彼女のためにぼくができること の商品レビュー
ヤングアダルト向き。 親友である『彼女』のために太ったままでいようとする少年。 驚くほど残虐な大人がいる一方で、少年たちを救い導くカッコ良すぎる大人たち。 現実では彼らのような人は、まずいない。 でも、いいと思う。物語の中くらいはこんな人たちがいて欲しい。
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残酷な父親からの虐待で、顔に酷い火傷の跡を負ったまま生きることを強いられたサラと、「デブ」がゆえに嘲りの対象だったモービーとの、一筋縄でいかないけど固い友情の物語。それと併走するように、授業で扱う議論テーマとして、生命倫理や生死観や宗教観が織り込まれている。なかなか深く斬り込んだ...
残酷な父親からの虐待で、顔に酷い火傷の跡を負ったまま生きることを強いられたサラと、「デブ」がゆえに嘲りの対象だったモービーとの、一筋縄でいかないけど固い友情の物語。それと併走するように、授業で扱う議論テーマとして、生命倫理や生死観や宗教観が織り込まれている。なかなか深く斬り込んだ作品だった。 私は、妊娠中絶を議論しているときに、エラビーが語ったことーー人間の生命の始まりに必要なのは、単なる精子と卵子の出会いではなく、その生命が「望まれた」ものであるかということには説得力を感じた。 それと、胎内の命の尊さを説くのなら、生まれた後の生命だって尊重されるべきだ。(実際は差別や暴力に晒されるじゃないか)という言葉も心に響いた。 この物語では、宗教観を振りかざすマーク・ブリテンやモーツ副校長が卑劣なキャラ設定だったので、保守的な意見が悪のように描かれたのがフェアじゃないと感じた。 それにしても、アメリカの高校の授業って、ここで描かれていたような感じなのかな? 一つのテーマを巡って、生徒同士が議論を深めていくというもの。面白そうだし、自分や社会のこと、様々な意見の存在を意識するのは、いいな。
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- ネタバレ
※このレビューにはネタバレを含みます
どこかで書評を読んで、一度読んでみたいなぁと思っていた本。なかなか見つからず、地元の図書館を調べてみたら「児童書」のコーナーにありました。が、内容はとてもじゃないけど「児童」向けではないです。 邦訳タイトルを見ると純愛小説のような印象も受けますが、原題は『Staying Fat for Sarah Byrnes(サラ・バーンズのために僕はデブのままでいる)』。これを見るだけでも、純愛からは程遠いということが分かると思います。 太っている主人公エリックと、幼少の頃に顔と手に大火傷を負ったサラ・バーンズは、その外見上のコンプレックスとユーモア感覚が共通したことから友情を育み、中学時代は一緒に悪だくみをします。とは言ってもいわゆる反社会的なものではなく、あくまで自分たちを排除しようとする「強い者たち」への反発と反抗のため、というスタンスは崩していません。弱い者いじめならぬ、強い者いじめということです。 そんな二人の友情も、エリックが高校で水泳部に入ったことで少し変化が生じます。水泳をすることでサラ・バーンズとつるむ時間が減ったうえ、どんどん体重が落ちてしまうエリックは、サラ・バーンズとの友情が損なわれていないことを示すため、それまで以上に食べて食べて食べまくり、デブであり続けようとします。 とかく外見だけで判断しがち・されがちな思春期の男の子にとって、外見のコンプレックスをせっかく克服できそうなのに友達とのつながりのためにそれをあえて維持しようとするのは、物凄い決心が必要でしょう。この部分を読むだけでも、主人公エリックは素敵なヤツだなぁと思ってしまいます。 そのサラ・バーンズがある日突然、心を閉ざしてしまって誰の言葉にも反応しなくなってしまった…というところから、話は始まります。サラ・バーンズが心を閉ざした原因と、エリックの学校生活とをそのまま描いても一つの小説として成立しそうですが、エリックの友人で神父の父がいながらキリスト教を懐疑的に見ている水泳部員のスティーヴ・エラビーや、同じく水泳部員でエリックやスティーヴと反目している敬虔なクリスチャンのマーク・ブリテン、その彼女のジョディ・ミュラー、そしてサラ・バーンズの父親で冷酷なヴァージル・バーンズなどが絡んでいくことで、話はスピードを上げて突き進んでいきます。中盤以降の展開はまるで映画のよう。一気に引き込まれ、最後のページまで気が抜けません。 上に挙げた登場人物のほかに、凶暴で頭も悪いものの、純粋で決して嘘をつかないデイル・ソーントンというキャラクターも素敵なヤツです。彼も話の中で重要な役割を果たします。 後書きで触れられてますが、エリックの周りで彼とサラ・バーンズを支える「大人たち」があまりにカッコ良すぎではないか、逆にエリックとサラ・バーンズに敵対する「大人たち」があまりに典型的な悪者すぎないか、という感もありますが、娯楽小説として見るならばこれもアリでしょう。途中ではキリスト教の教義に対するかなりコアなやり取りもあったりして、あまり万人向けではないですしどうまかり間違っても児童向けではないですが、一読の価値はある佳作だと思います。
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友情 愛情 信頼がいっぱいのお話 アタマは堅くしてたらダメなんだよね 柔らか〜く 色んな人の言葉を聞き入れないと 自分も成長しないし 成長しなければ 明るい明日もやって来ない? なんて…^_^
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人を信じることはとても難しいけど、とても大切だということがわかりました。主人公のエリックは、心を閉ざしてしまったサラに毎日毎日話しかけていて、ずっとサラはこのままかもしれないのにすごいと思いました。
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登場人物がとても個性的。 タイトルも原題の方が話し手の「ぼく」の個性・サラとの関係が見えて、ぴったりだったのになぁ(原題:「Staying Fat for Sarah Byrnes」)。「彼女のためにぼくができること」だと、繊細な、そして男女の恋とか、一途な感じがするんだけど…実...
登場人物がとても個性的。 タイトルも原題の方が話し手の「ぼく」の個性・サラとの関係が見えて、ぴったりだったのになぁ(原題:「Staying Fat for Sarah Byrnes」)。「彼女のためにぼくができること」だと、繊細な、そして男女の恋とか、一途な感じがするんだけど…実際は、一途?かもしれないけど、ほぼ恋はなく、泥臭くて時々ザラリとする話です。 複雑な問題、差別、宗教、理不尽な暴力。 登場人物たちの言葉、行動に、その背景・理由がきちんと描かれていて、好感をもちました。 希望のあるラストもいいですね。 中学生というより、高校生におすすめです。
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あきらめること。あきらめないこと。受け入れること。赦すこと。戦うこと。前にすすむこと。愛すること。この物語には若いうちに出会う様々なことがぎゅうぎゅうつまっています。力強いYA小説。
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顔に醜い火傷のあるサラ・バーンスと、でぶのエリック。中学の頃、お互いの身体的なマイナスを知力と毒舌でかわしてきた二人には、男女間の気持ちと言うよりも、共に闘う同志としての感情で結びついていた。 市民プールで泳いでいるときに才能を認められ、水泳部でたちまちヒーローになったエリッ...
顔に醜い火傷のあるサラ・バーンスと、でぶのエリック。中学の頃、お互いの身体的なマイナスを知力と毒舌でかわしてきた二人には、男女間の気持ちと言うよりも、共に闘う同志としての感情で結びついていた。 市民プールで泳いでいるときに才能を認められ、水泳部でたちまちヒーローになったエリックだが、サラとの友情は変わらなかった。ところがサラが、突然何もしゃべらず、反応も無くなり、精神科に入院してしまう。なぜサラは心を閉ざしてしまったのか。 父親の暴力、キリスト教的な理念、様々な議論を巻き起こし、エリックはサラを救出するべく奮闘する。 高校生と大人(親・教師・社会)、圧倒的な強と弱のなかで、親友を守るエリック。もちろん、要所要所に登場する信頼すべき大人の存在は、ちょっとかっこよすぎるけれど、結末にも安心を与えてくれる。 が、ちょっとヘビーな話。この著者の「ホエール・トーク」や「アイアンマン」も、米国の高校生社会を描いていて、好きな作家です。
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小さい頃からデブで、常にからかわれいじめられてきたエリックと、顔を覆うやけどの跡のせいで辛い人生を送ってきたサラ・バーンズは親友だった。高校3年生のある日、サラは突然あらゆることに反応を示さなくなり、精神病院に入院する。周りのすべてと激烈に闘い続けてきたサラがなぜ? エリックは病...
小さい頃からデブで、常にからかわれいじめられてきたエリックと、顔を覆うやけどの跡のせいで辛い人生を送ってきたサラ・バーンズは親友だった。高校3年生のある日、サラは突然あらゆることに反応を示さなくなり、精神病院に入院する。周りのすべてと激烈に闘い続けてきたサラがなぜ? エリックは病院にサラを見舞ううち、驚くべき事実を知る…。 アメリカが抱える問題をこれでもかというほど詰め込んでいながら、ユーモアとスピード感あふれる展開でぐいぐいひっぱっていかれる。登場人物の魅力(悪役も含めて)、結末の見事さ。うまくいきすぎ?希望は常にあるということだね。
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