年上同居日記 の商品レビュー
お得意の官能描写が冴え渡るも結末まで作者らしく
まずサブタイトルの『叔母』を指摘しなくてはならない。実際は高校生主人公の想い人である義母の姉なので、厳密には『伯母』が正しい。作者も編集者も知らないハズはないだろうから、これは敢えての事であろう。言葉の持つニュアンスを優先したものと思われる。どちらにせよ義母・叔母(伯母)・従姉妹...
まずサブタイトルの『叔母』を指摘しなくてはならない。実際は高校生主人公の想い人である義母の姉なので、厳密には『伯母』が正しい。作者も編集者も知らないハズはないだろうから、これは敢えての事であろう。言葉の持つニュアンスを優先したものと思われる。どちらにせよ義母・叔母(伯母)・従姉妹(伯母の娘)という3人のヒロイン達の向ける愛情が切なく交錯する甘い作品である。 許されない感情と憂いを深める義母の気持ちを慮りつつ、自分の気持ちも確かにある叔母、ツンデレ気味に突き放しながらも仄かな想いを以前より傾ける従姉妹。元より義母への恋慕の情を隠しきれない主人公。家族・親族関係が出来て以来、各人がそれぞれ秘めた想いをずっと寄せている初期設定なので、登場人物がみな切なさを湛えているところに本作の深みがある。そして、メインたる義母の想いを叔母もその娘も汲み取っているので、自分達の想いが成就しない事も知っているやるせなさがある。それでも主人公と義母との関係がギクシャクし、少し距離が出来た隙を突くように一線を越えていく展開である。叔母の筆おろしから始まり、これが最後と言いながら続く逢瀬を娘に見られ、巻き込まれるように母子丼となったところを、さらに義母に見られる流れはオーソドックス。最後に少し捻りを利かせた演出を見せてから晴れて憧れの義母と心も体も結ばれるのだが、この構成によってメインヒロインと結ばれるのが最後の最後というもどかしいことにもなっている。また、最近の誘惑系官能小説ではお馴染み、というかお約束な結末でないところは、かつての弓月作品らしくはあるものの好みが分かれるかもしれない。 官能描写は冴え渡っている。お得意のお口奉仕&パイズリ描写が多いが、これが実にいやらしい。今回はカッコ書きで内心の独白を綴る手法が多用されているせいか、各ヒロインの愛情深さが良く表現されており、想いに反して逆の言葉を発してしまうような演出も見られることから、これらの心情と官能の相乗効果があるように思った。文章表現にも格調高いものが感じられ、単に甘いだけの誘惑作品に留まらない、留まりたくない意欲が感じられる作品とも言えよう。
DSK
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