み解くのはゲームのやり込みに似ている。しかもFC時代特有の、自分でメモを取らなきゃダンジョンも踏破できないちょっと理不尽な感じ。章を経る度に湧いて出る登場人物を整理しながら進んだ先にあるものは、ダメ人間とハードボイルドと戦争と馬鹿エロと知性とパラノイアがどんちゃん騒ぎで一緒にフォークダンスを踊っているザ・闇鍋ワールドであった。阿呆だ。しかし、阿呆なまでに面白い。100人が読めば1万通りの解釈が生まれるであろう彼の作品群は、読むことの楽しさと自由がヤサイマシマシに溢れている。
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話がどんどん膨らんでいく。あっちからもこっちからもストーリーが押し寄せてきて目が回るような読書体験。
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私の中ではボルヘスやガルシア・マルケス、ミラン・クンデラと同じ系譜に属する。動機の背景が不明な登場人物たちによる、退廃的で高尚で、ポエティックでシュルレアリスティックな世界。ただ、ピンチョンにはそれを超えた大いなる視点がありそう、言葉のトリックがふんだんに使われた文字通りのレ・ト...
私の中ではボルヘスやガルシア・マルケス、ミラン・クンデラと同じ系譜に属する。動機の背景が不明な登場人物たちによる、退廃的で高尚で、ポエティックでシュルレアリスティックな世界。ただ、ピンチョンにはそれを超えた大いなる視点がありそう、言葉のトリックがふんだんに使われた文字通りのレ・トリック、メタ的視点。なにかありそう、ということはかろうじて感じとれた。
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それぞれのV.に翻弄される登場人物たち、そして行ったり来たりのヨーヨー男プロフェイン、文はとても読みやすく、それぞれの挿話はスリルに満ちて面白い。 一体運命はどのように交差するのか。 V.って人のことじゃないの ?地名なの ? 共通点は頭文字のV. だけのように見えるが? 女たち...
それぞれのV.に翻弄される登場人物たち、そして行ったり来たりのヨーヨー男プロフェイン、文はとても読みやすく、それぞれの挿話はスリルに満ちて面白い。 一体運命はどのように交差するのか。 V.って人のことじゃないの ?地名なの ? 共通点は頭文字のV. だけのように見えるが? 女たちでもあり、ヴェネズエラでもあり、ヴィーナスでもあるのか? もしくはそのどれでもなかったりするのか ? 今までこんな小説は読んだことがない。 下巻に期待。
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様々なエピソードが現れては消え、それぞれが微妙に関係し合って物語は進んでいく。 ピンチョンが難解なのは、それぞれのエピソードの関係性が余りに複雑であることが言える。ちゃんと理解して読み終わるには8年はかかる、とも言われてるだけあって、読み応えはかなりある。 それぞれのネットワ...
様々なエピソードが現れては消え、それぞれが微妙に関係し合って物語は進んでいく。 ピンチョンが難解なのは、それぞれのエピソードの関係性が余りに複雑であることが言える。ちゃんと理解して読み終わるには8年はかかる、とも言われてるだけあって、読み応えはかなりある。 それぞれのネットワーク自体も色々な要素があり、絡まりあうことによりエントロピーはどんどん増大していく。 全てを俯瞰してみるくらいの距離感で挑むのがちょうどいいかも。
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Vってなんだろう?思い続けて、上巻が終わった。巧い作りになっているとは思うけど、並行する物語が複雑で上手く整理できず、苦しい読書でした。
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ピンチョン初体験ということで、新訳で出たデビュー作を読んでみた。面白い、これは面白い! 時代も場所も話者(“人格憑依”含む)も様々に跳ぶ各章節の物語は、緻密で繊細な編み物のように各ポイント同士が隣の、あるいは一段上の、斜め下の、別のポイントの立ち位置を支えていて、それらのやたらと...
ピンチョン初体験ということで、新訳で出たデビュー作を読んでみた。面白い、これは面白い! 時代も場所も話者(“人格憑依”含む)も様々に跳ぶ各章節の物語は、緻密で繊細な編み物のように各ポイント同士が隣の、あるいは一段上の、斜め下の、別のポイントの立ち位置を支えていて、それらのやたらと数多い糸と糸との交叉点を読みながら脳内で立体的にキープしていくことで、最後に全ての輪が繋がって(編み終わりの糸の始末をしないままにぶら下がる端っこも残るけど…)、一つの作品を「体験した」という爽快で達成感に満ちた、でもどこかしら糸と糸との繋ぎ目を間違えて読んでるかもしれないという混乱気味の悔しさも混ざった感覚が残る。 「V.」とは何か、という一見テーマ?のようにも思える問題は、読者ではなく登場人物の一人・ステンシルの問題であって、読者はそこを中心に筋を追っていく必要はないということは途中で分かる。そもそも「V.」とは何かという問題自体、作品の途中で出てくる問題であり(タイトルを見た時点で疑問は生まれるが)、読者はとりあえず、何を追っているのか分からないままに、ドタバタコメディのような刹那的な浮かれ騒ぎの渦中に投げ込まれ、ストーリーを追い続け、気づけばあっちのポイントもこっちのポイントも手放さないように脳をフル回転させながら、ピンチョンがゴールに用意しているらしい何らかの物語を編みあげようとアクロバティックに糸と糸を繋いでいくことになる。 読み進めるほどに増える登場人物、そしてその登場人物同士が過去や別の場所や親世代で関わり合って織り成す輪、それらを押さえたまま最後までたどり着くことがこの作品を読むに当たっての一番の難関。間を空けず、時間をかけずに一気に読むことで何とか乗り切ることができた。無機物に“憎まれて”いる木偶の坊(シュレミール)プロフェイン、自身のことを三人称で語るステンシル、「バルーン・ガール」から無機物化した神父へと波乱に満ちた道のりをたどるヴィクトリア、キャラクターやストーリーから見え隠れする物質と生命、アイデンティティに絡むメッセージについてはまた再読の折にじっくり汲み上げてみたい。今回は、テーマそのものより初めて体験したピンチョン・ワールドの手応えを楽しく味わったという感じだった。他のピンチョン作品も同様の集中力が必要とされるなら、まとまった時間が取れるタイミングを狙ってチャレンジしてみたい。 質的にも量的にも手応えたっぷりな厚みのある構造、酔っ払いたちのナンセンスな会話もあれば幻視のような植民地兵士モノローグもあり、狂騒の現代(1950年代)NYの情景もあれば陰謀と死に満ちた20世紀前半の争乱や戦争の情景もあり、そうしたあれこれを結びつける符号のように「V.」の頭文字を持つ場所/人/物たちが随所に顔を出す――濃密かつ刺激的、一言で言ってエキサイティングな作品だった。全二巻。
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