赤の他人の瓜二つ の商品レビュー
時々、小説を読む。安部公房みたいなタイトルに期待したが、手に取ったこの本は、間違いだった。脈絡なく、時代も主体も遷移する。二人の肉体や能力、環境などの初期設定が同じなら、その後の人生は、似通ってくるだろうか。まるで双子比較のような思考実験だが、本作は更にメタ。小説家という複数の人...
時々、小説を読む。安部公房みたいなタイトルに期待したが、手に取ったこの本は、間違いだった。脈絡なく、時代も主体も遷移する。二人の肉体や能力、環境などの初期設定が同じなら、その後の人生は、似通ってくるだろうか。まるで双子比較のような思考実験だが、本作は更にメタ。小説家という複数の人生を操る身分が陥る体感を、修辞的に用いた錯視。近接した距離感では気付かない、気付かせない、瓜二つな赤の他人。神=作家のみが知る、関連性や自在性。 ー これまでに経験し記憶している一切は、自分と言う一人の人間の死と共に跡形もなく消え失せてしまうものなのか。 テーマや狙いが透けて、読み手に甘えているので面白い小説ではなかった。だからどうした、と。残念ながら、感情がリンクしない。
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筋が追いにくいという人もいるが、私はそんなことは無く、読みやすかった。時間がふわっと流れている独特の世界観、雰囲気を感じる小説。もっとこの著者の本を読みたいと思う。
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ずっと磯崎憲一郎の作品は読みたいな、と思いながら、読んでいなかった。これが初めて手につけた作品ていうことになる。のだけれども、予想以上に読みやすく、そして、面白かった。他のも読んでみようかしら。(12/2/13)
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心に迫る場面が、いくつもあった。 話があちこちに飛びながらも、ひとつの家族が描かれる。時間も時折すっ飛ぶ。普通の小説であれば、その後メロドラマに行くようなエピソードも、淡々とすまして通り過ぎていく。 凡庸な人生の、そのシンプルな普遍性に、胸を打たれるのだ。 ひとりの人生には、様々...
心に迫る場面が、いくつもあった。 話があちこちに飛びながらも、ひとつの家族が描かれる。時間も時折すっ飛ぶ。普通の小説であれば、その後メロドラマに行くようなエピソードも、淡々とすまして通り過ぎていく。 凡庸な人生の、そのシンプルな普遍性に、胸を打たれるのだ。 ひとりの人生には、様々な過去が積み重なって生きている。 時折顔を覗かせる、人のシンプルな行動に、淡々とした語り口のなかに美しさを見た。
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この人の書く本には常に、何というか骨子というか主張というか「言いたい事」と言う物が一つあって、そんな事を言えばどんな作家だってそうなのかもしれないが、そういうレベルでは無く、もっと明文化された「本論の骨子を一行で書け」とか言う試験問題の答えの様に、シンプルに削ぎ落とされた物を構築...
この人の書く本には常に、何というか骨子というか主張というか「言いたい事」と言う物が一つあって、そんな事を言えばどんな作家だってそうなのかもしれないが、そういうレベルでは無く、もっと明文化された「本論の骨子を一行で書け」とか言う試験問題の答えの様に、シンプルに削ぎ落とされた物を構築してから書き始めてるんじゃないかと思わされる。それ程ゴツイ鼻筋が通っている。 「赤の他人に、、、」もそうで、タイトルに表される主題ー置き換えの効かない自分の人生と実は誰でも良かったんじゃないかと言う実感ーを表す為に、主人公の想像と話中の現実の境目がどんどん曖昧なって行く。 どこに連れていかれるか分からないという評が帯に書かれていたがまさにその通りで、読後に平衡感覚を失う様な気分になる。
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読んでいて面白かった。 え、どうなってるの?って思いながらも テンポよく目の前の文字を追っているうちに 読み終えてしまった感じ。 赤の他人の瓜二つというタイトルは 生きている人がもつ共通意識のことか?と思う。 私も死を迎える時、他の人とつながって生きていたことを 実感できるだろうか。
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赤の他人もまた瓜二つであること。差異と反復。そしてその肯定。 この稀有な小説家の試みを詳述することができないことが口惜しい。要再読。
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不思議な構成のお話であった。 一本の線上を順番に歩いているつもりが、 いつの間にかメビウスの帯に絡め取られていた感じがする。 優しく読みやすい文章でスラスラ読める。 こういう玄人っぽい作品、ダメな人はダメだろうな。 2011 年 第 21 回 Bunkamura ドゥマゴ文学賞...
不思議な構成のお話であった。 一本の線上を順番に歩いているつもりが、 いつの間にかメビウスの帯に絡め取られていた感じがする。 優しく読みやすい文章でスラスラ読める。 こういう玄人っぽい作品、ダメな人はダメだろうな。 2011 年 第 21 回 Bunkamura ドゥマゴ文学賞受賞作品(辻原登氏選考)。
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時間の流れを自在に操る文章に引き込まれました。 ただ、この作品にはハッキリした落ちは必要なかったと思います。 それ以外は星5です。
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意識の波のようなものを感じた。語り手はどんどん移り変わり、過ぎていく。個々の意識など瑣末なことだと言わんばかりに、人類全体を包む大きな波の中で、たゆたう感覚。 コロンブスの話の後に出てくるチョコレート工場で働き始めた青年が、冒頭の兄妹の兄の方と同じ人物であるとは言い切れない。さら...
意識の波のようなものを感じた。語り手はどんどん移り変わり、過ぎていく。個々の意識など瑣末なことだと言わんばかりに、人類全体を包む大きな波の中で、たゆたう感覚。 コロンブスの話の後に出てくるチョコレート工場で働き始めた青年が、冒頭の兄妹の兄の方と同じ人物であるとは言い切れない。さらにそれは、妹や両親にいたっても同じことが言える。イコールであると同時にノットイコールなのだ。どちらであっても同じことで、大きな意識の流れの中で、それを区別することは出来ない。 瓜二つの顔、瓜二つの人生、瓜二つの意識。「人間」という一括りの存在として、死ぬことも生きることも、大きな円環の中を巡り巡っているように感じる。 美しい文章、いい小説だった。磯崎憲一郎の言葉に対する感性は好きだ。
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