パル判事 の商品レビュー
以前に読んだ東京裁判について論じてる本で、何度も引用されているので手に取ってみた。表題の通り、東京裁判で「被告は全員無罪」という内容の少数意見書を書いたパル判事の評伝である。多くの一次資料に言及されたうえで「ガンディー主義者」「平和主義者」「国際法の専門家」といった俗説はすべて間...
以前に読んだ東京裁判について論じてる本で、何度も引用されているので手に取ってみた。表題の通り、東京裁判で「被告は全員無罪」という内容の少数意見書を書いたパル判事の評伝である。多くの一次資料に言及されたうえで「ガンディー主義者」「平和主義者」「国際法の専門家」といった俗説はすべて間違いなのを明らかにしている。また日本で上記のような俗説が広まってしまった過程も述べておられ、今後パル判事を語る上で避けて通れない一冊だと言ってよい。
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東京裁判のインド代表判事として知られるラダビノド・パルの評伝。周知の通り、被告全員無罪の少数意見から歴史修正主義者・国粋主義者によって神格化されているパルだが、本書ではインドや英国の公文書をはじめとする内外の一次史料や、一般の東京裁判研究者が語学上読めないであろうベンガル語資料...
東京裁判のインド代表判事として知られるラダビノド・パルの評伝。周知の通り、被告全員無罪の少数意見から歴史修正主義者・国粋主義者によって神格化されているパルだが、本書ではインドや英国の公文書をはじめとする内外の一次史料や、一般の東京裁判研究者が語学上読めないであろうベンガル語資料に加えて、パルの子息や親族のオーラルヒストリーを駆使して、その実像を厳密に実証している。「ガンディー主義者」「絶対平和主義者」、あるいは東京裁判判事唯一の国際法の専門家というような俗説は誤りで、少なくとも東京裁判以前には国際法の業績はなく、また独立前はガンディーとも国民会議派とも関係がなく、むしろヒンディー至上主義的な右翼勢力やボースの「インド国民軍」のシンパであったことが疑われている。戦後の日本におけるパル顕彰の政治的動向の検証も行っており(岸信介の役割を重視している)、パルの「神話」形成過程も示している。パル単体を対象とした日本語の研究では現状唯一のまともな(学術的水準を満たす)成果と言える。
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2011年刊行。東京裁判でA級戦犯無罪の意見を出したパール判事。彼の生い立ち、経歴、思想から判決後の彼の活動、日本あるいは世界に及ぼした影響の有無・内容を論じたもの。判決が作成者の思考・志向の反映である点は、そのとおりで、その意味でも本書のような分析がなされるのは正しい方向性と思う。パールがチャンドラー・ボースに共感・親近感を抱いていたとの解釈はなかなか興味深い。また、彼の言動の持つ矛盾点を明らかにしたのも(もちろん、言動に全く矛盾のない人間はいないが…)、東京裁判を考える上で意義深いと思う。有益な書。
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高知大学OPAC⇒ http://opac.iic.kochi-u.ac.jp/webopac/ctlsrh.do?isbn_issn=4004312930
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東京裁判にインド代表判事として出席したパル判事の生涯と、 これを取り巻く日本を描く一冊。 私の理解力不足やインド史の勉強不足もあってか パル判事の考えがうまく飲み込めなかった。 しかし巻末にもあるように パル判事は明確な一本の軸を貫き生きるタイプではなく、 ある面では凝り固まった...
東京裁判にインド代表判事として出席したパル判事の生涯と、 これを取り巻く日本を描く一冊。 私の理解力不足やインド史の勉強不足もあってか パル判事の考えがうまく飲み込めなかった。 しかし巻末にもあるように パル判事は明確な一本の軸を貫き生きるタイプではなく、 ある面では凝り固まった、ある面では揺れ動く、 矛盾を内包した人間臭いタイプではなかったかと感じた。 その一方、パル判事を拡大解釈し利用した戦後日本については、 様々な思いがそこにあったにせよ、 同じ日本人として考えさせられるものがある。
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資料をひとつひとつあたって東京裁判を紐解く…。なんて、到底無理!!な私にとって、とてもありがたい一冊となった。新書なんて主張ばかりで…って嫌いな私、受験戦争時代の詰め込み型の戦争教育のみの知識しかない私、でも、なんとか読み終えることができました。現在の歴史認識問題を自分なりに考える上で大変参考になったと感じる。週間ブックレビューで藤原帰一さん書評。
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東京裁判でインドの判事が日本のA級戦犯はみな無罪である、などと言っていたということを初めて知った。 そしてその判事が日本の保守層によって神話化されていたり、靖国の博物館(名前忘れました)に銅像があったりするとか、安倍元首相が首相時代に実家を訪問していたとか、知らないことばかりだっ...
東京裁判でインドの判事が日本のA級戦犯はみな無罪である、などと言っていたということを初めて知った。 そしてその判事が日本の保守層によって神話化されていたり、靖国の博物館(名前忘れました)に銅像があったりするとか、安倍元首相が首相時代に実家を訪問していたとか、知らないことばかりだった。 東京裁判もたんに「戦勝者が敗者を裁いた」というだけではなく、いろんな立場の人がいろいろと蠢いていたのだなと。
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冷静で、資料的で、客観的な視座。整理されていて、とてもわかりやすい。パルについて知っている人も知らない人も必読。
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京都の霊山の坂本龍馬の墓を見に行ったときに、パル判事の顕彰碑をみました。本書によれば東京裁判の「パル意見書」だけでなく、パル本人も神話となっていたのでした。インド近現代史研究者の成果がようやく現れた気がします。しかし、よくもまあ、いい加減な本の多かったことか。
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新聞広告によると 《東京裁判でA級戦犯被告全員の無罪を主張したパル。インドの激動する政治や思想の変遷を読み解き、その実像に迫る。》
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