小林秀雄の恵み の商品レビュー
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古典をよくわかっている橋本治が、結局のところ古典を理解できていない近代人である小林秀雄を、その痛々しい本居宣長への自己投影に満ちた”読み込み”を解読していく。 この人のエッセイは、自分の言いたいことを徒然草よろしくのらりくらりと語っていくものが多いのだが、この本は小林秀雄の『本居...
古典をよくわかっている橋本治が、結局のところ古典を理解できていない近代人である小林秀雄を、その痛々しい本居宣長への自己投影に満ちた”読み込み”を解読していく。 この人のエッセイは、自分の言いたいことを徒然草よろしくのらりくらりと語っていくものが多いのだが、この本は小林秀雄の『本居宣長』という読み込む対象の本があるせいか、作者からの距離がほどよく取れていて読みやすい。小林秀雄とも本居宣長とも、そして著者自身とも、気持ちのよい距離感を保ったまま論が展開していく。モノフォニックなエッセイが多いこの作者にしては、三者の声でできたポリフォニーでできた、重層的な、コクのある評論である。 文庫版の方が、人名や難読漢字にルビがきちんと振ってあって、おすすめ。
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小林秀雄とは違う知性、橋本治が解説する昭和のインテリ小林秀雄。西行を自意識が彼の最大の煩悩だったと言い切る彼に小林秀雄は本当に哀れがわかっていたのだろうかと挑む橋本治、なかなか面白い。
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橋本治さんの思考は、とても粘り強くて、とても深くて、とても色んな道があって、とても恥じらいがあって、とてもしなやかです。 だからとてもゆっくりです。 橋本治さんは、この本の中で小林秀雄さんのことを 「おじいちゃんのよう」と表現されています。 そしておじいちゃんである小林...
橋本治さんの思考は、とても粘り強くて、とても深くて、とても色んな道があって、とても恥じらいがあって、とてもしなやかです。 だからとてもゆっくりです。 橋本治さんは、この本の中で小林秀雄さんのことを 「おじいちゃんのよう」と表現されています。 そしておじいちゃんである小林秀雄の恵みとは 「学問は面白いんだよ」 とおっしゃってます。 最初からそのことを分かって書かれたのではなく、 書いてるうちに、調べているうちに 「どうやらそんな感じなんだ」ということが分かったという過程は、 「そもそもこの本を書いたのは、小林秀雄賞という賞をもらって、ならば小林秀雄について何か書かなければ申し訳ない」 という橋本治さんのとても正直な性質と直線で繋がっているように感じられます。 こういう正直さは誰でも気持ち良いものです(多分)。 日本は、橋本治という作家がいるだけでも、幸せな国なのだと思います。 僕のこの本から「橋本治の恵み」を受けたのです。
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最近、小林秀雄は私に話しかけてくれている、という気分になっている(錯覚かもしれないけど)。こういうときにシンクロニシティーはやってくるもので、実家で見つけて早速読んだ。なんと橋本治の本を読むのは初めてである。 すばらしかった。 小林秀雄は徹底的に己であること、己の言葉を語るこ...
最近、小林秀雄は私に話しかけてくれている、という気分になっている(錯覚かもしれないけど)。こういうときにシンクロニシティーはやってくるもので、実家で見つけて早速読んだ。なんと橋本治の本を読むのは初めてである。 すばらしかった。 小林秀雄は徹底的に己であること、己の言葉を語ることに終始した人だ。それは西行しかり、本居宣長しかりである。したがって、「小林秀雄はこう言った」という評論では本質的なジレンマがある。小林秀雄を読んだ私がこう考える、でなくてはならない。古事記伝を読んだ小林秀雄がそうしたように。オーセンティックな批評家は橋本の文体を嫌うかもしれないが、そういう他者の目を超越した所にしか、小林秀雄の本質はなく、だからこそぼくも彼の声が自分に向かっているかのような幻想を感じるのだろう。
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※このレビューにはネタバレを含みます
いつものように、橋本治の思考過程を追いながら、小林秀雄は何を考え、当時の人はそんな小林の文章を何故ありがたがったのかが分かります。 けど、この本の中で、私が、一番好きなのは橋本治が小林秀雄の『本居宣長』を読んで「そうか、学問とはいいものだったんだ」って思ったってところです。 愚かな孫は小林秀雄の『本居宣長』を読んで、「そうか、ちゃんと学問をすればじいちゃんが言うみたいに、自信をもってなんでもやることが出来るのか学問というのは、そういう自信を与えてくれるのか』と思ったのである。だから「もう一度ちゃんと学問をしてみようかな」と思った。 (橋本治は小林秀雄の孫ではありません。念のため) これは、37歳の時に筆者が思ったことであり、本書は50を超えて精読しなおしたものなので本論ではないのですが……。
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